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    WSJが紹介したGMの宏光MINI

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)など複数のメディアが、中国で米自動車大手 ゼネラル・モーターズ (GM)の小型電気自動車(EV)が、EVで世界を席巻するテスラ のEVセダン「モデル3」を抜いて売れているというニュースを報道しています。

 GMの中国ブランド「五菱」が発売した「宏光MINI」は最高速度が時速100キロながら、4300ドル(約45万円)という低価格も後押し、広い層で好感され、販売台数でテスラを追い抜いているそうです。テスラが昨年、上海で生産を始めたモデル3が補助金適用後の価格でも約3万7600ドルと高額なことを考えると販売台数では不利です。

 これはターゲットを大衆層と富裕層に絞ったビジネス戦略の違いともいえますが、今までのGMを考えると風貌がアグレッシブでアメリカらしい巨大なSUV高級車キャデラック・エスカレードのイメージが焼きついていますが、宏光MINIはま逆です。

 世界の自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えています。世界の自動車業界を牽引してきたアメリカの自動車産業はリーマンショックの打撃からクライスラー、GMは経営破綻しました。現在、クライスラーはイタリアのフィアット・グループ傘下にあり、再建を果たしたGMも、かつて世界最大の自動車メーカーだったころの勢いはありません。

 1970年代、アメリカの自動車メーカーは高馬力、高出力のガソリンを振りまく車にのめり込みすぎ、低価格で故障しない経済的な日本車の追随で大きな打撃を受けたのは周知のとおりです。今は大変革期に、どれくらい先を見通せるかが勝敗を分けるといわれています。

 当然ながら、スマートシティをIT技術と繋がり、事故を最小化する自動運転で走るクリーンエネルギーのEV開発は、最も投資が集中する分野です。

 GMは今年4月、ホンダとの間でBEV(バッテリー電気自動車)の供給契約を結び、GMが開発したBEVプラットフォームをベースにバッテリーやアッパーボディをホンダと共同開発しています。GMの工場で生産したモデルをホンダ・ブランド車としてホンダに供給する流れです。

 GM子会社でEV開発分野を担当するGMクルーズには、ホンダだけでなくソフトバンクも出資しています。日米連合の進化、拡大が進められているということです。

 フォードも昨年、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)とバッテリー電気自動車(BEV)で連携し、車両共同開発に乗り出すと発表しています。昨年7月にはVWが開発した電動車専用のプラットフォーム(MEB)の提供が決まり、そこにスマート化に必要な異業種も加わっている状況です。

 今後はEV開発で連携する企業が資本提携にまで至るのかが注目されていますが予断を許さない状況です。いずれにせよ、古い頭ではこの変革期を乗り越えられないことは明白で、GMが小型で廉価なEV車を売り出したのは、その覚悟の現れなのかもしれません。

 中国では何百万人もの人々が、移動手段として車より電動スクーターを利用しています。彼らにとって小型EVは無理のないライフスタイルの変化をもたらしているといえます。

 かつてアメリカ市場で故障しない廉価な日本車が席巻したように、今は中国で廉価で安全性の高いアメリカのEV車が人気を集めているのは皮肉なことともいえそうです。中国政府が温暖化対策に本腰を入れ始め、後発メリットで世界最大のEV市場となる中、GMの成果は大きいといえます。

 アメリカが政権交代とともに環境問題に力を入れる方向性が見えてきました。次期大統領予定のバイデン氏は、民主党左派の影響力が増す中、クリーンエネルギー・気候変動対策の一環として、自動車業界で100万の雇用を創出すると表明しています。EV支援はその中心だと指摘されています。

 トランプ氏は自動車メーカーの要請を受けて燃費規制の緩和に動きましたが、多くの予想を上回る大幅緩和だったために混乱が生じ、加えて石油業界への配慮でEV化への支援が遅れた感があります。環境問題への取り組みは企業には負担ですが、混乱するより政府が明確な方向性を打ち出すことはビジネスにとっても重要です。

 バイデン氏は大統領選で再生可能エネルギーやEVへの支持を表明し、バッテリー駆動車向けの奨励金の増額や充電インフラの強化に大型投資を行う方針を示しています。ただ、政府の歳出には議会承認が必要で、口だけに終わる可能性もないとはいえません。

 ただ、企業自体は、世界各国がガソリン車の販売期限を切る方針を打ち出しており、大規模な自動車メーカーの再編も進んでいることから、環境問題や安全性を無視した政策も打てないのは確かです。

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