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  モーリシャス沖で日本船籍のタンカー座礁 英BBCニュースより

 先月27日、インド洋モーリシャス沖で日本船籍のタンカーが座礁し、今も重油の流出で生態系への深刻な影響が懸念され、事故原因究明が急がれています。実はフランス人の義弟が今年5月までモーリシャスに住み仕事をしていた関係もあり、義弟からも最新の情報を聞かされています。

 商船三井が運航する貨物船「WAKASHIO」の乗組員らは、地元当局の調べに対し、座礁する直前の先月25日夜に乗組員の誕生日を祝い、WiFiに接続するために陸に近付いたと供述していることが明らかになりました。事故原因は陸に近づきすぎて珊瑚礁の散在する浅瀬に船が乗り上げたと報じられています。

 英BBCは、今回の事故は世界的に連日報じられ、関心の高さが伺えます。過去のオイルタンカーからの沖合重油流出事故としては、その量はけっして多い方ではないものの「流出場所が環境保護の対象となっている2つの海洋生態系と、国際的に貴重な湿地帯である自然保護区ブルー・ベイ・マリーン・パークの近くで起きたことが問題」とBBCは指摘。

 モーリシャスは世界的リゾート地とか世界最後の楽園などといわれていますが、モーリシャスには特有の植物や動物が密集し、生物多様性の貴重な世界的財産とされています。BBCは「国連の生物多様性条約によると、モーリシャスの海は、魚800種、海洋哺乳類17種、カメ2種を含む1700種の生き物が生息し、サンゴ礁、海草、マングローブが、並外れて豊かな海をつくり出している」と説明しています。

 「これだけ豊かな生物多様性のある海は、もうほとんど地球に残っていない」という英ブライトン大学で海洋生物学を教えるコリーナ・チョカン博士の指摘も紹介されています。義弟のブリュノが関わっていた観光業では世界有数の開発業者らの投資が目白押しだったのも当然です。

 その世界的自然遺産が、タンカーの乗組員の浅はかな行動で致命的ダメージを受け、今後、回復には20から30年以上を要すると専門家は指摘しています。それでも珊瑚や動植物の死滅が懸念されます。

 グローバルビジネスで人材マネジメントに長年、関わってきた私としては、多国籍乗組員が引き起こした愚かな行動を聞いて「さもありなん」と正直思いました。グローバル化するビジネスの中で、最も日系企業の課題となっているのが、ナショナルスタッフのマネジメントです。

 特に日本人以外のリーダーのマネジメント問題は深刻です。ODAで世界中に病院や学校、交通インフラなどに関わる日系企業は、まったくスムーズにはいっていません。アフリカの某国で病院建設を請け負った日系ゼネコンは、納期が2年も遅れ、何度も施工をやり直しています。

 大抵は日本人がリーダーですが、リーダーシップがなく、ナショナルスタッフを上手に管理できていません。「日本人ではありえないことが多い」という言葉を嫌というほど聞いていますが、そもそも日本人と同じようにやれると期待する方が間違っています。

 逆に某ドイツの建設会社で働くカリブ出身の友人は、白人と黒人のハーフですが、ドイツの海外援助プロジェクトで現場監督を任されています。彼は日本円で約2,000万円の高額報酬を受け取っていますが、ドイツの会社は海外の多国籍チームのプロジェクトでは、現場のリーダーが鍵を握ることを心得ているからです。

 船主と運営会社が別なのが常識の大型船の場合、ともすれば責任の所在で揉めることも少なくありません。今回も商船三井が船主の長鋪汽船からチャーターする用船で重油を運んでいました。問題になっている船員の管理は、今回は長鋪が行っていたようですが、別会社が管理するケースも少なくないのが実情です。

 問題になっている貨物船の乗組員はインド人3人、スリランカ人1人、フィリピン人16人の計20人ということですが、誰が船長だったかが今後の焦点になるでしょう。どちらにしても船主も運航会社も日本企業です。

 日本のマネジメントスタイルは、報連相が基本。それも下から上に対してです。これはグローバルマネジメントでは通じない手法です。なぜなら「人は嘘はつかない」「作り話はしない」「不正の隠蔽はしない」という性善説が前提だからです。海外では性悪説が常識です。つまり、上からの監視や管理、ルールの徹底、賞罰の明確化が非常に重要です。

 WiFiが繋がらないために島に近づくなど論外の行動が起きたことを考えると、管理責任は重大です。いつでもルール違反は起きうるというのがグローバルマネジメントの常識。植民地を山ほど抱えてきた英国などは、現地の人を奴隷としか見なしていなかったという問題はあるものの、その厳しい姿勢が見事な建物を世界中に残しています。

 今は、現場に立つリーダーをどう育て、どう管理するかが最重要課題です。たとえ日本人が派遣されたからといってうまくいくとは限りません。多国籍のスタッフを管理する特別な能力が必要です。小さなチームにも階層や権限の棲み分けがあり、意思決定プロセスを示す命令系統の明確化も必要です。

 船には無責任な季節労働者も多く乗ってきます。世界の豪華大型客船の船内スタッフは多国籍で管理は容易ではありません。今回の不祥事は、世界中の環境保護団体から顰蹙(ひんしゅく)を買い、モーリシャスという国家に大打撃を与えた事故です。

 個人的には、多国籍チームのマネジメントを甘く見た日系企業の問題だと思います。その背後には日本的経営への過信と異文化への無知があるともいえます。

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