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 何を隠そう私もアメリカのトランプ大統領のツイートをフォローしている一人です。大統領が毎日何回もツイートするのは今のデジタル時代らしい発信の仕方ですが、内容は時としてその下品さや荒っぽさ、教養のなさも垣間見え、実際の任期中の実績が霞んでしまうことは残念なことでした。

 日本もそうですが、ヨーロッパも基本的にはバイデン前副大統領候補支持が多く、トランプ氏の礼儀のなかを毛嫌いする人は少なくありません。ヒューマニズムと多国間主義を標榜する仏独だけでなく、アメリカと特別な関係にある英国も「壊し屋」のトランプ氏を嫌う人は多いといえます。

 大統領選の結果がいつ判明するかは不明ですが、まず、ケンカっ早そうなトランプ氏は、レーガン大統領以来、自ら戦争を世界に仕掛けなかった唯一の大統領でした。

 確かに民間人に化学兵器を使用したことでシリア空軍基地にミサイルを打ち込み、テロの黒幕のイランのカセム・ソレイマニを殺害しましたが、戦争に発展するような攻撃ではありませんでした。

 平和を標榜し、ノーベル平和賞を受賞したオバマ前大統領は8年間の在任中にアフガニスタンやイラクから駐留米軍を撤退できず、シリア、イラクの内戦収拾もできなかっただけでなく、シリアのアサド大統領が化学兵器を使用しても傍観し、その弱腰を見て過激派組織、イスラム国(IS)が一挙に勢力を拡大しました。

 北朝鮮が密かに核武装したのも、オバマ政権時代でした。中国は南シナ海に軍事基地を整備し、オバマ政権が世界の問題に無関心で介入する意志が薄いのを見ると、一挙にロシア、中国、北朝鮮、イランといった権威主義の国が覇権を強め、世界は不安定化してしまいました。

 アメリカ国内を見ても、民主党が今、トランプ氏が国家を分断したと非難していますが、実はオバマ政権末期にもアメリカ国内メディアは「オバマ政権は保守・リベラルの対立、国の分断を加速させた」と批判していました。

 日本では最後まで人気の高かったオバマ氏ですが、バイデン氏の応援演説でトランプを国の分断の張本人と批判するのは、自分の罪を隠す狙いもあるようにしか見えました。

 偉大な実験国アメリカは今、建国以来の大きな岐路に立たされているように見えます。社会主義のソ連帝国に勝利したはずのアメリカは、国内が今、まるで冷戦状態に陥り、保守派もリベラル派も市民は武装して、いつ内乱が起きるか分らない状態に陥っているようにも見えます。

 これを全てトランプ氏のせいにし、変化の本質と向き合わなければ、世界も悪影響を受けるのは必至でしょう。無論、今はトランプのおかげで世界1の産油国になったアメリカには、GAFAと呼ばれる世界最強の巨大グローバル企業もあり、まだまだ、新しいものを生み出す力も持っています。

 実はたとえばコロナ禍を除けば、年間の外国人旅行者数はフランスが長年、トップの座を維持していますが、その旅行客がもたらす観光収入はアメリカが世界トップです。それに今でもアメリカに移住を希望している外国人の数は減る気配がありません。

 私の知る限り、驚くかもしれませんが、アメリカは最も差別の少ない国です。そして新しい物を生み出す力の源である自由も世界一保障されている国です。40カ国以上を取材してきた私から見れば、アメリカの世界に対するプレゼンスは落ちたといわれますが、21世紀の世界秩序をアメリカ抜きで考えることはできません。

 私個人は、アメリカは原点に帰り、世界に対して大きな責任と使命があることを再確認し、保守リベラルの違いを乗り越えるより大きな目標を見つける必要があると思っています。9・11テロ、イラク戦争以降、それを見失ったことが、アメリカの混乱に繋がっているように見えます。

 大きな目標を共有するには、過大な要求を提示するトランプ流ドア・イン・ザ・フェイスのビジネス交渉スタイルには限界があるはずです。内政も外交もビジネスとは違うからです。そのせいでたくさんの敵を国の内外に作ってしまったのも事実です。

 保守派は人格より行動力といいますが、何でも一人ではできないことを考えれば同盟国を敵にして成果は出せないでしょう。アメリカ国内でも下院で与党の民主党を敵視していては法案も通せません。

 トランプ氏は、上品な政治エリートではない勝負が大好きなアメリカ人を代表する人間で、アメリカ人は西部開拓史の流れ者判事ロイ・ビーンを想起する人もいます。しかし、今の時代に破天荒で手荒なビーン判事とトランプ氏を重ねるのは無理もあるでしょう。

 無論、国内外のならず者を一掃するのに手ぬるいことはしないという構えは、ビーン判事に似ています。女性に弱く、その大衆性もトランプの魅力なのでしょう。善くも悪くも表裏のない分かりやすさがアメリカ人らしいともいえます。

 オバマ氏もトランプ氏もアメリカ社会が生み出した21世紀の大きな変化の時代の寵児だったといえます。ネックストコロナが生み出す指導者は経済を潰すことなく、国民の生命を守ることが求められていますが、世界を大混乱させないことは、もっと大切なことだと思います。

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