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 中国が米国内の在外公館を通じスパイ活動など悪意ある行動に従事しているとして、今月24日に米テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じ、中国は対抗措置として四川省成都市にある米総領事館を閉鎖しました。異例の総領事館閉鎖合戦で米中対立は新たなステージに入ったと専門家の間で指摘されています。

 米中関係は貿易戦争という第1ステージに始まり、米国が中国政府による知的財産盗用や南シナ海、東シナ海など領土領海拡張による覇権膨張主義を強めているのに対して、本格的封じ込めに動いた第2ステージに進み、今回、ポンペオ米国務長官の中国共産党政権を完全に敵視する第3ステージの主権問題に踏み込んだ形です。

 主権、すなわち統治体制が自由と民主主義によるものなのか、それとも中国共産党によるポンペオ長官がいう全体主義なのかという対立は東西冷戦を彷彿とさせるものです。フォーリン・ポリシー誌シニアエディターのジェームズ・パーマー氏はニューズウィーク誌に寄稿し、トランプ政権の中国理解は軽薄と批判しています。

 日米のリベラルな外交専門たちは、基本的に相手国の統治システムを変えるような行為に否定的です。北朝鮮の金正恩労働党委員長に対しても、米国は建前上、体制保証を強調してきました。中国に対しても裏で支援しながら中国共産党政府とうまく付き合うことで互いの国が利益を分け合ってきたとの認識です。

 だから、トランプ政権が中国と貿易戦争を始めた時も外交や経済の専門家、リベラル系のニューヨークタイムズなどのメディアは非常に批判的でした。しかし、北朝鮮の現体制を放置した結果は、核武装による脅威に発展し、中国とWIN WINの関係を継続した結果、アメリカに代わって社会主義で世界を支配する覇権国になってしまったのも事実です。

「強い者、勝者が自分の都合のいいようにルールを決め、支配する」との考えは、中国共産党のみならず一般中国市民にもDNAとして刻まれています。それは彼らの歴史を見れば一目瞭然です。軍属、馬賊によって町が荒らされる歴史を繰り返してきた中国では、力のある者が国を治め、安定と安全をもたすことへの期待感が常にあります。

 それが今は中国共産党で、14億人を統治し、内乱を起こさず、安心して暮らせる国になっていれば、統治体制を批判する者はないことは多くの中国専門家が説明している通りです。それは外から見れば独裁体制ですが、中国共産党は異常なまでに国民の政府評価を心配しながら政権運営しているというのが現実です。

 歴代皇帝は中国全土の料理を毎日食べ、国民全てに気を使っていることを示してきました。中国の皇帝は独裁者であると共に常に反乱に怯え、反乱を助長させる者を処刑し、残酷な支配を続けただけでなく、民の支持を得るために努力し続ける側面もあったことが歴史に記録されています。

 習近平政権は中央政府の求心力強化に余念がなく、その手段として腐敗厳罰で共産党幹部を震え上がらせ、民主活動家を弾圧しています。対外的には強国中国を国の内外に示し、中国の栄光を国民にアピールていますが、逆に言えば国民の支持を得るために必死だともいえます。中国に欠けているのは宗教性で共有できる価値観は民族主義くらいです。

 東西冷戦が終結して以来、イデオロギー対立は世界に異常な緊張を強いたということで、経済優先の多文化共存主義の考えが浮上し、グローバル化が進みました。しかし、実は冷戦終結は民主主義国家の完全勝利ではなく、全体主義や共産主義が世界から消えたわけでもありませんでした。

 中国のような社会主義国家は、資本主義で稼ぎながら統治体制は社会主義です。多文化共存主義の原則は、覇権膨張主義の否定です。圧倒的強者による世界支配は必要なく、国連を中心に国の大小に関わらず世界を安定させていくとの考えですが、誰もがその考えに合意しているわけではありません。

 多文化共存主義を利用しながら、国家的野心を燃やす国もあります。表向き自由貿易、公正なビジネスの場の確保を尊重するふりをしながら、民主主義の弱点をついて相手を弱体化させ、全体主義の意思決定の速さで、着実に覇権を伸ばしていく国もあります。

 グローバル化が足踏みした最大の理由は、莫大な利益を出す1部の勝者に対して、多くの敗者を出してしまったことです。つまり、多文化共依存主義の最大の敵である覇権主義に力を与えてしまったことです。大蛇がネズミを飲み込むようなグローバル化は誰も望まず、結果、矛盾に満ちた理想主義でした。

 今、アメリカが焦っているのは、グローバル化で見逃されて大蛇と化した中国が、世界を飲み込もうとしていることです。米国が統治システムというイデオロギー問題にまで踏み込んだ背景には、中国の世界支配を今止めなければ手遅れになるという焦りがあるからです。

 すでに手遅れだという悲観的見方もありますが、英仏やオーストラリアもアメリカに同調しています。外交のプロがいう中国との深刻な対立や対話のチャンネルを断ち切るのは得策ではないという意見もありますが、これまで通りのやり方で、中国の膨張を許すのは正しいとも思えません。

 事態を変えるのが政治家であり、前例のないことをやらないことで事態を放置し、時に悪化させるのが官僚的欺瞞です。アメリカが認識しているように長い目で見れば事態の放置は世界に不利益をもたらすのは確実です。日本が米中対立を蚊帳の外の出来事と受け止めるのは大きな間違いでしょう。

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