Deglobalization 1

 日本企業は新型コロナウイルスの感染拡大でアジア、特に中国とのサプライチェーンが寸断されたことから、リスクの分散化を進めています。実際には中国の生産拠点の1部をベトナムなど東南アジアに移転させようとしています。これは正しい判断です。

 グローバルビジネスの関わってきた私から見れば、グローバル化で起きた自国の産業の空洞化を解決するため、グローバル化そのものが間違いだったとする脱グローバル化の動きには、諸手を挙げて賛成することはできません。米中経済戦争やコロナ禍のサプライチェーン問題は、グローバル化が間違っていたと単純に論じる話ではないからです。

 とはいってもグローバリゼーションを金科玉条のように賛美する気にもなりません。これはあたかも国際結婚と同じで、うまくいかなくなると、やっぱり国際結婚はすべきでないという結論を導き出すのは正しいとはいえないのと同じです。国際結婚している私はそう思います。

 確かに国際結婚は天国か地獄です。天国はともかく地獄は異なる常識、異なるコンテクスト同士のトラブルは戦争になりやすいのは歴史が証明しています。何千年も異なる風土の中で暮らし、そこで出来上がったコンテクストには共有しがたいものが多いのは事実です。共存に失敗すれば醜い対立も起きます。

 米ハーバードビジネスレビュー(HBR)が掲載した「米国が脱グローバル化を進めるべきでない4つの理由」という元ボストン・コンサルティング・グループのパートナーのトーマス・ハウト氏の論文は、米大統領選最終盤だけに政治的意図も感じざるを得ない側面もありますが、興味深いものです。

 彼の主張は、アメリカがサプライチェーンの脱グローバル化と、中国とのデカップリング(切り離し)を推し進めれば、アメリカの経済的・政治的国際プレゼンスは弱まり、国際貿易システムを不当に悪用し世界覇権を強める中国を利するだけというものです。

 実際、アメリカの多国籍企業は自国に生産拠点を回帰させる政府の要求にそれほど応じていません。それは市場いう意味だけでなく、グローバルビジネスで得てきた自国だけでは得られないダイバーシティが生んだ豊かなビジネス資源を捨てることを意味し、退化する結果を生むからです。

 日本もアメリカ同様、現実にはテクノロジー産業は、国外での売上げと事業活動に依存している。それに高度な技術で作られる製品が中国などで安価に生産されているからこそ、「安くて高品質の製品」を世界に提供でき、競争力も確保している。

 仮に日本企業がアジアから撤退し「高性能だが高額」の商品を出したら、あっという間に安価な中国や韓国製品で日本の市場は独占されるでしょう。アメリカの多国籍企業が海外引き揚げを政府から要求されても戻らないのはロジカルな理由があるからです。

 脱グローバル化を唱える論者の多くは、愛国主義者が多い反面、他国からの影響に非常に保身的な人が多い。しかし、「日本には日本のやり方がある」という人は、日本が明治維新以降必死に欧米の文明に学んで発展した過去や、戦後、アメリカがもたらした民主主義で平等社会が築けたことを忘れているように見えます。

 グローバル化も問題の本質は、国に引き籠もり、外国からの影響を最小限にする脱グローバルではなく、グローバル化がもたらした負の遺産に正面から対処し、人間を幸せにしない要素を徹底排除することです。

 具体的には、他国で多額の投資と優秀な人材の長年の努力が生んだ高度な技術をただで盗もうという勢力を徹底監視し、努力なしに利益だけ得ようとするのは間違いだということを教えることです。自由市場主義を美辞麗句で賞賛しながら、実は悪用して世界支配を目論むことも許されないことをはっきり示すことだと思います。

 どうしても盗むことをやめない場合は、そうはしない国に移転し、それでも守れないが極めて国民の声明と安全保障に関わる重要な高度精密医療機器や軍需産業などは、国内生産するなどという方針は国が考えることです。コロナ禍はグローバル化の再点検の機会となりましたが、全て間違っていたという話ではありません。

 ネクストコロナは国際的協力関係を深め、それぞれの企業が能力を強化することが重要なのであって、脱グローバル化は中国を利するだけです。

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