billionaire

 先月、スイス金融大手UBSと国際監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が明らかにしたのは、保有資産が10億ドル(約1060億円)を超える資産家、いわゆるビリオネア(超富裕層)の総資産額は今年、世界的な新型コロナウイルス危機にもかかわらず、過去最高を記録したことでした。

 恒例の調査報告ですが、コロナ禍で企業の倒産が相次ぎ、航空業界は大幅な人員削減を発表し、失業者が急増する中で、ビリオネアは増える一方という話です。

 報告書によると、世界のビリオネアは7月末時点で2,189人で、総資産額は約10兆2,000億ドル(約1,080兆円)。これまで最高額だった2017年の8兆9,000億ドル(約940兆円)を上回ったとされています。

 USBの分析では、今年の特徴として挙げられるのは、電気自動車テスラや民間人の宇宙旅行をめざすスペースX社を経営するイーロン・マスク氏を代表格に、テクノロジー、ヘルスケア、製造といった業界の「イノベーター(革新者)やディスラプター(破壊者)」の超富裕層が増えていることです。

 従来のエンターテインメントや不動産業界の超富裕層を数で上回りつつあると報告書は指摘しています。それもこの流れは、新型ウイルス危機によって加速しているというわけです。

 アメリカ的な資本主義の考えからすると、増え続ける超富裕層が、より贅沢な暮らしを望めば、彼らが必要とする豪邸や自家用ジェット、大型ヨットなどの贅沢品市場が活気づき、彼らが欲する新たなサービスが生まれ、彼らの資産運用を手助けする金融サービスも潤い、経済を押し上げることになります。

 超富裕層といわなくても、かつて高所得者だった年金生活者は、高額の年金と所有する資産が所得を産み続け、コロナ禍でもビクともしていません。彼らは外出禁止などでストレスが溜まり、ロックダウンが解除されると日頃より高級なレストランに行き、贅沢品の購入に余念がありません。

 薄利多売の商売をしていたレストランが、高級食材を扱う高級レストランに変身させたことで成功したなどという話も聞きます。フランスでは第1回目のロックダウンが夏のヴァカンス前に解除されたため、ヴァカンス先でレストランでいつもは注文しない高級ワインを飲み、デザートを追加し、例年以上に贅沢した人が急増したという現象がありました。

 今はネットでの買い物が増え、料理の宅配サービスも盛んに行われていますが、町をぶらついて目に飛び込んでくる店舗で衝動買いする機会は激減しています。いわゆる消費の断食状態は断食明けには一挙に消費が伸びるV字回復理論があるため、政府はコロナ対策で巨額の借金を重ねても大丈夫という見通しもあります。

 日本では「デフレ不況脱却と持続的な経済成長の実現」を政府は政策課題に挙げていますが、長期デフレ時代に一般庶民に身についてしまった低額商品に走る消費慣習にコロナ禍が変化を与えるかもしれません。というのもコロナ禍でもビクともしない富裕層は、過去以上に贅沢にお金を使い始めているからです。

 当然ながら、コロナ特需で超富裕層入りする人と、コロナ禍で職を失い路頭に迷う人の明暗がはっきりする時代に入っています。ただ、世界に2,000人しかいない極少数のビリオネアと、それに次ぐ富裕層を除けば、大半のサラリーマンや自営業者は足元に押し寄せるコロナ禍に抵抗する術もなく、戦々恐々としながら生きているのが現実です。

 問題は、富裕層に集まったお金が世界をどう循環するかです。新しいビジネスは新規雇用を生み、富裕層の贅沢志向は新たなサービス業を生み、寄付文化のある欧米の富裕層はメセナや困窮者救済の人道支援にお金を回すかもしれません。

 懸念は寄付文化の低いアジアにビリオネアが増える傾向があることです。Ultra high-net-worth individual(UNHW)というカテゴリーでは総資産額3,000万ドル(約34億円)以上を超富裕層人口と位置づけています。銀行が資産運用対象者にする人たちで、世界に約22万人、その総資産額は27兆ドル(3040兆円)といわれています。

 UNHWを地域別に見ると、2019年は北米、ヨーロッパ、アジアの順ですが、国別に見るとアメリカ、中国、日本、英国の順で特に中国富裕層の増加が顕著です。地域や文化によって富裕層のお金の使い方は違います。

 コロナ特需のIT企業経営者はお金を何に使うのでしょうか。ポストコロナは富裕層のお金の使い方も世界経済に大きな影響を与えそうです。

ブログ内関連記事
科学的根拠のない運と懸け 政治やビジネスの非科学的に見える運と想定能力は今も有効か
コロナショックで貧富の差拡大の中国 誰もが経済的繁栄を享受できる社会主義は遠のくばかり
米テスラの独ブランデンブルク州にギガ・ファクトリー建設 ドイツへのインパクトは?
青天井のグローバルスタンダード報酬を日本企業はどう受け止めるべきか