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 人種のるつぼといわれてきたアメリカで、この数カ月、密かに語られてきたのが、新型コロナウイルスの感染死亡者と人種や少数民族との関係です。人口に占める黒人の割合が約30%の米シカゴでは、新型ウイルスの感染死者数では黒人が70%超だと報告され、ニューヨーク、デトロイトなどアメリカの主要都市でも同様な数字が報告されています。

 このような報道は、多文化社会の国では極力控えられています。なぜなら、人間の心の闇に潜む差別意識を刺激するテーマだからです。白人至上主義者は「やっぱり野蛮な人種は免疫力が弱い」とか、「やつらの衛生観念が低いからだ」、極端な場合は「もっと黒人が死ねばいい」とSNS上で露骨な差別の言葉が飛び交ったりしています。

 疫病は人種や宗教、男女、国、民族、豊かな国、貧しい国、果ては善人か悪人かも一切関係なく襲いかかるものです。それも未だに正体が正確には分かっていないために押さえ込むこともできていません。正体不明のテロリストによる無差別テロと同じです。イタリアでカトリックの神父も多数亡くなりました。

 実は世界は多文化、多宗教の国の方が単一民族(特定の人種が圧倒的多数を占める)の国より多いのが現実です。例えば、フランスではアラブ系フランス人が約600万人に上り人口の1割を占めています。3代さかのぼれば、3割が他国のルーツを持っているといわれる多人種、多文化社会です。

 英国全土では統計上は白人が87.2 を占める英国のイングランドとウェールズの人口に占める黒人およびアジア系、インド系などの少数人種の割合は14%となっています。英集中治療全国監査研究センターの統計によると、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで新型ウイルス感染の重篤患者の35%が、黒人もしくは他の少数人種だったとしています。

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      リシ・スナック英財務相はインド系

 特にイングランドとウェールズの人口全体の3.3%を占める黒人の重篤患者は人口の13.6%を占め、最も多い人口の7.5%を占めるインド系の重篤患者は人口の13.8%です。ところが、これだけでは感染者と人種の関係を紐づけることはできません。まず、感染者がロンドンに集中し、ロンドンの黒人やインド人の割合は4割に達しています。

 これはアメリカも同じでニューヨークなど黒人割合が高い地域での特徴といえますし、職業別の死者数との関連もあります。ニューヨークでは市民生活支える公共部門で黒人が多く働いているため、ロックダウン後も仕事の継続を強いられていることは無視できません。

 ロンドンで感染者から唾をかけられて最近死亡した女性は、ロンドン・ヴィクトリア駅の職員で黒人でした。アメリカや英国、フランスの大都市では感染リスクの高い医療関係従事者にも少数人種が多いのが実情です。英国民保健サービス(NHS)の医師の割合では黒人や少数人種の割合がなんと44%に達しています。

 低所得者層が狭い自宅内で隔離生活が困難なことなど、大都市ならではの様々な経済格差要因も重なっています。今後も人種と感染率の関係は研究が進められるとは思いますが、その不毛さは一目瞭然です。このアプローチがもたらす結果は、憎悪と人種差別を引き起し対立を深めるだけです。

 人間は嫉妬深い生き物なので近年、経済的繁栄を欲しいままにしてきた中国がウイルスの発生源ということで、世界中に散らばる中国人たちがウイルスをまき散らしたとして、ここぞとばかりに中国人差別は世界中で強まっています。ついでに欧米人には見分けがつかない日本人も差別を受けています。

 今でも民族主義、種族主義を国是のように振りかざす中国、韓国は野蛮というしかありません。この考えは他の民族や人種との優劣を争う不毛な対立を生むだけです。自分の国や民族を誇るのは人間の自然な感情ですが、虚勢による優劣の比較、憎悪や差別が始まると話は別です。

 それは心の闇に火を付けるものです。むしろ弱者に被害が拡がっていることに心を痛め、何が自分にできるかを考えるのが正しい姿勢だと思います。

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