Japan EUのコピー

 予想されたとはいえ、英政府は14日、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)を次世代通信規格「5G」通信網から排除すると発表。折しも欧州連合(EU)の13日の外相理事会で、中国政府が香港国家安全維持法を施行したことを受け、EUは協調して対抗策を検討する方針を固めた翌日でした。

 ファーウェイを巡っては、フランスの国家情報システムセキュリティー庁(ANSSI)のプパール長官が、同国のファーウェイ採用は最小限に止める方向であることを表明。ファーウェイ排除の急先鋒のアメリカは、ポンペオ米国務長官が13日、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張し軍事基地を建設し、脅迫的行動を繰り返す中国に対して「完全な違法行為」と断じました。

 アメリカと欧州の対中外交はトーンがかなり違いますが、香港の国家安全維持法は香港の旧宗主国
、英国だけでなく、中国政府のよる香港市民の自由と人権抑圧に対して、EUは目をつむるようなことはしない構えです。

 ドイツのシュタインマイヤー大統領は今月12日の独TV放送局ZDFとのインタビューで「香港国家安全維持法は国際法の重大な違反で撤回すべきだ」と中国政府を厳しく非難。同大統領は、ドイツの対中姿勢が弱腰だと苦言を呈し「怒りの限度を超えている」と嫌悪感を露わにしました。

 ボレルEU外交安全保障上級代表(外相に相当)は、外相理事会終了後の記者会見で、香港市民へのビザ発効拡充や特定技術の香港への輸出規制、さらに香港との犯罪人引き渡し条約の見直しやEU域内への香港の学生の留学奨学金の拡充も検討するとしています。

 これで思い出すのは1980年代後半のジャパンバッシング。今考えるとアメリカのジャパンバッシングを取材するため、ミシガン州を初め、5つの州を取材した時のアメリカのバッシングの根拠は、今の中国バッシングとは、まったく異なる性質のものでした。

 その後、移り住んだフランスでは、ミッテラン政権のもとクレッソン首相(当時)が日本への対抗姿勢を露わにし、日本に勝つために仏西部レンヌ市のレンヌ国立大学内に日仏経営センター大学院を設立し、実は私はその設立の顧問で講師をしていました。

 しかし、その中身は日本の成功に学び、日本に対抗できる実力を習得することが目的で、政治的意図はありませんでした。折しも東西冷戦が終結し、欧州諸国は日本と経済関係を強化するだけでなく、崩壊したソ連や共産党独裁政権を続ける中国に対して日本政府と協調していきたいという空気でした。

 ちょうど、そんな時期に韓国のハイテク製品が欧州市場を席巻し始めていました。台頭する日本製品がバッシングにあう中、アメリカでも欧州では韓国製品には追い風が吹き、何よりも韓国企業はグローバル戦略に舵を切っていました。

 ただ、当時、価格が高騰した日本製品に比べ、アグレッシブな戦略で欧州市場に進出した韓国企業は、次々に日本企業の市場を奪い、今日に至っています。某日系大手電機メーカーは90年代初めにフランスに生産拠点を作り、韓国企業に市場を奪われたことで撤退を余儀なくされ、その最終処理に関わったこともありました。

 今回の中国バッシングは、コロナ後の世界の方向を決定づけるものです。なぜなら、批判を浴びているアメリカの高度技術の中国による盗用や不公平な中国国内の外国企業の扱い、中国の一帯一路の広域経済圏構想、香港の一国二制度を終わらせる国家安全法の施行という中国の方針が方向転換することは考えにくいからです。

 ところが欧州はアメリカほどの経済力はなく、台所事情はコロナ禍で益々厳しさを増している中で、全面的な中国との通商関係を断ち切るようなことはできません。同時に香港問題で火がついた欧州が中国の暴挙を傍観することもできません。

 そこでチャンスが到来しているのが日本企業ではないかという話です。本来、政治経済で国際的信用度の高い日本が、日EU経済連携協定(EPA)をベースに関係を一気に深める時が来ているように見えます。ブレグジット後の日系企業の欧州拠点の受け皿となるEUとの連携は重要な局面を迎えています。

 世界的な中国バッシングを期に日本企業はアグレッシブなグローバル戦略を練り直すチャンスだと考えるべきでしょう。それも次世代のテクノロジーで勝負するための大胆な発想と思い切った新戦略、そこに関わるグローバル人材の育成は不可欠です。

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