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 フランス大統領府は先月の統一地方選挙でマクロン氏の与党・共和国前進(REM)が大敗したのを受け、3日にフィリップ首相率いる内閣が総辞職し、マクロン大統領が後任に中道右派のジャン・カステックス氏(55)を指名したことを明らかにしました。

 失った求心力を取り戻し、2022年の大統領選へ向け、内閣の刷新し巻き返しを図る構えです。カステックス新首相は2010年から中道右派のサルコジ政権で内閣補佐官を務めた人物。任期2年となったマクロン氏にとって、最大の課題はコロナ禍で痛んだ経済の回復で、国民の関心の高い失業問題を悪化させず、経済不安を取り除くことです。

 6月28日の統一地方選決選投票で首都パリ、リヨン、ボルドーなど主要大都市で軒並み敗北したREMは、2017年の国民議会選挙で圧勝した時の勢いは見る影もありません。今回の地方選で都市部で勝利したのは、フィリップ前首相を筆頭としたREMリストを掲げた北部ルアーブルだけでした。

 最近、マクロン大統領との確執が噂されていたフィリップ氏は、もともとは中道派政党・共和党出身で、この3年、困難な労働法改正、テロ対策、反政府運動「黄色いベスト」、年金改革、さらには新型コロナへの対応で前面に立ち采配を振るい、マクロン氏より支持率が安定していました。

 仏経済紙、レゼコーはフィリップ氏の安定した国民の信頼度がマクロン氏を不快にさせていたのではとの憶測も指摘されています。フィリップ氏自身は地方選に立候補しても市長の座は現職に任せ、首相職に専念すると表明していたので、自分の首が飛ぶとは思っていなかったと思われます。

 支持率が振るわないマクロン氏は、残る2年がレームダック化することだけは避けたいところです。得意の経済分野でコロナ禍の逆境で実績を残したいマクロン氏は、金持ち優遇政権と揶揄されても中道左派ではなく、中道右派のカステックス氏を選び、起死回生を図るつもりです。

 一方で、コロナ禍で元気を増す環境政党に配慮し、環境政策で本気度を疑われているマクロン氏はグリーン経済への転換を実現するための基金を創設し、向こう2年間にわたって150億ユーロを拠出する方針を6月29日に発表しています。電気自動車(EV)化を加速させるため、メーカーに資金を拠出するのもその一環です。

 最近、フランスではハイブリットカーの売れ行きが好調ですが、フランス人のメンタリティは新しいテクノロジーを受け入れるのに日本より10年以上遅いスピードです。ただ、企業活動の足を引っ張らないように環境政策を進めるのは至難の技です。

 最近、政府は国内の航空移動を排除し、鉄道移動に切り替える政策を打ち出したのも温室効果ガス削減のためです。しかし、コロナ禍のダメージで大型人員削減が噂されるエールフランスにとっては命取りになりかねない政策です。法律上、政府が公的資金を注ぎ込む企業に対して政府が人員整理しないよう命じることはできないわけですから、今後どうなるのか注目です。

 一方、7月1日から議長国になったドイツのメルケル首相とは英国が欧州連合(EU)から抜けた後のEUで中心的役割を担う仏独として、メルケル氏との連携が不可欠です。両者の関係はいいのですが、コロナ禍後の経済再生で実績を残すためには、マクロン氏は足下の政権基盤の強化は不可欠です。

 事実、現実的にはEUはドイツ一強になりつつある状況で、マクロン氏はEUで存在感を示すのに今後、苦慮することが予想されます。仏メディアマクロン政権は今後、右派・共和党との連携を強める可能性が指摘され、黄色いベスト運動の再燃も懸念されます。

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