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 米SNS大手ツイッターは今月10日、在米中国大使館がツイートした中国政府の新疆ウイグル自治区政策を正当化するツイートを削除しました。その内容はポンペオ前米国務長官が、ウイグル族への中国政府の弾圧を民族大量虐殺と認定した19日の声明とも重なるものです。

 削除の理由は、中国政府がウイグルの女性が「子供を産む機械から解放」されたと主張したことでした。このツイートは、中国の国営メディア中国日報の記事とのリンクも貼られ、その記事では、中国政府がウイグルの宗教的過激派に対して「子供を産む機械」でなくなったことで抑え込んだというものです。

 長年、宗教を国家統治の妨げと見てきた中国共産党は、イスラム教が女性を蔑視し、子供を産む機械にしてきたという認識が建前にある一方、イスラム教徒のウイグル族を抑え込むために、女性に対しては不妊手術などを強制し、人口抑制を行っているのが実態と指摘されています。

 ウイグル自治区で100万人が強制収容所に収容され、イスラムの価値観を中国共産党の価値観に転向させる教育が実施されている事実を世界に明らかにしたのは英BBC放送でした。中国はこうした疑惑を一貫して否定していますが、収容所から逃げて欧州などに避難した人々の証言なので、実態は明らかになっています。

 今回削除された在米中国大使館のツイートの言葉に驚かされるのは、女性を子供を産む機械と表現し、さらに不妊治療でイスラム教徒を根絶やしにする政策を表向き、人口抑制政策と説明していることです。これは女性の尊厳と権利、信教の自由を奪い、虐殺するに等しい21世紀の民族浄化政策というしかありません。

 アメリカにバイデン政権が誕生し、トランプ前大統領に虐められてきた中国の習近平国家主席がもろ手をあげて喜んでいるなどの指摘は、的外れといわざるを得ません。オバマ政権の時、中国もロシアもクリントン国務長官(当時)を嫌っていたのは有名です。

 理由は彼らが嫌う人権外交を展開したからです。バイデン政権はその再来です。中国やロシアのような強権国家にとって、人権外交は内政干渉です。ウイグル問題だけでなく、香港や台湾問題は中国にとっては内政問題であり、他国にとやかくいわれる筋合いはないという考えです。

 それに人権外交は、中国人が最も大切にしているメンツを傷つけ、国際的評価を下げることに繋がります。バイデン政権が人権外交を展開すれば、中国のメンツは傷つくのは当然の流れです。果たしてバイデン政権がウイグル、香港、台湾、南シナ海問題にどう対峙するかは見えていませんが、国務長官候補のブリンケン元国務副長官は対中強硬派です。

 バイデン氏はアメリカの指導力の回復をパリ協定やWHO復帰で印象付けようとしていますが、もともと外交に興味はなく、民主党には多国間主義の政治家も多く、他国のことへの干渉は最小限にとどめるスタンスです。事実、オバマ政権は中国、ロシア、イランに対しては「戦略的忍耐」というわけのわからない言葉で「なにもしない」外交を貫きました。

 今回、ポンペオ氏がトランプ政権終焉の数時前に、ウイグル問題を大量虐殺と認定した意味は、実はポンペオ氏の口から国務長官就任の時に語られた内容に符合するものです。それは「私が理解したトランプ政権が目指すものは、東西冷戦終結後にできた世界の枠組みを完全にリセットすること」という認識です。

 これがバイデン政権に何らかの形で受け継がれることを望んでいるといえます。戦略的忍耐に逆戻りすれば、中国はアメリカを追い越し、世界の権威主義国家が勢いづき、世界は大混乱に陥る可能性があります。

 誰が権力を握るかではなく、アメリカが「民主主義の勝利」と有頂天になっている間に中国が戦略的にアメリカに入り込み、中国の覇権主義の野心を覆い隠しながら、世論誘導と高度技術を盗み出すことに専念してきたことに立ち向かうことを継続すべきということです。

 多国間主義で腰砕けになることが懸念されますが、多国間主義を信じるヨーロッパがまさにそのパタンんです。国際協調は大切ですが、覇権主義の野心が入り込むのを阻止できるかどうかは重要なカギを握っています。ウイグル問題への対応はその試金石になりそうです。