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 世界の注目を集めるアメリカの大統領選挙は、自由と平等、公正さを国是として人口的に作られた超大国の民主主義の行方が問われるものとして注目されています。特に一党独裁の管理型国家体制の中にいる中国人には、小さな政府による自由と民主主義を標榜するアメリカの選挙は自国にないものとして注目を集めています。

 混乱が続くアメリカ大統領選挙は、中国共産党政府にとって民主主義の崩壊、自国のシステムの正当性を証明するまたとない機会でしょう。暴動がエスカレートし、死傷者が大量に出て政治、経済、安全保障が揺らげば、中国式社会主義の勝利ということになります。

 中国が1980年代初頭に改革開放に舵を切った時点で、日本人は共産主義を捨てたと認識する人は多いのですが、欧米ではそう単純には見ていません。経済は確かに自由化されましたが、それは自由貿易を利用して経済を成長させるだけで、国家自体は完全に共産党政府に管理された社会主義国だからです。

 特に日本人が軽視しがちな信教の自由は保障されておらず、宗教をアヘンとした共産主義の考えは捨てていません。同時に宗教的信念を含む言論の多様性も認められておらず、香港にもその考えを適応し始めました。それに漢民族中心の民族主義も捨てておらず、新疆ウイグル族への弾圧を繰り返しています。

 自由経済システムを利用しながら、着実に超管理型の21世紀の中国式社会主義を世界に浸透させ、本音は中華思想にある世界支配をめざしているのが中国です。宗教、民族への弾圧、言論の自由の封殺を変える考えは毛頭ない以上、共産主義の血が流れているといえるでしょう。

 そんな中国の経済的に豊かになってからの新しい世代は、実はアメリカへの憧れは非常に強いものがあります。無論、子供の時から共産党政府による徹底した反民主主義的愛国教育を受けているので、簡単にアメリカに亡命するわけではありませんが、いつも気になっている存在です。

 そこで民主主義に表れる意見の多様性が、どのように調整されていくのか、民意はどのようなプロセスで反映されているかは彼らは気にしているところです。そこでの注目点の一つが意見の対立です。日本でも対立そのものが良くないという考えが強く存在します。

 「長いものに巻かれろ」「寄らば大樹の陰」という諺にあるように、権力者や世相の大方の流れに従うことが身を守る処世術だと考えられています。自己主張が強い人間は煙たがられ、会議や交渉で対立が起きると、まずは対立を抑えることに走るのは「和を持って尊し」とする精神でもあります。

 しかし、本来、西洋で生まれた民主主義の原則は、言論の自由が保障され、対立すること自体は正常な状態です。ユダヤの世界では会議参加者が全員賛成したら決めないという慣習があります。反対意見があるからこそ客観性が担保され、リスク認識もできると考えているからです。

 無論、この場合は対立には条件があり、それは紳士的に行うことです。それは意見と人を分けることでもあります。自分の意見に反対する人間を憎めば、民主主義のルールからは逸脱することになります。さらにそこには参加者の良識も必要です。

 また、大原則はヴィジョンを共有することです。なんのための議論かということです。理性的議論には上下はなく、ヴィジョンに向かって意見の対立点を明確化し、そこからより良い結論を導き出すのが民主主義の原則です。

 ところが東洋では意見と人間を分ける文化がありません。儒教の影響もあり、人間の上下関係が強調され、同時に「支配するかされるか」という意識が強く、議論で勝てば人を支配でき、負ければ屈伏せざるをえないということになり、権力主義、権威主義に陥りやすいのが東洋です。

 無論、西洋でも、特に勝負の好きなアメリカには弱肉強食の考えが強いので、勝ちに行こうとする傾向は強いのですが、その一方でキリスト教の人を憎むことを良しとせず、許しと寛容さの精神が働いているのも事実です。この考え方は民主主義を支える上でかなり決定的です。

 アメリカでは、分断という言葉が盛んに使われていますが、政治家は偽善的で社会の分断を加速させたオバマ政権のバイデン副大統領が、トランプ政権による分断を避難する資格はないと思いますが、意見の対立そのものは民主主義社会では正常なことです。

 その正常さはアメリカでは今も機能しているし、アメリカの人種差別を批判できる国は世界のどこにもありません。むしろ、この試練で民主主義が強固になると思われ、今は一時的に中国が自国のシステムの正当性を証明できたと思うかもしれませんが、そのうち歯噛みする時がくると私は見ています。

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