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 米ジョンホプキンス大学が提供している世界各国の人口100万人あたりの新型コロナウイルス新規感染者数の17日の直近7日間のデータを見ると、最も多いのは英国の4778.2人、2番目以降はアメリカの4602.1人、フランス1964.5人、ブラジル1798.6人、日本は発表されている国の中で13位の331.3人で世界平均の610.6人よりかなり低い数値です。

 もっとも、新規感染者数は感染の有無を調べるPCR検査などの実施規模に左右するため、正確な現状を表しているとはいえません。一方、人口100万人あたりの直近7日間の新規死者数感染死者数を見ると、最も多いにはやはり英国で115.8人、2番目以降はドイツの71.2人、アメリカの70.2人で、日本は世界平均の12.3人より低い3.6人です。

 いずれにせよ、日本はかなり低い数値に抑えられているといえるでしょう。無論、この1週間の上昇は特筆すべきですが、アメリカやヨーロッパも増えています。情報が飛び交う時代だけに各国のコロナ対策に大きなばらつきがあるともいえません。無論、地理的状況や医療体制の差は影響を与えているでしょう。

 様々な要素を勘案したとしても、日本の感染被害が低く抑えられてきた背景で最も大きいのは、私は欧米と比較した場合、国民性を第1に挙げたいと思います。無論、水際対策の比較的容易な島国である台湾、北と国交のない韓国も島国のようなもので、中国や北朝鮮との緊張から有事体制に入りやすい状況で感染を低く抑えられている側面もあります。

 しかし、同じ島国の英国が世界1の感染死者率を出しているので、それだけでは理由になりません。感染対策の要は対策の適正と実行力です。日本は実行力という面では、世界でも見事な動きを見せています。法的拘束力や罰則のあるロックダウンなしに低い数値に抑えられている国は他にありません。

 もともと手洗いやマスク着用の習慣があったことも有利に働いています。マスクの強制着用に抗議する日本人は皆無です。社会で決められたルールはしっかり守る訓練は幼稚園の時から日本人には叩き込まれています。

 フランスでは歩行者用信号を守る人はいません。自己判断を大事にするため車が来ていなければ赤信号でも渡ります。日本人は車が1台も通っていなくても誰も赤信号では渡りません。マスクも手洗いも赤信号のようなものですが、欧米では自己判断優先です。

 フランスでは、マスク未着用のまま路線バスに乗車してきた人を注意したバス運転手が昨年7月、暴行を受け死亡しています。日本ではありえない事件です。密状態が禁止され、外出禁止令が出ていても2,500人規模のダンスパーティーを年末年始に強行したフランスでは、SNS上で主催者の若者を支持する声もありました。

 今、フランス政府が頭を抱えているのは、コロナ感染終息の切り札と言われるワクチン接種を若者の半数以上が受けたくないといっていることです。さまざまな対策を打っても実行に問題があり、感染抑止の効果は半減しています。

 一方、クライシスマネジメントの鍵を握るのは多くの危機管理専門家が、リーダーシップであることを認めています。大規模な危機は有事と同じで司令官が勝敗の鍵を握るからです。専門家の意見を踏まえ、総合的に対策措置を判断し決定するのは意志決定者であるトップリーダーです。

 意思決定層は高い情報収集能力、現状把握力・分析力、対策には実行可能な目標やヴィジョンが必要であり、実行していくための強い指導力も必要です。さらには国民の協力を仰ぐために国民一人一人の心に響く説得力のあるメッセージを発出し続けるリスク・コミュニケーション力も必要です。

 このコロナ禍の1年間を通して、日本のリーダーシップは極めて怪しく、迷走も見られました。本来、国民の経済生活を大きく制限する措置を出す時は、経済保障とセットにして同時に発表すべきなのに、いつも保障は後追いです。そのあたりは欧米先進国は見事です。

 では、コロナ禍のクライシスマネジメントで実効性があるのは、リーダーシップなのか、実行力なのかといえば、実行力の方が有利に働いているといえます。どんなに効果的な対策を打ち出し、補償をしっかりしても、それを実行する行政力、対策にこたえる国民がいなければ結果は得られません。

 その意味で個人の自由を社会秩序より優位にしてきた欧米諸国は、今回のコロナ禍で弱点が露呈してしまった形です。さりとて個人の自由を統治者が勝手に制限するように考えも体制も変更するとは思えません。それは普遍的価値、文化だからです。

 個人の自由を優先する欧米に住む日本人の多くが感じることは、その素晴らしさと同時にその自由を支える個人の良識がなければ、恐ろしい結果をもたらすということです。欧米の現状は、かつてキリスト教信仰に支えられてきた良識が戦後75年間でなんでもありのリベラルズムで崩壊しようとしていることです。

 目標を掲げ、科学に基づいた実効性の高い対策を打ち出しても、それに答える国民がいなければ、危機を乗り切ることはできないでしょう。自由はあっても規範を持たない社会はいずれ衰亡していくのが歴史の常です。

 私から見れば、欧米先進国で培われ、進化したリーダーシップと日本の良識的国民性が合わされば最強です。日本は間違ってもリーダーシップで感染を抑えられているなどと思うべきでなく、国民に感謝すべきでしょう。無論、危機が長期化すれば、その国民性だけでは乗り切れないと思いますが。

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