ソーシャル・ディスタンスが強調されるwithコロナの時代、業務の複雑化でチームワークの重要さが増す中で、これまで論じられてきた人間関係構築理論は、その真価が問われています。特に異文化間の協業が避けられない時代に、リモートワークの限界に直面し、日々葛藤する人は少なくないでしょう。

 仕事で成果を出すには信頼関係構築が重視されますが、同じ国の人同士でも、コロナ疲れでイライラや葛藤が起きています。世界を見回せば、米中対立は世界経済に不安を与え、日本にとっては反日の韓国がストレスです。マスク着用義務化から人種差別への抗議デモまで世界は不安定さを増しています。

 不透明感の高まりは投資家たちを不安に陥れ、貧困層など弱者は飢餓の恐怖を抱え、先進国でも大量解雇が人生プランを狂わしています。そんなwithコロナの時代だからこそ、人間同士の信頼関係構築は重要さを増しています。通常はコミュニケーションや異文化理解で語られるグローバルビジネスの信頼関係構築は、深刻な試練を受けています。
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 テレビ会議などで海外とやりとりし、短期出張を繰り返すことで仕事が前進しない場合、結局、日本から人を送り込んで数年間、現場にはりつくことで問題解決するパターンは多いわけですが、今は移動すらできません。テレワークのみでは、とても人間関係は構築できないという現実の壁が立ちはだかっています。

 特にアジアでは飲み食いすることで人間関係は構築するという考えが根強く、相手の人柄を飲食でチェックしながら慎重にビジネスを進めるのが常識化しています。それができない今の環境ではビジネスリスクは高まり、前に進めない状況に直面している企業は少なくありません。

 同時にナショナルスタッフを育て、信頼関係を構築したいと思っても、現地で彼らにはりついて指導できない現実があり、ビジネスが足踏み状態に陥っています。そこで人材育成、信頼関係構築の方法論の再考をが求められています。

 日本人は、真面目に働くことに違和感がないために、目の前にある業務を黙々とこなすのは当然と考えらがちです。ところがそもそもその前提がない人が少なくない海外の人たちと働くには、そんな勤労意識から教育するのは容易なことではありません。

 世界中、どんな国民でも働く前提はお金のためです。上司や組織への忠誠心や会社が追求する崇高なビジョンの実現は、報酬の前提がなければ話は始まりません。結果的としてナショナルスタッフは報酬に影響を与える自分の評価を気にし、解雇を恐れ、昇進に期待を寄せるのも当然です。

 もう一つは、ストレスのない居心地のいい職場環境の提供です。アジアであれば家族的雰囲気、人格者で面倒見のいい上司は大前提です。実は身体距離を保つことを強いられる今の環境でも、テレワークやテレビ会議、メールのやりとりだけでも相手にその会社の文化はある程度伝わるものです。

 私は一度も相手と遭うことがなく、メールとテレワークだけで数億円規模のグローバルビジネスを英国人、フランス人、ドイツ人と動かした経験があります。無論、日頃からグローバルビジネスに携わっている経験もありますが、メールでもテレワークでも「確認」と「共感」を怠らないことが重要です。

 逆にいえばハイコンテクスト文化に生きる人間が陥りがちな暗黙の了解、以心伝心は徹底して排除することです。異文化間で暗黙の了解レベルに人間関係が至ることは私の経験では稀です。しつこいばかりに相手のいうことを確認し、同時に「私も同じ経験をしたことがあるので、よく分かる」などの共感を繰り返すことは重要です。

 多文化環境で人を育てる場合、まず、どんな人材を育てたいかのイメージ化が重要です。その時に完全に日本人にしようなどと思わないことです。前提として人を尊重し大切に思う心が重要で、あくまでリーダーは成長を助ける役に徹するべきです。

 大抵の場合、人は保身のために殻を持っています。その殻を無理やり壊そうとすると、さらに殻は硬直化します。その殻を脱いでも大丈夫と思わせる工夫が必要です。それは人への思いやりであり、リーダーの利他的姿勢です。しかし、それだけでは人材育成は目標地点に至ることはありません。

 丁寧な説明が必要なだけでなく、妥協できない点に関しては厳しさも必要です。その硬軟の使い分けが上手にできた人が大抵は成功者になっています。ところが最初の殻を脱がすプロセスが遠隔で可能かという話です。当然、飲み食いはできません。そこをコミュニケーション力で補うしかありません。

 聞き上手になることも非常に重要ですが、理性でコントロールすべき点については、明確な方針、評価、賞罰が必要です。妥協を強いられることが多いのが異文化環境ですが、実はメールひとつとっても、人の人格や心は感じられるものです。文化を超えるロジカルな思考やコミュニケーションスキルを日々磨くことが重要です。

 当り前のようで身についていないことの多い信頼関係構築や人材育成のノウハウですが、テレワークでは難しいと簡単に結論づけるのは早計だと思います。

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