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 アメリカ第1主義を掲げたトランプ大統領の登場で、グローバル化が抱える膳弱な側面が明らかになりました。同時に大国アメリカに頼り続けた同盟国は、アメリカに突き放され、関税や防衛費の増額を迫られ、日本や欧州はトランプ氏が主張する不公平感より、強圧的態度に不満を持ちました。

 しかし、アメリカから見れば、東西冷戦終了以降、経済力を増強してきたアジア諸国、中南米諸国が、未だにアメリカに多大な支出を強いているわりには、アメリカに対するリスペクトはなくなっている現状に不満も溜まっていたでしょう。単純な経済論理で安い労働力を求める企業行動にも問題がありました。

 ポンペオ米国務長官が説明する通り、冷戦後に出来上がった国際慣習の問題点をあぶり出し、正すことがトランプ政権の使命だったといえます。表面上は超ナルシストのトランプ氏の過激発言や、強引な同盟国への圧力のかけ方、虚勢を張る姿勢がひんしゅくを買い、評価が遠のいた感があります。

 一般的に20世紀の2つの大戦と冷戦を挟み、世界は環大西洋から環太平洋時代に入ったといわれていますが、識者の中にはポストコロナの世界を建て直すのは環大西洋の米英だと断言する人もいます。理由は自由主義、民主主義、法治国家の成熟度が世界で最も高く、世界秩序を建て直すには、この2つの国しかないという考えです。

 これは経済の専門家の中に存在する意見で、トランプ政権の4年間の教訓は冷戦後のグローバル化を膳弱にした中国やロシア、イラン、北朝鮮といった独裁権威主義国の正体をあぶり出したことでした。

 特に21世紀型の社会主義を標榜し、グローバル化を悪用し、実は覇権に余念のない中国は不当な方法で技術を盗み、富を蓄え、ウイルスのように蔓延ってきました。

 その意味でトランプ氏が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」というのは、医務は違いますが、あながち間違った認識とはいえないでしょう。フランスやドイツは多極化均衡論の多国間主義なので、ウイルス抑止には弱いので役に立ちませんが、米英ならウイルスから守れるというのも米英に期待する専門家の根拠です。

 中国に甘い日本は、日米同盟を重視しながらも、表向きは国連中心の多国間主義です。その点は欧州連合(EU)と価値観を共有し、バイデン前米副大統領にも近い考えです。バイデン氏の危険性は、パソコンでいえば悪意あるハッカー(悪)に対して非常に脆弱になる可能性が高いことです。

 仮にバイデン氏がアメリカ大統領になっても、対中国政策の強硬姿勢は変わらないとの見方が大勢を占めていますが、問題なのは多国間主義です。

 これまでの自由貿易などのルールを悪用してきた中国は、多国間主義なら、中国の民族弾圧や香港の一国二制度を骨抜きにし、周辺海域を軍事的に支配する強権外交への批判も、これまで以上に「内政干渉」で一蹴できます。

 国際ルールを守ろうとしない他国の行動に対して、多国間主義は制裁を与えることにも弱腰です。それは日本人が考えるより遥に世界に被害をもたらす可能性があるでしょう。

 問題なのは冷戦後の世界がグローバル化の美名のもとに、実は18世紀、19世紀の「支配するかされるか」という帝国主義時代の野蛮な意識しかない国が台頭してきたことでしょう。

 自由と民主主義の価値観のもとに自由貿易システムを構築してきた欧米大国は、世界がこれに追随するとの見方を持っていますが、それは錯覚であり、支配する者が最大限の利益を得るという考えを変えていない国は少なくないのが現実です。

 日本もその考えで明治維新以降、富国だけでなく強兵に走り、最後は痛い目を見て、覇権の野望は持たないと決めているようですが、欧州の帝国主義は日本と異なります。彼らは自らの理念を普遍的で正当性のあるものとして拡大した側面があるからで、そのこだわりは今も米英に存在しています。

 グローバル化は、その米英を弱体化させました。今、アメリカの巨大IT企業であるGAFAには、本来、米英が持っていたような信念や価値観はなく、ビジネスの論理だけで成長してきたものです。

 その典型はFACEBOOKの創設者ザッカバーグ氏で、4年前の選挙でFACEBOOKの政治悪用が問題になるまで「政治に意識がなかった」と公聴会で証言しています。彼らは多様性を重視し、多国間主義で多くは反トランプの民主党支持者です。

 差別を嫌う多国間主義や多様性は耳障りのいい言葉ですが、悪のウイルスが忍び寄ると大きな混乱が生じます。私個人もそうですが国際結婚と同じです。国際結婚は国境を越えて人類が一つになる上で価値あることですが、揉めると同国人同士より怒りと憎しみが拡がります。

 その対立が文化の違いによって生じるのか、それとも個人の問題なのかは見えにくく、あるいは当人が持つ譲れない価値観の問題なのか、見分けるのは困難です。つまり、国際結婚はうまくいけば、同国人同士では得られそうにない気づきや深い愛情を習得できますが、失敗したときの傷は非常に深いといえます。

 グローバル人材の育成やグローバルマネジメントのアドバイスを行ってきた私から見れば、グローバル化は非常に危険に満ちており、一歩間違えばカオスに陥り深手を負うことになります。その脆弱さが露呈し弱体化した例の一つが日産でした。

 トランプ政権4年間の最も大きな功績は、グローバル化に忍び込んだ仮面をかぶった悪のウイルスをあぶり出し、正面から戦ったことだと思います。強力なウイルス対策ソフトが投入されたようなものです。同時に自分の身は自分で守るという鉄則を世界は学んだはずです。

 つまり、グローバル化という前に国家も企業も自ら判断力を持つ自律性を持つことが大切だということです。アメリカはかつてのような圧倒的大国でもなく、民主党は特に世界に関心がありません。ポストコロナの日本は自立した独立国家として自ら考え、自ら判断して行動する必要があるだけでなく、企業もの同じことがいえます。

 長いものに巻かれろ、寄らば大樹の陰という日本の得意技は通用しなくなっています。トランプ政権4年間の教訓は、国際協調の前に独立国家として自律性を持つことの重要性だったと思います。

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