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 テレワークは、今のコロナ禍では効な手段として積極的に導入する企業は少なくありません。感染拡大が深刻な国ではテレワークは推奨から義務に変わり、フランスなどは抵抗する企業に査察が入り、テレワークを強制される企業も出ています。

 コロナ禍はデジタル革命を加速させているのは間違いありませんが、実は国内外を問わず、リーダーのマネジメントそのものにも大きな変化が生じています。理由の一つはパソコンの先にいる部下や同僚が見えにくくなっているからです。

 グローバルビジネスで日本にいながら国際業務に携わる日本人は増えていますが、彼らが身につけるノウハウは今、国内の日本人同士のテレワークにも応用できる点を指摘しておきたいと思います。

 国際業務で多くの日本人が遭遇するのが国による労働観の違いです。与えられた仕事にどうも全力で取り組んでいないように見えるとか、依頼した仕事が遅々として進んでいないとか、最悪の場合は無視され放置されている場合もあります。日本人には考えられない職務怠慢だと怒りが込み上げてきます。

 以前、アメリカのオーディオ機器メーカーの東京支社で働く日本人社員から受けた相談では、日本側が提案したアイディアに対して何週間経っても返事がなく、完全に無視されていることに理解不能と悩んでいました。

 タイの日系企業の製造拠点に対して調達部で働く日本側の担当者は、毎回、指示したことに想定の2倍の時間を要していることにストレスが高まり、怠慢だとして怒りを爆発させたことから、現地のタイ人スタッフに辞められたことを後悔していました。

 日本人は世界的に見て、仕事に対する責任感が強く、始めた仕事はやり遂げるまでやめないのが常識化しています。その常識を生みを隔てた外国のナショナルスタッフに当てはめると、うまくいかないケースが多いのが現状です。

 そんな時に重要になるのがグローバルマネジメントの方法輪ですが、コロナ禍のテレワークでは日本国内の部下や同僚との協業にも応用できそうです。

 まずは想定通りに部下や同僚が動いてくれない時に、職務怠慢と決めつける前に相手の事情を聞くことです。日本人は上下の縦の人間関係には慣れていても、横の関係は苦手です。テレワークの相手がどんな事情を抱えているかを同じ人間として耳を傾けることは重要です。

 テレワークになると、ワーク・ライフ・バランスがオフィスで仕事に集中しているより、プライベートな「ライフ」に足を引っ張られがちです。最初は緊張もあって仕事に集中できても、そのうち在宅業務の要領を得ると適当に手を抜けるようになり、上司からは見透かされることもあります。

 もともと個人別の成果主義ではない雇用形態の日本では、仲間と助け合いながら仕事をするのが普通なので、テレワークは苦戦する人もいます。会社側も成果主義なら個人にプレッシャーを掛けやすいのですが、チームを評価する方が優先されるとテレワークではモチベーションが落ちたりします。

 そこで上司はテレワークしている部下と人間関係を深める必要が生じ、部下のさまざまな事情に耳を傾ける必要があります。つまり、聞き上手の上司になることです。

 2番目は、目標やヴィジョンの共有です。実は上司は部下とは異なる階層、つまり意思決定に近い所にいるので目標やヴィジョンを理解しやすい立場にいます。部下が同じように目標を共有しているというのは錯覚です。しかし、目標やヴィジョンの周知は言葉で伝えればいいというものではありません。

 最も有効なのは問題解決に取り組むときです。テレワークしている相手と遭遇する問題を一緒に考え解決しようとする時は目標やヴィジョン共有のチャンスです。上司と部下が一緒に考えるという作業も日本人にはけっして容易ではありません。

 具体的には「仕事が最近、進んでいないように見えるけど、こちらで何かできることはないか」と部下に聞いてみるのも一つのアプローチです。21世紀のリーダーシップは、部下への一方的命令やパワハラに近いプレッシャーを掛けることではなく、共感しながら部下を支援することです。

 実はグローバルマネジメントでは部下が上司を支えるより、上司が部下を率いることが重要です。問題はその率い方にあるわけですが、上司は部下に見えない全体を見渡せる位置にいます。部下は自分の仕事に集中するだけで全体は見えにくいものです。特に欧米人は全体に関心がありません。

 3番目は、部下の仕事が全体に与える影響を具体的に知ってもらうことです。たとえば、その部下が予定通りに仕事を終えなければ、他のチームメンバーがどの程度影響を受けるかなどです。

 多くの業務はチームでこなす時代、上司はチームの話し合いをリードしながら、自分の仕事が全体に与える影響を自覚してもらう必要があります。職場にいれば、迷惑する同僚が横にいるので気づきますが、テレワークでは、何度、その話し合いを繰り返す必要があります。

 4番目は、リーダー自身に問題がないかを自問することです。テレワーク先の部下がサボっているように見える時、相手を責める前に部下をそうさせている自分のリーダーシップやマネジメントに問題がないかチェックすることです。

 日本の場合、リーダーシップやマネジメントを正式にビジネススクールで学ぶ機会はなく、経験知と上司の教えから学ぶ場合がほとんどです。それに会社への忠誠心など社員のエンゲージメントが他国より高いので、そこに頼りがちです。

 しかし、テレワークではそれは通じません。仕事の進捗の管理もリーダー自らが行う必要があり、ヴィジョンや目標、チームに何が必要かを周知徹底するのもリーダーです。それでもリーダーに従わない部下はいるものです。そこで異文化の協業に役立つグローバルマネジメントを応用するわけです。

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