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 トランプ政権4年間については、世界の識者が指摘するようにアメリカは外交的に多くの成功を収め、特に対中政策はバイデン政権にも受け継がれると予想されています。しかし、同時にアメリカ第一主義がもたらした経済ナショナリズムは、このままでは世界に中途半端なナショナリズムを広めただけに終わりそうです。

 昨年8月に毒殺未遂でドイツで療養していたロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が17日帰国の途につき、ロシア到着後に当局に身柄を拘束されました。「拘束すれば国際社会からの批判は必至」と報じられていまたが、プーチン大統領は果たして国際社会の批判を気にしているのでしょうか。

 答えは「ノー」でしょう。一方、中国は香港民主派勢力の活動家を国家安全維持法を根拠に次々に逮捕、起訴し、有罪判決を下し、それは国外にまでその影響を拡大しようとしています。新疆ウイグルへの弾圧もやめる気配はありません。つまり、国際社会の批判など気にしていないということです。

 冷戦後の国際社会の常識を形成してきたのは、主に冷戦の勝利国の超大国アメリカを中心とした欧米諸国の自由と民主主義、法治国家、人権、正義の価値観です。敗戦後の日本は一貫して社会的名誉を回復するため、この国際常識の価値観に沿う外交を展開し、評価を高めてきました。

 しかし、トランプ政権の4年間、最後はコロナ禍ですべての国々が経済的に衰退し、内向きになる中、国際社会へのプレゼンスを弱めるアメリカ、ブレグジットで弱体化する欧州連合(EU)は、ともに冷戦後に構築した新たな世界の枠組み自体が危うくなっています。

 つまり、「国際社会の批判」という時に基準になる価値観は2021年、崩壊の危機に晒されていると見るべきでしょう。もはや国連が非難しようが、欧米諸国が警告しようが、中国はなりふり構わず領土拡大にまい進し、国内の人権を無視し、自国民を強権弾圧し、ロシアも民主派勢力の指導者の暗殺を試みるなど、ブレーキが利かない状態です。

 中国政府は「世界の大国となった今、アメリカに気を使うことなく、欧米が築いた国際常識を覆し、国益を最大限追求する段階に入った」という認識を国内外にアピールしています。単純化していえば、世界を支配し、都合のいいように国際ルールを決めてきたアメリカに中国が取って代わる時が到来したという認識です。

 そのため、国際社会からの批判をかわす努力など必要がなくなっているともいえます。もっといえば世界の秩序は権威主義国によって崩壊の危機に晒されているともいえます。「力こそすべて」という18世紀、19世紀の世界に逆戻りするリスクを抱えているとも見えます。

 今年はバイデンのアメリカとジョンソンの英国、メルケルのEUが、中国、ロシアなど権威主義国家の人権弾圧批判を強めることが予想されます。しかし、その影響力は限定的になりつつあり、同時に人権外交を重視してこなかった日本は、欧米からもはみ出した中途半端な存在になる可能性もあります。

 対応を間違えば、欧米大国からの信頼も失い、さりとて権威主義の国とは価値観が合わず、自沈する最悪のシナリオも考えられます。逆に欧米が構築した価値観に潜む独善性、価値の一方的押し付け、差別的姿勢を取り除き、弱者のために生き、国際協調しながら権威主義に立ち向かう強い信念を日本が持てれば光を放つことはできるでしょう。

 今年はますます、権威主義勢力が超内向きで、やりたい放題のナショナリズム、民族主義を展開することが予想されます。アメリカの民主党政権は過去においても内政重視で、外交に関心が薄く、世界の警察官になるつもりはなく、夢見心地の理想主義で世界の悪に立ち向かう力はありません。

 経済ナショナリズムは世界経済を弱体化させ、権威主義国を太らせるだけです。日本は異常なまでに世間体を気にする国ですが、その世間の常識が崩壊すれば日本は独自の価値観を持つしかありません。その意味でも大きな岐路に立つ2021年だと思います。

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