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 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)と同時進行するように、世界は意思決定と権限が政府に集中する中国の覇権に脅かされています。つまり、政治的には民主主義が劣勢に廻っており、最も民主主義の衰退を印象づけたのが、英国の欧州連合(EU)離脱でした。

 議会制民主主義の聖地である英国で、国民投票という原始的民主主義の手続きを踏んだ結論はEU離脱でした。ところが決めたのは2016年6月、今、離脱移行期間で12月には完全離脱の予定ですが、すでに4年以上経っています。EUとの離脱交渉は揉めに揉め、英国議会は何度も離脱案を否決しました。

 英国主導のハード離脱を誓ったメイ政権は倒れ、離脱派の急先鋒といわれたジョンソン氏が政権についたものの、ヘタをすれば合意なき離脱の可能性もあり、コロナ禍も加わり、英国経済には暗雲が垂れ込めています。そのコロナ対策でも英国は初動が遅れ、逆に政府が強権を行使できる中国、ベトナムなどが防疫に有利なようです。

 民主主義の弱点は方針を打ち出すまでの意思決定のプロセスが煩雑で時間が掛かること、権限の所在が時として明確でないこと、結果的に迅速さが要求される事項についてタイミングを失うことです。命令系統が複雑なために対応に現場の混乱が生じやすいことも挙げられます。

 一方、進化した民主主義のメリットは、少数意見にも耳を傾け民意を反映しやすいこと、選挙で国民は自らの意見を代弁する代議士を選択できること、政治の議論も多くは公開され、ジャーナリズムが権力の暴走を阻止するため監視できることが挙げられます。

 独裁体制の弱点は、権力が集中することで国民の意見の集約よりも独裁政権の意向が優先されることです。透明性はなく、言論統制でジャーナリズムは政府の宣伝機関で権力の監視機能はありません。旧ソ連や現中国も共産党幹部が権力だけでなく、富も蓄えているのが現状です。政治腐敗のリスクは極めて高いといえます。

 今、民主化を求める反政府デモが続く旧ソ連邦のベラルーシもルカシェンコ政権独裁政権は、なんと東西冷戦終結以降、延々と権力を握ってきました。世界には独裁体制の国は今も多く存在し、チュニジアやエジプトなどアラブの春で民主化に移行した国々も混乱が続いています。

 しかし、合議に時間の掛かる民主主義は激変する世界の中で、意思決定が迅速で政策実行が早い独裁体制の国の前に劣勢に廻っています。独裁体制がうまく機能しないと信じていた自由主義世界は、自分たちとは違うDNAを持った東洋人の出現に戸惑っています。

 そのDNAは個人の自由と選択の権利より、全体の調和を優先する個人主義ではない東洋人のメンタリティです。世界第2位の経済大国を豪語する中国で、いまだ6割以上の国民が貧困にあえいでいるのに、なぜ暴動や反政府抗議運動が起きないのかは、欧米諸国からみれば理解不能。

 では、ビジネスの世界はどうなのか。個人優先の欧米先進国では個人を行かす組織が歓迎されます。しかし、たとえば集団優先の日本では、組織を活かすために個人は存在しており、組織のために個人の犠牲はいとわない文化で、それでも反乱は起きません。

 アメリカではエグゼクティブの会議でも、最終的に民主的手続きを尊重し、挙手で決めたりしますが、中央集権的フランスはトップに決定の裁量権が集中し、その権限は絶対的です。ビジネスの世界は政治と違い、民主主義が徹底しているわけでありません。

 とはいえ、独裁的な体質を持つ企業は組織を大きくできず、長期的繁栄も難しいといわれています。そこで、意思決定が迅速な社会主義体制の国と企業に対応するためには、権限を明確化し、権力をある程度集中させ、煩雑な意思決定の手続きを単純化する必要があります。

 一方で、正しく権力を行使できる実効力のある人材の育成が必須です。さらに意思決定を下す幹部は高い見識と見落としがないように短時間で熟慮できる能力が必要です。つまり、戦争と同じで誰がトップに立つかで勝敗が決まるということです。日本的なチーム調整型リーダーでは役に立たないということです。

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