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 有効なマネージメント手法でよく指摘されるフィードバックの重要性、特に異文化環境でのマネジメントでは上司と部下、同僚同士のフィードバックは仕事の効率化に役立つことは世界のビジネススクールで教えられています。しかし、男性と女性という異文化間では別の指摘がされています。

 ハーバードビジネスレビューに掲載された「フィードバックを求めるのは、もうやめよう」という行動科学を専門とするコンサルティング会社インベンティアムを率いるアマンサ・インバー女史は、女性にとってはフィードバックよりアドバイスの方がパフォーマンスに良い影響をもたらすと指摘しています。

 その論文では「実際にフィードバックがパフォーマンスに影響を与えることは少なく、むしろネガティブな影響を及ぼすことさえある。なぜなら、フィードバックが過去の行動、とりわけ失敗したことやうまくできなかったことに焦点を当てているからだ」と書いています。

 重要なのは未来に意識を向けることであり、そのためにはフィードバックではなく、アドバイスを求めることだと、その論文は推奨しています。ハーバードビジネススクールの調査でも、単なるフィードバックを求めた例より、アドバイスを求めた例の方が仕事によい影響を与えているという結果が出ています。

 それはフィードバックよりアドバイスが有効というのは女性には顕著だというのです。私なりに考えると男性はプライドやメンツにこだわるので、重視に自分の仕事についてのフィードバックを上司に求めても謙虚に聞く姿勢が乏しいかもしれません。主体性が強いためにアドバイスは参考程度に聞き流すことも多いともいえます。

 ところが男性のようなプライドがない女性にとっては、抽象的で後ろ向きの評価や分析をフィードバックで並べられても、内心は「問題解決にならない」と落ち込んでいるケースが多いといいます。上司は自分の深い分析に酔いしれていても、相手の女性は重く暗くなっているため、仕事のパフォーマンス向上には逆効果というわけです。

 論文では実行可能なアドバイスを得るために必要な4つの重要事項として「どのタイプのアドバイスを求めているかを具体的に伝える」「どんなアドバイスが必要か方向を示す」「一歩踏み込んだ助言を求める」「適切な相手を選ぶ」と書いています。これは特に女性が助言を求める場合ですが、逆に言えば女性に対する適切なマネジメントを示唆しているといえそうです。

 私個人も妻を含め、女性が「結局どうしたらいいのか?」といわれたことは多く、明確でポジティブな方向性やアドバイスができないために「相談は無駄だった」「逆効果」と受け止められたこともあります。とかくいろいろ悩みがちな女性にとっては未来志向で実行可能なアドバイスほど頼もしいものはありません。

 男は「そんなことは自分で考えろ」「アドバイスばかりしていると自己改善ができなくなる」と考えがちですが、余程主体性が強く、高い思考力を持つ女性でない限り当てはまらないということです。女性が決断力のある男性に魅力を感じるというのも同じことがいえます。

 しかし、アドバイスには注意も必要です。上司の仕事の目標は部下が成長し、アドバイスが必要のないレベルまで彼らを引き上げることです。サッカーでいえば名選手=名監督にあらずと同じで、仕事ができる人間=リーダーにあらずということで、部下の自主性を重んじながら引き上げていくスキルは別のものです。

 仕事ができる人は、すぐに答えを見つけられるので、アドバイスですぐに相手が実行可能かどうか考慮せずに答えをいってしまい、逆効果になる場合もあります。某自動車メーカーの研修でタイの工場長として赴任した人物に、タイ人指導について助言を求められた時、仕事のできる彼が部下の質問に即座に見事な回答をしていましたが、それは実はタイ人には理解も実行も不能なものでした。

 相手にとって実行可能はアドバイスをすることは、単純な答えを出すこととは違います。腑に落ちるという言葉がありますが、腑に落ちるアドバイスでなければ意味がありません。特に女性は自分を理解してほしい、認めてほしいという思いが強いので、理想論より相手に合った実行可能なアドバイスが必要です。

 女性との協業が増える中、自戒も含め男性的なプライド、人との優劣にこだわる世界とは別の支え合う世界に住む女性と気持ちよく仕事をし、パフォーマンスを上げていくためには、男性の意識改革が必要なのは確かといえそうです。

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