Frecciarossa1000
   フレッチャロッサ1000

 日立製作所がイタリアの鉄道運営会社トレニタリアと組んで、鉄道の高速車両「フレッチャロッサ1000」を受注する契約を結んだというニュースが今月12日に入ってきました。受注総額は8億ユーロ(約998億円)、うち日立の受注額は約600億円という大型受注です。

 納入する車両「フレッチャロッサ1000」は日立とカナダのボンバルディアが共同開発した車両で、イタリアではすでにトレニタリア社によって15年から運行実績があり、今回はスペインで2022年中に運行が予定されているプロジェクトです。

 日立が日本の車両メーカーとして初めて鉄道発祥の地、英国の車両製造を担う契約に漕ぎ着けたのは2005年、多数の日本人スタッフを英国に送り込むことになった2009年、その人材育成に関わった私としては目が話せない事業の1つです。

 日立がグローバル企業に飛躍する一大プロジェクトは、巨大企業内で最もドメスティックだった鉄道車両部門で始められました。2012年には当時、英国鉄道史上最大規模となる都市間高速鉄道計画にも参画し、2019年にはファースト・トレニタリア社と英国・西海岸本線向け都市間高速鉄道車両135両の供給と保守に関する契約を締結しました。

 鉄道業界は車両供給や保守だけででなく、トレインマネジメントという運営に至るまでの鉄道事業の総合力が今問われています。日本の新幹線の世界的売り込みでも、運営や運営に関わるナショナルスタッフの育成などもセットで売り込む必要に迫られています。

 同時に鉄道車両関連事業で世界最大手の中国中車に対抗すべく、世界的再編が進んでいます。最近では世界第2位の独シーメンスと3位の仏重電大手アルストムの合併プロジェクトが、欧州委員会によって「競争環境を損なう」として拒否され、フランス側は「愚かな判断」と強く反発した経緯があります。

 そして欧州委員会は7月31日、アルストムによるカナダの同業ボンバルディアの鉄道事業買収を条件付きで承認すると発表しました。そのボンバルディアは日立と車両の共同開発を行っており、関係は複雑化が予想され、欧州市場で欧州勢の鉄道車両会社の混戦に巻き込まれることが予想されます。

 海外事業拡大に強い意欲をもつ中国中車に収益で引き離されている欧州勢は、アルストムによるボンバルディアの買収で対抗することになりました。EUの葛藤は域内に定められた競争環境保証の原則が域内の企業再編の足引かせとなり、グローバル国際競争で不利になっていることです。

 ここにも自由競争を是とする自由主義陣営は、競争原理を無視する国策優先の中国の脅威に晒されています。中国中車はチェコの車両メーカーなど複数の買収を試みており、2019年にはポルトガルでの地下鉄整備でシーメンスなどを押さえて受注を獲得し、欧州に本格参入しています。
 中国政府にとってみれば広域経済圏構想「一帯一路」において、関係国のインフラ事業への投資は自明の理といえます。特に東南アジアやアフリカなど途上国での市場拡大には精力的で、欧州勢や日本勢には脅威となっています。

 この分野でも日本企業は日立が世界7位に入っているだけで、得意なはずの鉄道事業で劣勢というしかありません。今後の確実な成長が見込まれる世界の鉄道ビジネスで、一歩引けたところで何とか生きている日本企業には、さらなる大胆なグローバル戦略が必要です。

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