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         LE MUSEE DE L'ILLUSION A PARIS

 5月11日から新型コロナウイルスの封鎖措置を段階的に緩和したフランスですが、夏のヴァカンス時期を控え、深刻なダメージを受ける観光業への政府の支援も加速しています。未だ人が多く集るスポーツ・イベントなどは再開の目途が立っていませんが、小規模美術館は再開が始まっています。

 その一つがパリのポンピドゥ・センター近くにあるイリュージョンミュージアムで、5月22日から人数制限や1時間ごとの予約制で再開しています。同科学芸術ミュージアムは、昨年12月にオープンし、まもなくコロナ禍で閉館を余儀なくされていました。開館当初は子供から大人まで楽しめるということで盛況でした。

 目や脳の錯覚を積極的に利用した体験型のインタラクティブなイリュージョンミュージアムは、2015年にクロアチアのザグレブに登場し、観光の目玉になったこともあり、現在はニューヨーク、トロント、上海、ドバイ、大阪など世界17カ国にあり、昨年暮れにパリに上陸しました。

 フランスは封鎖の緩和を開始するとともに、衛生緊急事態宣言は7月10日まで延長しました。感染拡大の第2波を恐れてのことですが、法的拘束力を持つ緩和措置を進めていくためには、逆に緊急事態宣言で与えられる政府の権限は必要だからです。

 美術館、博物館に対しても自治体の長の判断で規制をかけて開館することになっており、大規模美術館の再開は6月から7月以降ですが、小規模美術館から自治体が許可する方向です。とはいっても入館者の人数制限、予約制、鑑賞時間の制限、マスク着用、職員の誘導に従うことなど、厳しい規則が定められています。

 パリ16区の閑静な高級住宅街に佇むマルモッタン美術館は、6月2日に再オープン予定です。本来は今年2月末からの開催だった「セザンヌと巨匠たち、イタリアの夢」」展の再開です。同展は近代絵画の父、セザンヌの作品をイタリア美術と関連付けて紹介するユニークな企画展で2月にスタートし、中断されていました。

 16世紀から19世紀にかけて主にイタリアで活動した画家たちの作品と、イタリアに生涯行ったことないセザンヌの風景画や静物画を並べて展示し、その関連性を探っています。約60点の絵画がパリのルーヴル美術館やワシントン・ナショナル・ギャラリー、日本の箱根ポーラ美術館など世界各地の美術館やコレクターから特別に貸し出されています。

 ティントレットやエル・グレコ、プッサン、モランディといった各時代の優れた画家たちとセザンヌの思いも寄らぬ比較は近代西洋美術史を知る上でも興味深いものがあります。特にセザンヌの中にイタリア絵画の影響が見て取れるのは新しい発見です。

 大規模美術館の再オープンスケジュールは自治体の長と館長、専門家の判断で決まるため未発表な場合が多いのですが、いずれにしても非常に来館者が少ない中、予約制なので長蛇の列に並ぶ必要もなく、作品をじっくり鑑賞できるメリットもあります。ただ、EU域外からのフランス入国が可能にならない限り、外国人観光客は来館できません。

 政府は、芸術文化活動を経済活動、教育と同程度に重視しており、コロナ禍後の新しい生活再建には文化的生活が不可欠との考えです。今月に入り、マクロン政権は美術館や公共アート・センター、劇場、アーティストなどを支援するための緊急基金が創設し、フリーランスや短期契約労働者の失業手当受給条件緩和も発表しました。

 無論、観光大国フランスにとって、芸術文化活動は経済や雇用に大きな影響を与えることは否定できません。しかし、それ以上に今はコロナショックから立ち直るための精神的支えになるという認識も無視できません。芸術の力を再認識する機会にもなるということです。

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