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 欧米では危機からの再起力を持つ企業をレジリエンス(resilience)企業と呼んでいます。心理学ではレジリエンスは自分が不利な状況に見舞われた際、その状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義されています。企業も今、コロナ危機をチャンスに変える能力が問われています。

 リスクマネジメントでも、リスクの概念にはネガティブな側面だけでなく、ポジティブな側面の2面性があるといわれています。たとえば阪神淡路大震災で神戸の町が破壊されました。実際にはそれほどでもなかったのですが、これを機会に大幅な町づくりを行うチャンスと捉える意見もありました。

 たとえば今回のコロナ禍でテレワークを強いられる中、大企業の中には躊躇していた企業内のデジタル化を一挙に加速させた例が多く報告されています。

 マッキンゼーとオックスフォードエコノミクス社の共同分析などでリーマンショックどころか第二次世界大戦後最大の危機と予想されるコロナショックに、どう対処するかは今、最大の世界のビジネス界に関心事です。

 コロナ禍での倒産件数は予想できない規模といわれる一方、危機が新たな機会を生み、成長をもたらすとの考えも存在します。ハーバードビジネスレビュー(HBR)は、レジリエント企業は共通項として以下の4つのアクションを迅速かつ的確に実行していたと指摘しています。

(1)危機の早い段階から生産性向上に取り組み、売上原価を中心に機動的なコスト削減を実施
(2)危機の最中には一時的に設備投資等の投資を抑制する一方、回復期にはいち早く投資を復活
(3)(チャネル開拓を含む)新規事業構築や新テクノロジーへの成長投資を加速
(4)危機の最中には戦略的に事業や資産の売却を行い、回復期には買収を通じて事業ポートフォリオを再構築

 この4つの中でコロナ禍の回復期に入った今、特に今後重要となるのは、(3)と(4)の成長投資の加速と事業ポートフォリオの見直しだとHBRは指摘しています。また、「Fortune 500に名を連ねる企業の多くが不況期に生まれたといわれている」とし、今回のコロナ危機で生じた不便や不安が豊富な新たなビジネスのアイデアを生むともいっています。

 さらに今後、コロナショックで倒産や企業の統廃合で人材流出が起き、優秀な人材の争奪戦が始まると予想されています。コロナ禍で露呈したサプライチェーンの寸断で、従来の資材調達、製造拠点の大幅な見直しで過去の負のしがらみを断ち切ることも可能です。

 無論、コロナ禍がもたらした方向性はデジタル化を加速させることです。経済構造やビジネス・企業経営における事業構造・業務プロセスを完全にリニューアルすることです。それがニューノーマル、ネックストノーマルに向かう必須な状況です。

 同時にリーダーシップの見直しは必須です。強いリーダーシップなしにレジリエンスは不可能だからです。危機をチャンスに変えるのはリーダーです。

 このことは、グローバル化の中で掛け声だけで遅々として進まなかった多人種、多文化のダイバーシティ・マネジメントに本腰を入れる機会にもなると私は見ています。コロナ禍でグローバル化を萎縮させるのではなく、ネックストノーマルに多文化協業のメリットを強調したいところです。

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