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 中国ビジネスに再三登場する飲み食いの重要性は、実は基本信用できない人間の信頼度を確かめるためです。日本でも交渉力、営業力に人間力は欠かせないといわれてきました。ところがコロナで飲食ができない状況の中、ビジネスに求められるスキルは変化しようとしています。

 日本の某大手電機メーカーの英国ビジネス研修で「自分は、相手に酒さえ飲ませれば落とせることに自信はあります。英国でも通用しますか」と聞かれたことがあります。その人物は旧来の営業スタイルで実績を上げてきたことで、それが海外でどの程度通用するのか知りたかったのです。

 ところがコロナで事態は一変しました。飲食がビジネスから消えたからです。これは世界中同じで、欧米ではビジネスランチもままならない状況です。信頼関係構築に欠かせないとされてきた飲食を伴った会合が困難になる中、重要さを増しているのが「説得力」です。

 これは本来、欧米では普通に行われてきたことで、特に科学を絶対的に信奉する彼らは、科学的、客観的な資料を提示することが重視されてきました。さらに自分の伝えたいことをロジカルに話すことが重要です。同国人同士でも多少の文化の違いがあります。その壁を超えるのに有効なのがロジカル思考、ロジカルコミュニケーションだからです。

 明確な科学的根拠とロジカルに伝える力は、パソコンの画面越しに交渉を進める上において重要さを増しています。迫力だけで押し切る営業やプレゼンは通用せず、相手の納得感をもたらすためには、様々な根拠を示す資料の準備や画面越しでも理解してもらえるロジカルなアプローチが必要です。

 いい加減な資料や論理が飛躍し、破綻しているような状況では相手を説得できないというわけです。画面越しでは相手の心の動きを細かく読み解くことも困難です。頼りになるのは共有できる数字であったり、客観性だったりします。

 私は世界中でビジネス交渉現場にいた経験がありますが、常に成功の鍵を握るのは入念な準備でした。リモートではさらに準備は重要さを増しています。逆に言えば、リモート会議は準備された資料を互いに確認する場になるということです。

 ある人は「リモートで仕事の生産性が向上した」「移動時間や無駄な飲食を省けるので効率的」という声も聴くようになりました。ハーバード流交渉術で出てくる交渉相手の人間と交渉内容を切り分け、互いが追求する利益に注目すべきというのも同じことです。

 そこで重要になるロジカルに物事を伝えるということに加え、ポジティブアプローチを心がけることも重要です。そのビジネスの結果、WinWinで得られる素晴らしい結果を伝えることです。それも根拠のない楽観主義は禁物です。相手に安心感を与えるのはリスクへの配慮だからです。

 営業が得意な人の中には「会えば簡単に相手を落とせるのにな」という人もいます。リモートワーク
は新たな挑戦ですが、業種にもよりますが、仕事の効率化をもたらすために大きな意識転換をする必要があります。デジタル技術で距離を調節し、効率化を図れるとすれば希望もあるということです。

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