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 第5世代(5G)移動通信機器でグローバル市場で攻勢を強める中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)に逆風が吹いています。ファーウェイ排除の急先鋒のアメリカとは一線を画してきた英仏が、このところ安全保障上の観点からファーウェイ不採用の方針転換に動いています。

 フランスの国家情報システムセキュリティー庁(ANSSI)のプパール長官は今月6日付の仏経済紙レ・ゼコーとのインタビューに答え、同国としてファーウェイ採用は最小限に止める方向だとし「当然のことながら」ファーウェイの存在は薄れるとの認識を示しました。

 ただし、同長官は、ファーウェイ製の5G機器を使用する携帯電話事業者には期間限定で一時的使用を認める方針を示し、完全排除ではないと含みを持たせました。フランスで進められているファーウェイ工場誘致計画を今後どうなるのでしょうか。

 一方、米ブルームバーグなどの報道によれば国民議会のサイバーセキュリティー委員会のボトレル議員(与党・共和国前進)も、フランスの通信ネットワークの安全性を鑑み、ファーウェイ製品は段階的に排除する方針だと語っているようです。

 フランスには携帯電話事業者大手、Orange、SFR、Bouygues Telecom、Free mobileの4社が存在し、日本の通信大手NTTドコモとも提携関係にあるBouygues TelecomとSFRは4G通信網の一部で、すでにファーウェイ製品を使用しています。

 両社が使用するファーウェイ製品の仏国内無線通信の全インフラに占める比率は現在、約22%。5Gの導入プロジェクトでも同社製品の導入が計画されていますが、フランス政府は使用比率を10%代に下げたい意向です。

 一方、英BBC放送が今月6日報じたところによると、英政府はファーウェイを国内の通信網から排除することを検討していると報じています。英政府は1月にトランプ米政権の反対を押し切り、5G通信網へのファーウェイの参入を容認する方針を固めていました。

 ファーウェイは先月、ケンブリッジ近郊に新たな研究・製造拠点を建設すると発表し、米国が制裁強化などで包囲網を敷く中、5G通信網で英国を突破口として攻勢を強める姿勢を鮮明にしていました。

 ダウデン英デジタル相は、英情報機関傘下の国家サイバーセキュリティ・センター(NCSC)からファーウェイ製品の安全性を保証できないとの報告書を受け取ったことを明らかにし「方針転換が適切な場合には、その決定を議会で説明する」と述べました。

 デジタル経済先進国を追求する英国では安全性確保は必須条件です。この英政府の方針転換とも取れる姿勢に対して、中国の劉暁明・駐英大使は「中国を敵と見なすなら、それがもたらす結果を受け入れなければならない」と脅しとも取れる警告を発し、強く反発しました。

 英国の方針転換の背景には、ブレグジット後の米国との関係強化を念頭に米国との関係重視と、中国政府が導入した香港の一国二制度を完全に終わらせる国家安全維持法導入に対して、香港の旧宗主国としての強く反発していることも影響しているとも思われます。
 
 英国は移住を希望する香港市民300万人にビザを発給する方針を表明しており、中国の怒りを買っています。国家安全維持法導入は東西冷戦終結後、最も世界に緊張を敷いている問題です。中国の自由世界との玄関口閉鎖は米国だけでなく、欧州やアジア、オセアニア地域も敵に回しています。

 中国共産党が国をまとめていくために、国際的孤立を覚悟してまで香港の国家安全維持法を導入したとすれば、次の一手も考えているはずです。それとも南シナ海のように既成事実を積み上げていけば、いずれ国際的批判は収まると読んでいるのでしょうか。

 それとも経済大国の過信で、中国への巨額債務を抱える途上国を味方につけ、金で批判を押さえ込むことができると本気で考えているのでしょうか。デジタル化の先頭に位置する5G テクノロジーを政治の道具にするのはナンセンスという意見もある一方、コロナ禍の経験から各国が中国依存を抑えたいという流れも無視できません。

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