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 中国や韓国は新型コロナウイルスへの対応で「わが国は世界の手本となった」と豪語しています。両国の国民性の一つが虚勢を張ることにあることを考えると頷ける態度ですが、実態とはかけ離れています。

 今回の疫病被害で表に出ている数字を読み解くのは簡単ではありません。今後、感染症の専門家たちが研究を重ねていくことでしょうが、たとえば、感染死者数ゼロのベトナムの場合、年齢の人口構成も無視できません。少子高齢化が進む先進国と異なり、ベトナム戦争である世代が大量に死亡したこともあり、若い世代が圧倒的に多いピラミッド型です。

 高齢者の死者が多い今回の新型ウイルスを考えれば、そもそも高齢者が少ない国は死亡する確立は低いでしょう。ところが同じ年齢別人口構成がピラミッドのトルコは中東地域では死者数が多い方です。ただ、数字の上ではトルコはかなり感染を押さえ込んでいます。

 リスクマネジメントいう意味では、リーダーに権限を集中させるほど有利という観点からすれば、独裁体制の中国は有利という見方もできます。意思決定が早く、強権で国民の行動を押さえ込めるのも有利です。民主主義の国でも有事を想定した法整備のある国は、かなり強い権限が政府に付与され、国民に対して行動制限を守らない場合、罰則を掛けたりしています。

 しかし、有事が想定されおらず、危機対応の法整備がまったくといって存在しない日本で、すべての規制は要請レベルで罰則もないのに感染死者数が抑えられているのには、別の理由を探す必要があります。その一つが水際対策が容易な島国という条件です。少なくとも空路と水路を遮断すれば感染した人間が外から入ってくることはありません。

 ヨーロッパの場合は、たとえばフランスは地続きでスペイン、ベルギー、ルクセンブルク、ドイツ、スイス、イタリア、モナコと国境を接しています。人の流れを止めるのは容易ではありません。国境を跨いで仕事に出かける人も相当な数います。韓国は北朝鮮で大陸から分断されているので島国のようなものです。

 日本人の衛生観念の高さ、国民が国の単なる「要請」に従順に従い、真面目に守る性格も感染死者数が少ない要因の一つでしょう。

 感染対策で優等生といわれたシンガポールでクラスターが発生したのは劣悪な環境で暮らす外国人労働者の間でした。欧米諸国では人種的マイノリティーがロックダウン後でも感染リスクに晒されながら医療活動、ごみ収集活動、トラックの運転に従事し、感染が拡がっています。

 貧富の差が大きく、スラム化した地域で被害が拡大する現象も見られます。ブラジルのスラムでも死者が急増しています。日本でも、アジアからの技能実習生が路頭に迷っている現状はありますが、彼らがクラスターの大きな原因になっているという報告はありません。

 つまり、社会構造も感染に与える影響として考慮すべきでしょう。とにかく弱者から死んでいくわけですから、高齢者を含め社会的弱者を多く抱える国では当然、死者は増えることになります。英国の高齢者施設のクラスターも同じ問題です。

 フランス人は、人と会うと頬にキスをする習慣があります。インド人は世界1人との距離が短い人たちです。このような習慣も、ソーシャル・ディスタンシングの観点からいえば、リスクを高めます。世界中には身体接触が不可欠な様々な習慣が存在します。これを変えるのは容易なことではありません。

 当然、医療面での体制も大きな影響を与えます。イタリアのように緊縮財政で医療支出を近年、圧縮してきたことから、医療崩壊を起してしまいました。医療体制の脆弱なアフリカは今後、深刻な事態が予想されます。

 経済面でもたとえば失業問題があります。アメリカで失業率が6月に戦後最高になると予想されています。しかし、先進国では雇用制度は様々です。たとえば長年、雇用制度を社会保障制度と深く関連づけてきたフランスでは、解雇に伴う費用が高額で簡単に会社は解雇できないため雇用に慎重です。

 ところが社会保障制度との関係が薄い英国では、解雇は簡単です。アメリカも事情は似ています。そのため、一時的に失業率が上昇しても回復するのも早いのに対して、フランスでは雇用に掛かる社会保障負担税も高額なため、雇用制度の柔軟性がなく回復には非常に時間が掛かります。

 米ウォールストリートジャーナルは、多くのエコノミストが6月の失業率が17%に達すると予想していることを伝えていますが、これは当然、戦後最悪の数字です。しかし、一方で今年秋以降には景気が持ち直し、失業率は下がっていくだろうとも予想しています。雇用環境が非常に柔軟なアメリカでは回復も早いといえますが、大陸欧州ではそうはいきません。

 ロックダウンに伴う支援のスピードも話題になっています。これはアメリカの社会保障番号のようなすべての国民を番号で管理している国は支給も早いわけですが、マイナンバー制度が定着しない日本では支給は大変です。社会保障が手厚いヨーロッパでは当然、すべての国民を対象とした様々な給付を前提としたシステムが出来上がっているので支援は容易です。

 つまり、社会政策の違いも経済対応に大きな違いをもたらします。さらには時の政権と国民の間の信頼関係もリスクマネジメントには影響を与えます。国民が簡単には政府のいうことを聞かない国ではリスクマネジメントは容易ではありません。

 このように非常に多くの要素が複合的に絡み合っているため、その国の感染対策で成績をつけるのは容易ではありません。グローバルな視野が必要です。それなのに「世界の手本となった」という愚かな自慢をするのは、無知でまったく説得力のない話です。

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