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 香港政府が、中国政府の新たな基準に従い、民主派の議員4人の資格を失効させたことについて、アメリカやイギリスなど5か国の外相が「香港の高度な自治をさらに損なうものだ」という強い懸念を共同声明の形で表明し、議員資格の失効を直ちに取り消すことなどを求めました。

 香港政府は今月11日、中国の全人代=全国人民代表大会の常務委員会が決定した新たな基準に基づき、香港の議会に当たる立法会で政府に反対する立場の民主派4人の議員資格を失効させ、これに抗議する形で民主派議員全員が辞職して抗議しました。

 これは香港が英国から中国に返還後、国際法上守ってきた一国二制度の完全な終わりを意味するものとして、国際社会も強く非難していました。香港政府は合法と主張し、中国政府報道官は非難に対して再び「内政干渉だ」と繰り返しました。

 興味深いのは、今回共同声明を出したアメリカ、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国は、通称アングロサクソンの国です。それも英国を起点とし、他の4カ国は多文化共存主義を掲げる移民によって人口的に作られ、自由と民主主義、法治国家を基本的価値に定める国々です。

 今回の共同声明で「香港の高度な自治や権利、そして自由をさらに損なうものだ」として強い懸念を表明し、一国二制度を完全に終わらせようとする中国政府の動きに対して、香港の自由を支持する5カ国「ファイブアイズ」がウォッチしていることを明確にしました。

 フランスにいると、アングロサクソンという言葉をよく聞きます。たとえばリーマンショックの2008年、不良債権化したアメリカの住宅のサブプライムローンが世界の金融機関に深刻なダメージをもたらした時、フランスのメディアは「アングロサクソンが世界経済を破壊する」と報じました。

 サルコジ政権の時に自由主義経済化を進めようとした時にも「アングロサクソンの経済システムは危険だ」などという批判が起きました。19世紀に環大西洋同盟の中核をなしたのは米英です。この特別な関係の下にかつての大英帝国、今の英連邦であるカナダ、オーストラリア、ニュージーランドがあります。

 フランスは、このことに時として「アングロサクソンの野望」といってみたりするほど対抗意識を持っています。無論、5カ国の実情は簡単にアングロサクソンの国とはいえない状況ですが。ポストコロナの時代に差し掛かる今、体制と価値観を完全に異にする中国の台頭に対して、特に香港問題で結束して取り組む姿勢を鮮明にしました。

 共同声明では「香港の安定と繁栄のためには、人々が正当な懸念や意見を表明するための手段を尊重することが不可欠だ」として、民主主義の根幹をなす言論の自由を弾圧する中国政府に対して「香港の立法会に対する行動を考え直し、議員を直ちに復職させるよう強く要求する」としています。

 香港は今、国内で共産党政府の基盤強化と覇権を強める中国と自由世界の主戦場になっているといえます。懸念を表明した5カ国の中にはオーストラリアやニュージーランドのように中国との経済依存度の高い国もあり、いわばファイブアイズに加わるのは相当な覚悟の現れです。

 アメリカのトランプ政権は対中強硬姿勢で知られていましたが、ビジネスマン出身のトランプ氏はなんでもディールで問題解決しようとしたため、中国にとってはやりやすい面もあったと思われますが、原則論重視の米民主党が政権を担えば、ディールなしの容赦のないイデオロギー闘争になる突入する可能性もあります。

 その時に存在感を表すのがアングロサクソンの5カ国です。すでに経済専門家の間では、米英がポストコロナの平和と安定に果たす役割の大きさを期待する意見が出始めています。

 仏独はアングロサクソン・グループの動きに対して様子見の構えで、ドイツは及び腰です。饒舌な中国がなんの説得力もない多国間主義を唱える今、その言葉に騙されやすい仏独は役に立たないとアングロサクソン勢力は見ているのかもしれません。

 これに対して、中国を最大の貿易相手国とする日本は、どう対処するのかが注目点です。果たして今後も対立する2つの勢力の仲介役を務めていくつもりなのでしょうか。それは失敗すれば両方から信頼されなくなり、敵にしてしまうリスクもあります。

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