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 日本ではかつて「想定外」という言葉が流行ったことがあります。今年、地球上の全ての人類を等しく襲った新型コロナウイルスは、まさに想定外の出来事でした。アメリカのトランプ大統領もコロナさえなければ大統領選で苦戦することはなかったでしょう。

 個人的に私はトランプ氏は、アメリカンドリームを追いかける大ギャンブル好きの典型的なアメリカ人だと見ています。何度も失敗を重ねながらも、70歳を過ぎても高い目標に向かって挑戦し続ける姿に勇気づけられる人は世界中にはずです。

 今回は、コロナ禍のカウンターパンチでノックダウン寸前です。それは想定外の事態に見舞われたからです。次元は低いのですが、最近、京橋で画廊を営む友人から聞いた話で、目の前に新たに建設されたホテルが今年、開業まもなくコロナ禍で、想定していた東京オリンピックも延期され、ホテルは閉鎖、建物ごと投機筋に売却されたそうです。

 友人の画廊はなんとかコロナ禍に持ちこたえているものの、周りで数軒が店をたたんだそうです。40年以上、銀座や京橋で店を営む友人の画廊で最近、40代の夫婦がホームページを見て来店し、モダンなインテリアのマンションに、署名な作家の高額の掛け軸を、さっと買っていったそうです。

 40代の夫婦と掛け軸の関係は、稀だったので驚いたそうですが、同時にコロナ禍でもビクともしない富裕層がいること、それも30代や40代で高額アートを楽しむ人たちがいることに時代の変化を感じたそうです。メディアにはなかなか乗らない話です。

 最近、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)の人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」に
「日産、コロナ禍の意外な勝者か」というコラムが掲載されました。ゴーン元会長失脚後の日産自動車が日本では赤字が膨らみ、苦戦状態を抜け出せないとの報道がありますが、同コラムはポジティブです。

 豪腕のゴーン氏なき後、日産は「危機から数年かけて回復する初期段階にある。ゴーン元会長は規模を重視し、販売目標を設定することでそれを達成した」、だが結果的に「利益を損なう結果となった。とりわけブランド価値は低下させた。ゴーン氏の指導下にあった日産とルノーは新たに「ボリュームよりバリュー」を掲げ、自動車価格と利益率の改善を目指している」と指摘しました。

 その上で「新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)で在庫が洗い出され、運転需要は押し上げられた。日産の自社とディーラーの在庫は9月末時点で53万台と、3月末の80万台から減少」「米国内の自動車価格が7-9月期に前年同期比3%上昇する追い風となった」と指摘し、日産に運勢が来ていると書いています。

 無論、今後、自動車市場がどうなるかは分かりませんが、個人的には日本の自動車メーカーが「ボリュームよりバリュー」に切り替えないことに苛立ってきましたので(それはソニーにもいえる)、適切な判断だと思います。時計や宝飾品なら貴族文化の伝統のある欧米にはかないませんが、自動車産業なら高級高性能は十分狙えるところです。

 政治もビジネスもギャンブル的要素が強く、運が味方するかどうかが成功を大きく左右するといわれています。たとえばフランスのサルコジ氏は就任時、高い人気を誇り、フランス人の多くが期待しましたが、リーマンショックに襲われ、金融機関救済のために公的資金を治安や雇用対策に使えなくなり、政権末期は支持率を下げました。

 リーマンショックは想定外の不運だったわけですが、金融界が抱えていた爆弾に誰も気づくことはなかったためにダメージも大きかったといえます。続くギリシャの財政危機もギリシャ政府が膨らむ財政赤字を隠蔽し続けた国民への背任行為が原因で、ユーロ圏は危機的状況に追い込まれました。

 その後、欧州はシリアやイラクからの大量難民が押し寄せ、財政も治安も圧迫しました。オバマ政権が本腰でシリア内戦に関与しなかったことで、過激派組織イスラム国が力を得たために難民が欧州に押し寄せたのに、今でも欧州ではオバマ氏が英雄視されているのは不思議です。

 世界には不確定要素が渦巻き、想定外のことが次々に起きています。そんな中で適切な判断をして次の有効な一手を打つことは非常に難しく、科学的に分析できないことで「運」という言葉が登場するわけです。個人的には人工知能(AI)が人類に最大限貢献するとすれば、予知能力だと思います。

 18世紀くらいまでは、予知能力は宗教に依存していました。西洋ではキリスト教、東洋ではヨガの行者が世界を予測する能力があるといわれていました。今は投資家が毎日の相場の動きに一喜一憂していますが、欧米のビジネススクールは成功例を分析し、そこに一定の法則を見いい出し普遍化することで「運」を科学しています。

 しかし、強運と思われるトランプ氏もコロナ禍には勝てそうもありません。ただ、非科学的な「運」であれ、科学的な分析による未来予測にせよ、逆境に勝つメンタルの強さが必要なことは明白です。それに科学的分析に、過去のいかなる時期より、グローバルな視点と多面的分析が必要なことは確かです。

 宗教を毛嫌いする人は、人間の霊感を信じる人はいませんが、女性には「女の感」というのもあります。トランプ氏の妻メラニアや娘イヴァンカが何をどうアドバイスしているかも興味深いところです。さらに岩盤支持層といわれた福音派にトランプを支持しなかった人がいることは何を意味しているのでしょか。

 それにトランプ政権は過去の政権が躊躇したイスラエルの首都をテルアビブからエルサレムに移すことを承認し、中東との関係強化を飛躍的に向上させたにも関わらず、アメリカの大統領選を毎回大きく左右するといわれる富豪の在米ユダヤ社会がトランプ氏への資金的支援をしぶった理由は何だったのかも興味深いところです。それも運と実力の範囲内で論じるのでしょうか。

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