Nike style recovering

 誰もがコロナショック後の景気回復がどうなるのか気になるところです。2月、3月には多くのエコノミストや金融関係者が、V字回復を予想し、短期間に新型コロナウイルスのパンデミックを押さえ込めば、危機前の水準を超える支出でGDPが跳ね上がるZ字型はないにしても、回復は早いと予想されていました。

 丁度、イスラム教のラマダンの断食明けのように、人々はせきを切ったように空腹を満たすために元の日常に戻ろうとする現象が起きると信じられていました。ところが、新型コロナウイルスで受けるダメージは予想以上に傷が深く、それも長期化で経済活動が一挙に活発するのは難しいと見られています。

 5月11日に外出制限措置が大幅に緩和されたフランスで、ようやく開店に漕ぎ着けたパリの美容室のオーナーが「フランスは1年以上黄色いベスト運動が続き、その後はストライキが何度も起き、今度は新型ウイルスでもうボロボロ。最近は生きているのが奇跡と思うようになった」と苦笑いしていたのが妙に印象的でした。

 今回の新型ウイルスは人から人への感染力が非常に強く、中国・武漢や韓国、ドイツのように完全に押さえ込んだかに見えたにも関わらず、数カ所で再びクラスターが発生し、長期化は避けられないと誰もが感じるようになりました。

 それも世界的感染の拡がりには時差があるため、経済を支える「人と物の移動」が長期的に制限される可能性が高く、ダメージの大きさは計り知れず、景気回復が容易でないことが確実視されています。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、コロナ禍終息後の景気回復はV字ではなく、スポーツ関連商品を扱うナイキのロゴのような「大幅な落ち込みに続く、痛ましいほど遅々とした回復」のスウィッシュ型になるかもしれないと予想しています。

 具体的には「欧米など西側諸国の国内総生産(GDP)が2019年の水準に戻るのは来年の終わりか、それ以降になるとみられている」と書いています。根拠は「今春に入り統計に表れた景気収縮の深刻さ」「失業者の急増」「世界における何カ月あるいは何年にもわたるソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)が、来年のかなり先まで経済活動を押し下げる気配」だとしています。

 ワクチンができるまではソーシャルディスタンシングは継続する可能性は高く、消費生活やオフィス活動、生産活動など、あらゆる稼働が制限され、例えば「航空会社は旅客数がコロナ前の水準に戻るのは早くとも2022年になる」との見方が強まっています。

 地価の高い日本のように狭い空間にどれだけたくさんの人を詰め込めるかがビジネスの採算に大きな影響を与えるビジネスモデルは致命的です。生産性をあげる要素から「空間」を取り除かないといけない事態です。

 WSJは「消費財メーカーは、買い物客が割安な商品に切り替えて、ぜいたくを控え、ロックダウン(都市封鎖)が解除されても相当長い間生活を切り詰めるとみている」と書いています。結果、人員削減は不可避で高い失業率が長期化する恐れもあるというわけです。

 ロックダウン解除のスピードも当初の予測よりは遅く、ヨーロッパではどの国もサッカーなどの大規模イベントの再開は夏以降になりそうです。それも幾つかの大規模イベントは中止が決定しています。フランスではスタジアム周辺のレストランや商店は客が戻らないと悲鳴を上げています。

 フランスのパリに続く観光名所の島の僧院、モンサンミッシェルは入島解禁されましたが、外国人観光客が訪れるのは夏以降かも知れず、地元のお土産品やレストラン、宿泊施設は不安を抱えたままです。

 「秋から冬にかけてウイルス感染が再び増加しかねないと懸念されていることから、一部アナリストは回復が頓挫する可能性を警告している。スウッシュ型回復は滑らかではなく、凸凹だらけの線になるかもしれない」と予想しています。

 リーマンショックの時も大型解雇が相次ぎ、なんとか政府が下支えしましたが、今回は経済活動の要の貿易も減速状態で、人が移動できないために多くのビジネスが前に進めない状況です。特に移動に関わる航空業界、自動車業界の打撃の大きさは想像できない規模です。

 それに何より消費の落ち込みが致命傷を与えそうで、多くの企業が持ちこたえるためのビジネスモデルの大幅な変更を迫られています。ビジネスの前提条件が共倒れ状態にある中、この危機を正面から受け止め、これまでにないビジネスモデルを考え出し、先手を打つ以外に方法はなさそうです。

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