GAFAM

 米巨大IT企業Google は、広告の力を悪用したとしてフランス当局から 2 億 2,000 万ユーロ (約223億円) の罰金を科されました。フランスの競争監視機関は、Google は独自のオンライン広告サービスを優先し、公平な競争を損なっていると指摘しています。

 結果として、大規模な広告主向けのGoogle の広告管理プラットフォーム、 Google Ad Manager は、自社のオンライン広告マーケットプレイスである Google AdX のあり方が問われ、Google側は、広告事業に変更を加えると表明しています。

 Googleを所有するAlphabet社が、ヨーロッパの広告規則に違反して重い罰金を科されたのは、今回が初めてではありません。たとえばGoogle は、2019 年にライバルのオンライン検索広告主をブロックしたことで、EU から 14 億 9000 万ユーロ という莫大な罰金を科されています。

 さらに同年、欧州連合(EU)のデータ保護規則に違反したとして、フランスのデータ規制当局 (CNIL) から 5,000 万ユーロ の罰金が科され、2018年にはEU競争当局が、スマホやタブレットでIphoneのiOSと双璧をなす AndroidのOSを利用し、ライバルをブロックしたとして過去最高の 43 億 4000 万ユーロ (約5,780 億円) の罰金を科したことは大きな話題になりました。

 フランスはグローバルIT大手企業が租税回避している事実に不快感を示し、デジタル税を導入し、トランプ前米政権は報復制裁を行うと圧力をかけ、米仏は2020年初め、フランスがデジタル税を20年中は凍結する代わりに米国が報復関税を棚上げすることで合意しました。

 しかし、経済協力開発機構(OECD)を中心に約140カ国・地域がデジタル課税を議論してきたにも関わらず、20年中の合意が難しくなったのを受け、フランスは12月から独自課税の徴収を再開し、対立は深まる一方です。デジタル経済への課税のルールを見直す世界的な取り組みの最前線に立つOECDも苦戦状態です。

 そこで、ロンドンで今月5日に閉幕した先進7カ国(G7)の財務相会合は、法人税の国際的な最低税率15%に加え、物理的な拠点がない国でも一定のサービスの利用者が存在する企業に適切に課税できる「デジタル課税」の導入で利益率の10%を上回る部分の最低20%に課税が可能とすることで合意しました。

 現実的な話として法人税を低く抑え、名だたる米優良企業誘致に成功してきたアイルランドを念頭に、実際にはGoogleにしてもFacebook,Twitterにしても、アイルランド以外のEU加盟国で利用されているにも関わらず、欧州本社を置くアイルランドで所得申告がされ、他の加盟国から見れば租税回避しているとしか思えない状況は、大きな転換期を迎えています。

 もっともG7で合意したデジタル課税の対象とされるGAFAなど100社に日本企業は含まれない可能性が高いとされていますが、これは実は日本のIT企業がグローバルステージでプレゼンスがないことを示しています。コロナ禍でIT企業が強みを見せ、2020年後半には増益が注目されていることを考えると日本のIT企業は心もとないともいえます。

 コロナ禍で財政がひっ迫する世界各国は税収増は必須で、法人税の最低税率15%に反対する国はありませんでした。EUにとってはデジタル課税に新たなルールを加えることは絶対命題だったことで、OECDでの議論の加速化させる後押しとなるとも見られています。

 その意味では、G7財相会議は久々に大きな意味があったといわざるを得ません。今後、7月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議や、具体的なルール作りを進めるOECDの最終決定に向け、G7だけでは見えない課題の調整が急がれるところです。

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