Pierre_de_Villiers_23_April_2014

 フランスは2022年に次期大統領選挙を迎えます。1年以上前の世論調査で大統領候補で最も高い支持を集める人物が当選するのは稀な国ですが、今回、名前が浮上したのはフランス軍の最高司令官だったピエール・ドゥビリエ将軍です。

 ドゥビリエ氏が軍トップを辞任したのは2017年、マクロン氏が大統領に就任草々の頃でした。国防予算の大幅削減を迫る若干39歳の元銀行家の新大統領に対して、ドゥビリエは強く抵抗し、結果的にマクロン氏の決めセリフとなった「決めるのは私だ」「私はあなたの上にいる」が決定打となり、辞任しました。

 最近の著書『フランスの修復』の中で「軍隊と警官の数を減らした政治的近視眼」「悪名高い怠慢」とマクロン氏を非難しています。対立が起きてすぐにドゥビリエ氏は将軍を辞任しました。第5共和制始まって以来将軍の辞任は初めてのことでした。「私が愛するフランスの現実を見て傷ついた」と著書に書いています。

 辞任後はコンサルティング会社で長年の軍の経験からリーダーシップやリスクマネジメントを指導し、人材育成でも活躍しています。

 実は兄、フィリップ・ドゥビリエ氏は保守派の国民議会議員で、兄弟ともに人気がありました。兄は地元のヴァンデの町おこしで、フランス大革命に最後まで抵抗した「ヴァンデの悲劇」をスペクタクルにし、テーマパークを作った人物で、左派が賛美する大革命に批判的な保守派の中心人物の一人です。

 兄弟ともに自分の意見を歯に衣を着せず話すタイプですが、弟のピエール氏は、1975年に19歳でサン・シール陸軍士官学校に入学し、卒業後は軍歴を重ねながら、学ぶことにも余念がなかったそうです。2004年に首相の軍事スタッフ副長官を務め、2005年に准将に昇進しています。

 2006年12月から2007年4月まで、アフガニスタンの地域司令部を指揮し、15か国からなる2,500人の兵士を率い、 2008年にはフィヨン首相(当時)の軍事部門の長であり、2010年に陸軍少佐に就任した後、2014年2月15日にフランス軍の総司令官に就任しています。特に2015年以降、イスラム国(IS)に対する攻撃を担当しました。

 軍のトップに期待されるのは、リーダーシップです。状況把握能力、分析力、判断力、決断力、実効力は必須事項です。同時に兵士の命を預かるものとして、兵士の忠誠心や組織の意思決定、チームワークを司る能力が必要です。

 現時点では、ピエール氏本人が次期大統領選に立候補する証拠はないと、彼の出身地の地元紙ウエスト・フランスは書いています。いわば、保守派有権者のラブコールの次元です。しかし、支持率で苦戦するマクロン大統領が左派にすり寄っている今、保守には魅力的な候補者が必要です。

 ドゥビリエ氏は、3冊の著書の中で国に奉仕したいとの思いは認めています。「私は43年間、国に奉仕した。自分の軍の経験を国の奉仕​​と国の統一のために役立てたいと思っている」と書いています。ドゥビリエ氏のような人物に注目を集まるのも中道のふりをしながら左派にすり寄るマクロン氏の不人気に呼応する動きといえそうです。

ブログ内関連記事
マクロン仏大統領 支持率急落を招いた一言
次々に登場する素人政治家の国家リーダーの功罪が見え始めている
保守・リベラル英仏の違い 革命か名誉かは未だに国家の生業に影響を与えている
仏上院選で共和党が過半数維持 コロナ禍でマクロン中道政党は上下両院で過半数割れ続く