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 リーマンショック以上の景気後退が予想される中、長い付き合いになりそうな新型コロナウイルスと大規模な経済再建は世界的な課題です。特に景気悪化パターンが過去に経験のないものだけに、マクロ経済の専門家でも景気回復プロセスを見通せないのが現状です。

 背景には各国政府がとったロックダウン(都市封鎖)、自主隔離、外出禁止令、移動の禁止などが過去にない規模で行われ、あらゆる分野で回復不能に見えるダメージを受けていることがあります。しかも世界各国・地域がグローバル化で抜き差しならない関係にある中で起きたため、通常の景気悪化パターンとは大きく異なっています。

 正体不明の新型ウイルスと誰も見通せない景気回復の見通しは、人類を不安の谷底に落としています。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「コロナで空前の経済収縮、成長へ薄明かりも」と題した記事で、直近のアメリカの経済活動のデータをもとに希望の光は見えていると予想しています。

 「仮に4月に比べて5月に回復が進んでいたとしても、公式統計にはほとんど表れないかも可能性もある。だが6月には上向きそうだ。その成長が維持されれば、足元の経済収縮は1930年代以来の大きさであると同時に、2〜3カ月で終わる最短記録となり得る」とWSJは指摘し、大戦後に何度か起きたリセッションは、6カ月から1年半続いたよりは短い可能性もあると書いています。

 無論、今は過去にないほどの経済のグローバル化が進んでいるので、回復の速度も各国・地域でバラバラなので簡単には予想できません。悪化の一途を辿る米中関係が世界的景気後退にどの程度の影響を与えるのかも不透明な部分があります。

 仮に18・19日に行われた世界保健機関(WHO)総会で合意した新型ウイルスのパンデミックへのWHOの対応の検証が進み、中国のミスが明らかになったとしても、それが経済にどの程度影響を与えるかは疑問です。中国共産党は絶対落ち度を認めないでしょうし、外交上の緊張が経済活動に与える影響は見通せません。

 ただ、WHOが改革に一歩踏み出し、欧州も仏独が欧州連合(EU)の予算の枠内で復興基金を創設することで合意し、これまで機能していないと批判されてきた国際協調が動き出す可能性は出てきました。これは新型ウイルス対策と経済再建にとって大きな前進といえるでしょう。

 しかし、大前提は新型ウイルスの脅威は簡単には収まらないということです。たとえ、様々な治療薬が開発されたとしてもウイルスが変異する可能性は大いにあります。感染の第2波、第3波も確実に来るでしょう。その時に経済を萎縮させない対策が急がれています。

 日本は緊急事態宣言の段階的解除を進めていますが、感染死者数が以上に少ないために、そんな暴挙に出ているのでしょうか。例えば、フランスは封鎖措置の段階的緩和を5月11日から開始していますが、逆に衛生緊急事態宣言は7月10日まで延長しました。

 フランスは2015年11月の大規模なテロを受け、非常事態宣言を出して2年間続けた経験があります。その間は警官の権限を強化し、取り締まりに当たりました。だから緊急事態宣言の法的効力の重要性は熟知しています。しかし、日本は緊急事態宣言を支える特措法が法的拘束力が弱いということもありますが、解除してしまえば、政府も自治体も法の行使はできません。

 解除されて困惑する地方自治体も出ています。移動や外出制限、営業自粛はただでさえ要請でしかないのに、解除すれば何も規制する手段はありません。「制限」か「解除」かという単純な2択ではないはずです。初動を間違えた英国ですが、ジョンソン英首相が明らかにした明確な段階的な緩和プランの方が分かりやすく、国民に希望を与えます。

 完全に元の状態に戻せるという幻想は捨て、しっかりとした経済復興対策とウイルス対策を打ち立てることが急務だと思います。

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