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 ドイツを先頭に欧州連合(EU)諸国は、中国との経済関係を深め、同時に外交関係も強固なものにしてきました。その関係が新型コロナウイルス問題で亀裂が生じ、欧州首脳はアメリカのトランプ大統領が主張する中国責任追及論に同調する姿勢を見せています。理由は仏独伊で中国以上の死者を出した原因究明は必須だからです。

 フランスのマクロン大統領は「中国のいうことをそのまま信じるのは馬鹿だ」といい、英国の首相代理だったラーブ外相は「中国とはこれまでの様な付き合いはできない」と語り、ドイツのメルケル首相は「中国が情報開示していれば、感染は抑えられたはず」と発言しました。

 そのドイツの最大部数を誇る日刊紙ビルトは先月、中国へ巨額賠償請求を細かい数字を並べ、紙面で中国政府に突きつけるという異例の行動に出ました。フランスでは駐仏中国大使館のホームページで、フランスの高齢者施設職員が入所者の死を放置していると指摘し、ルドリアン仏外相が駐仏中国大使を呼びつけ、強く抗議しています。

 英秘密情報部MI16元トップのサワーズ氏は「中国は新型ウイルスに関して当初世界に対して情報を隠ぺいした」との認識を示し、欧州では中国の情報隠蔽とそれを指示した独裁権力を持つ中国の習近平国家主席への批判は強まる一方です。それは3月末の先進7ヶ国(G7 )外相会議でも欧州メンバー国は確認済です。

 中国と最も強固な経済関係のドイツでは、ナチスドイツの教訓から国家に権力が集中しすぎることを嫌う傾向が欧州一強いといわれています。そのためドイツ国民は今回の新型ウイルス拡散で中国の習近平国家主席の独裁性が露呈したことに強い嫌悪感を抱いています。

 欧州議会で対中関係担当のドイツ選出のビュティコファー議員は「中国はここ数カ月で欧州を失った」と語り、同時にイタリアに医療支援団を送り、マスク外交を展開していることについて「この危機的状況に中国は自国体制のプロパガンダを強化しようとしている」と不快感を示しました。

 フランスや英国では中国から届いたマスクに大量の不良品が見つかり、中国の対欧州医療品支援への不信感拡がっています。中国にとって欧州との関係強化の好機だったはずが「欧州では中国に対して険悪する雰囲気が拡がっている」(在中国EU商業会議所)と指摘しています。

 一方、EU諸国には対中強硬路線を取れない事情もあります。オーストラリアのように新型ウイルスの外部調査団を武漢に派遣することを主張した途端、反発する中国がオーストラリア産牛肉の輸入を停止する報復措置に出たようなことが起きかねないからです。欧州ビジネス界は対中関係悪化だけは避けたいところです。

 しかし、中国への警戒感を強めるEUは、昨年7000億ユーロ(約81兆円)に上るEU・中国間の貿易を損ねてもEUの中国への経済依存度を下げ、中国の債務の罠のリスクを回避する政策に踏み切っている最中でもあります。

 足下では昨年、債務過多に苦しむイタリアが、中国の広域経済圏構想「一帯一路」への参加を表明し、トリエステ港の湾岸整備で中国マネーに飛びついたことへの警戒感もあります。とはいえ、EUはアメリカほどの経済的体力がなく、対中強硬姿勢にはブレーキもかかっています。

 それと4月中旬に開催されたG7首脳テレビ会議では、アメリカが主張するWHO改革を支持しながらも、欧州のスタンスは異なっています。あくまでWHO改革と中国問題は切り離したいのが欧州だからです。国連を初めとする国際機関を盛り上げていくのがEUの基本姿勢だからです。

 コロナ大恐慌で中国は世界から排除されるのか、それとも医療物資支援などを途上国、新興国に行うプロパガンダ戦略を成功させ、ここ数年実力を蓄えた中国企業が経営の行き詰まった世界中の有料企業を買収してアメリカに勝つのか、すでにその経済戦争は始まっているといえます。

 そんな中、日本はまた、欧米と中国の間でバランスを取るため曖昧な態度を取り続け、中国に手を貸してしまうのでしょうか。欧米が批判する中国の独裁体制、少数民族弾圧には目をつむり、ビジネスに集中すればいいという態度をとれば、東西冷戦時代と違い、今度は確実に日本は欧米からの信頼を失う可能性は高いといえそうです。

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