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 今月17日から5日間も続いた欧州連合(EU)首脳会議は、総額7,500億ユーロのコロナ復興基金の創設で合意し閉幕した。協議難航の原因は、財政規律に厳しいオランダ、デンマーク、スウェーデン、オーストリアが、南欧諸国に多額の返済不要の補助金を無条件で出すことは受け入れなかったからです。

 それでも合意を取り付け、7,500ユーロを市場から調達するため、27ヶ国が揃って30年の借り入れを行うEU史上初の試みで合意したことは「歴史的出来事)(マクロン仏大統領)。向う30年間はEUは存続せざるを得ないという決意をEU内外にに示したわけです。

 ギリシャの財政危機でも露呈したのが、南欧の遅々として進まない構造改革。ばら蒔き政治で膨れ上がった公共支出や公務員の多さ、富裕層の脱税の常態化に対して、オランダなどの倹約国は「だらしない国」とレッテル貼りしています。逆にイタリアやスペインは倹約国を「ケチな国」と非難しました。

 実はドイツも財政規律を重んじる緊縮財政推進の倹約国。しかし、7月からEU議長国なので倹約国に与すれば、纏まる話も纏まらなくなるので、今回の協議では中立でした。フランスはどちらかといえば構造改革の進まない南欧グループですが、イタリア、スペインほど酷くないといえます。

 では、経済優等生と自負する倹約国の根拠はといえば、彼らはEU分担金の額より、受ける補助金が少ないということです。その分担金は「だらしない国」や旧中・東欧の貧しい国に回されている。

 倹約国は、今回の首脳会議で民主主義が成熟していない強権政治が目立つハンガリーやポーランドを念頭に「法の支配」が怪しい国に補助金を受け取る資格はないと言い出し、東欧加盟国から顰蹙(ひんしゅく)を買いました。

 では、EU貢献国と主張する倹約国の実態はどうなのかといえば、公共支出を抑え、政府をスリム化するという構造改革の試みは成功しており、公務員の数も南欧に比べればかなり少なく、生産性を上げることで柔軟性を持った雇用が行われ、ライフワークバランスでも成功しています。

 オランダでは女性管理職が多い一方、正規雇用と派遣、パートなどのカテゴリーを廃止し、短時間労働でも管理職として働くことを可能にしています。もともと北欧は高負担高福祉なので、負担なしに政府に手当を要求する習慣はありません。しかし、小国だからこそ出来ている側面もあります。

 それに、たとえばオランダは分担金ではEUに貢献しているといいますが、オランダのビジネスは75%がEUに依存しています。つまり、EUメンバーとして大きな経済的恩恵を受けているのも事実。ギリシャ危機ではギリシャはユーロ圏全体の数%でしたが、イタリアは15%で、イタリアが経済破綻は、ユーロの存続を危機に晒します。

 つまり、この危機的状況でイタリア救済をしなければ、ユーロ圏は破綻し、倹約国も深刻なダメージを受けるわけです。補助金を巡って「だらしない国」と名指しされ、改革しないなら助けないという主張も理不尽さがあります。

 確かにオランダのルッテ首相がいうように「貴重な補助金を適切に配るためのチェック機能が必要」なのは確かですが、その国の体制そのものに手を突っ込むような態度は逆効果です。原則やルールよりも死に体のEUを危機から救う緊急事態だと結束を呼び掛けるマクロン仏大統領の主張の方が説得力があるといえます。

 それに残念なことに倹約国首脳の後ろには、自国でEU懐疑派のポピュリズムが台頭し、彼らは圧力を受けています。ポーズだけでも南欧が無条件に多額の返済不要な補助金を受け取ることに反対しなければ、国に帰ってからが大変です。

 コロナ後のネックストEUを占う今回の首脳会議は、EUの求心力の低下をまざまざと見せつけた結果となり、それでも理性を働かせて決着したわけですが、コロナ禍の終わりの見えない闘いで果たしてEUは再起できるのか、不確実性が増しているようにも見えます。

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