Paris RER
 このような状態に戻ることが懸念されている(パリRER)

 フランスのフィリップ首相は28日、新型コロナウイルス対策の外出制限を含むロックダウン(都市封鎖)を5月11日から段階的に緩和する具体的プランを議会で明らかに大多数の議員がこれを支持しました。11日以降、これまで義務づけられていた外出目的証明書の携帯が必要なくなることから、実質的には外出制限令は解除となります。

 これまで営業が許可されていた生活必需品を扱う店舗以外の店や市場も、5月11日から営業を再開できることになり、町に人が繰り出すことが予想されます。無論、これを聞いた市民の中には6週間に渡る外出制限のが解除の解放感とともに、感染拡大の第2派を心配する声も多く聞かれます。

 11日からは、店の入店では客にマスク着用と1メートルの間隔の保持を要求する権限が店側に与えられます。公共交通機関の利用が本格化するわけですが、マスク着用が義務づけられます。ただ、密集、密接、密閉が予想されるバーやレストランの再開は認めない方針です。美術館や劇場は閉鎖されたままで、文化・スポーツイベントも再開は夏以降で観光業は依然、苦戦を強いられる状況です。

 市民にとっては、働けることと子供の養育が課題でしたが、保育施設も再開する一方、各施設の受け入れ人数は最大10人に制限。幼稚園、小中学校は教室の人数を12人から15人に制限し、教室内の生徒同士の距離を保ちながら週ごとに段階的に授業を再開する方針です。

 幼稚園は11日に再開し、感染者数が少ない地域の中学校は5月18日からの再開が認められ、高校は5末の再開を予定しているということです。11〜15歳の生徒はマスク着用が義務づけられ、学校内の消毒も徹底するよう指針が出されています。

 政府は引き続き、企業にはテレワークを推奨する一方で、公共交通機関の通勤利用者の急増を懸念しています。時差出勤の奨励、短時間労働などを推進していく流れです。フィリップ氏は、感染の第2波も懸念しており、1日あたりの新たな感染者数が3,000人を切らない場合は、11日からのロックダウン緩和はないと念を押しました。この2週間の1日あたりの新規感染者の平均は2,162人です。

 同首相は「ロックダウンにより国内で1カ月間に推定62,000人の命が救われた」と述べ、対策は効果をあげたことを強調しています。同時にワクチンが開発されるなど予防ができるようになるまで「このウイルスと共存する方法を学ぶ必要がある」との考えを示しました。

 仏保健省によれば、29日(現地時間)朝時点で新型ウイルスの死者は23,660人、感染者は168,935人に達しています。しかし、英国の死者数が26,097人とフランス、スペインを抜き、世界3番目、欧州でイタリアに次ぎ2番目になり、英国の深刻さが伺えます。

 ただ、英国の数値は、病院で新型ウイルス陽性の検査結果が出た人のみを死者数として集計していたのを、高齢者施設や自宅で死亡した人数を加算したことで急増した面もある。その意味では日本でも死者へのPCR検査を徹底していないので実際の感染死者数は、英国同様一桁以上違うかもしれません。

 フランスでは入院患者と集中治療室にいる患者の数は減少しており、政府が制限緩和に踏み切る根拠にしています。来月11日以降、1週間に70万件の新型ウイルス検査の実施を目指す方針も明らかにしており、感染実態の正確な把握に努める方針です。

 5月は、フランスを初め、イタリア、スペイン、ドイツなどでロックダウンの本格的解除が始まります。正体不明の新型コロナウイルスとの戦いは第2フェーズに移るわけですが、感染力が非常に強く無症状者が他の人に移すことや陽性だった人が再び陽性になるなど、懸念材料は山のようにあります。

 実はフランスの最新の失業率が急上昇し、2017年のオランド前政権末期に戻ってしまいました。フランスは給与補償や休業補償があるので大丈夫ということはなかったことを如実に表しています。マクロン氏の最大の使命だった失業率を抑制の努力は、無残にもコロナで打ち砕かれた形です。経済活動再開にはそのような背景もあるわけです。

 しかし、リスクは変容する性質を持ち、ウイルスも同じです。癌は叩けば叩くほどあちこちに転移するようにウイルスが変異し、第2波、第3波が起きる最悪のシナリオへの備える必要でしょう。

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