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 フランスのマクロン大統領の中道・与党、共和国前進(LREM)の会派から7人の国民議会(下院)議員が19日に離脱し、下院(定数577)での過半数を失いました。丁度、マクロン大統領は就任3年目を終え、任期2年を残し、難しい政権運営を迫られそうです。

 環境派の左派系議員7人の離脱でLREMは下院過半数の289議席を割り込み、288議席となり、与党で協力関係を組む中道与党・民主運動(MoDem、46議席)なしには、議会運営は困難になりました。LREMは、マクロン氏が経済相時代の2016年に創設した「アン・マルシュ!(前進!)」を2017年5月の大統領選勝利で改名したものです。

 既存大政党に失望した有権者が30代の若き金融エリートで国政選挙の経験のないマクロン氏を選んだのを見て、翌月の総選挙では、既存の右派、左派の大政党議員がLREMに鞍替えし、そこに多数の新人議員が加わり、下院はLREMが314議席と単独過半数を占めました。

 この状況を背景に、歴代政党ができなかった労働法の改正、国鉄(SNCF)改革、年金改革を断行し、その強引な政治手法で「皇帝」とあだ名されるようになりました。しかし、政権発足の翌年9月には、国民的人気の高いユロ環境大臣が、マクロン政権は環境問題に本気でないと批判して辞任し、右腕とされた政界の重鎮のコロン内相も強権政治を嫌い政権を去りました。

 その後、反政府運動の黄色いベスト運動が1年以上続き、年金改革でもゼネストなどが連続して起き、対応に追われました。労組への対応に追われる最中、新型コロナウイルスが発生し、とうとう感染死者数が隣国ドイツの3・5倍に達して、感染対策への初動の遅れも批判されています。

 マクロン氏の求心力低下は、新型ウイルスによる経済被害が拡がる中、フランスの政治にとって最も重視される失業率が上昇したことです。政権発足以来、何度も危ない橋を渡ってきたマクロン政権ですが、失業率が過去のどの政権より下がっていることが政権を支えていました。

 ところが今、フランスの失業率は2017年のマクロン大統領就任時と同じレベルまで上がってしまいました。経済危機は世界中で起きていることとはいえ、失業率に敏感なフランス人には不安を煽る数字です。ただでさえ、企業や富裕層優遇と批判されてきた経済政策は陰りが見えてきたようです。

 今回離脱した7人は脱退後、新会派「エコロジー民主連帯」の結成に加わり、以前LREMから離脱した議員らと17人の新会派を結成しました。最近ではコロナ対策と経済運営をめぐって、マクロン氏に忠実なはずのフィリップ首相が大統領と意見対立していることが報じられています。

 マクロン政権では今後、MoDemの党首で元大統領候補だったフランソワ・バイル氏の発言力が増す可能性もあります。「決めるのは私だ」が決めゼリフのマクロン大統領ですが、フランスは民主主義の国なのに、歴代大統領は就任すると独裁的になり、3年過ぎるとレームダック化するのが常です。

 マクロン氏は国民の目を外に向けるため、コロナ対策で成果を出しているドイツのメルケル首相と欧州連合(EU)の経済再建のための特別復興基金を創設する案で合意し、今後はヨーロッパレベルで指導力を発揮し、評価を高めたいところですが、国民の関心は経済だけといえそうです。

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