Sonyheadquarters
    ソニー東京本社

 並み居る世界の優良企業の中から、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が選ぶ「世界で最も持続可能な経営をする企業100社」の首位に立ったのは、日本のソニーでした。長期に暗いトンネルの中にあったソニーの世界再登場は、今流行りのレジリエンス(再起力)を見る思いで、日本人としては鼻の高い話です。

 このランキングが重要なのは、高い収益を挙げている企業というよりは、ヒトを“資本”とみるHuman capital、社会資本 Social Capital、環境 Environment、ビジネスモデルとイノベーションBusiness Model & Innovationを査定の基本に置きながら、企業の健全性、将来性、社会貢献、職場環境、透明性など、さまざまな角度から数値化していることです。

 WSJの環境、ソーシャル、ガバナンス(企業統治)調査アナリストが5500社以上の上場企業を評価し、作成したランキングには、各分野の査定基準に従いながら、持続可能性を幅広い見地で捉え、WSJは「リーダーシップやガバナンス慣行を基に長期的な株主価値の創造能力を採点した」としています。

 そのランキングは、結果的にネックスコロナに向け、世界的企業が優秀な人材を集める上で非常に意味のあるスコアを提供しているともいえます。そこに首位のソニーを初め、100社中日本企業が16社ランクインし、アジアではLGやサムスンなど韓国の5社、インド2社を大きく引き離しています。

 国別でもアメリカ企業が全体の23%と最も多く、2位が日本で16%、3位がフランスで9%となっており、アメリカ、日本が他を圧倒しています。技術1流、経営3流といわれた日本企業の汚名挽回というところでしょう。興味深いのは台湾企業はあっても中国企業は1社もありません。透明性のなさなどが致命的だったのでしょう。

WSJ world's management

 このランキングは多くの投資家が注目し、株主の判断に影響を与えています。スマホで韓国、中国に負け、PCは徹底を余儀なくされ、ゲームなどエンターテイメントが頼みの綱と見られたソニーに復活の日は来ないのではと見られてきただけに、いいニュースだったといえます。

 同ランキングで高いスコアを出すのは容易なことではありません。たとえば、WSJの調査チームの評価は、持続可能性会計基準機構(SASB)の枠組みに沿っており、SASBは、企業の営業業績に影響する財務の合理性に関する重要度の高いカテゴリーです。

 また、「ランキングには、データサービス・助言・情報提供会社アラベスクS-レイと共同開発した人工知能(AI)も使用されている」といいます。

 重視される透明性のスコアには「企業の方針や取り組み、業績指標に関する情報がどの程度公開されているかが反映されている。それらは全て、企業の長期的な財務業績のほか、地球や人間に与え得る影響の重要な指標になる」としています。

 WSJの同ランキングで2位のオランダの医療機器メーカー、フィリップスは、1990年代から高額機器を含め、ほぼ全ての自社医療機器を引き取り、修理し再販しています。一部の予算の限られた顧客に品質を落とさずに低価格で機器を提供するのが狙いだといいます。

 今のコロナ禍で医療機器メーカーは成長産業ですが、高額医療機器は財政的にはどの国も頭痛の種です。特に途上国には特別な支援なしに手にすることはできません。ランキングでは「社会資本」という項目に分類され、フィリップスは高い評価を得ています。

 デジタル化に舵を切る企業が多い中、セキュリティー部門でもソニーや3位のシスコショステムズは高いスコアを叩き出しています。中国は今後、100社にランクインすることがあるのか不明ですが、WSJが示す世界標準は重視してしかるべきものです。

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