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 業種によっては、この疫病危機でデジタル化が一挙に進み、働き方が大幅に変わる企業もあるでしょう。テレワークから見えてくるのは、誰も見ていない環境でも自ら積極的に仕事に取り組む自発性マインドと、そのマインドを支えるすエンゲージメントをもたらすリーダーシップです。

 日本では下が上を支える独特の文化や愛社精神があるので、それをエンゲージメントと勘違いしたりしますが、終身雇用や家族的経営が消えるの中、その文化も頼りにはなりません。特に危機的状況に追い込まれた時は、リーダーの判断力や決断力が大きく状況を左右するので、リーダーが有能か無能かによって会社や組織の運命も決まります。

 さらに危機の前に縮こまり、何の手も打てず、保身に陥るリーダーや、長年会社に忠誠を捧げてきたような人間を容赦なく冷たく切ってしまうリーダーを見て、その人間の本性を目の当たりにし裏切られた気持ちで会社を去る人もいるでしょう。

 日本の企業は、随分長い間、社員の勤勉さ、真面目さ、忠誠心、職人気質の従順さに支えられてきました。その上にあぐらをかいてきた会社がほとんどかもしれません。部下としてどうあるべきかは、嫌というほど教育されていても、リーダーとしてどうあるべきかという指導者教育は手薄でした。

 前にも書きましたが、トヨタ自動車の豊田章男社長が問題視したのは、若い社員が将来なりたい、自分が目標にするようなリーダーが社内に見当たらないということです。これは私が長年、研修を担当したトヨタと双璧をなす自動車メーカーでも同じことがいえます。これが日本企業の深刻な問題です。

 これは新しい問題ではありません。高度経済成長下の1960年代から、サラリーマンがなぜ毎日のように仕事帰りに酒を飲むかといえば、そこで上司への不満を吐き出すためだったというのは当時、よく説明されたものです。社員は上司が有能、無能に関わらず、従順に従うことの方が重視されました。

 しかし、今は無能なリーダーは淘汰される時代です。今後、確実に押し寄せる世界恐慌の危機的状況を乗り越えるのには絶対に有能なリーダーが必要だからです。それも多くの人が疫病蔓延で心に痛手を負っている状況の中でポジティブなマインドを維持し、危機を切り抜けなければなりません。

 では、有能なリーダー像は何か。的確な状況判断をして先手を打って危機を乗り越える能力だけでなく、誠実さと謙虚さを備えるなリーダーが必要です。メンバーに強いエンゲージメントを抱かせ、危機的状況の中でもメンバーが自発的に仕事に取り組み生産性を高める人物が必要です。

 個人的に実績は出せても人間として傲慢であったり、パワハラに近い高圧的態度を取るリーダーは組織にとっては有害です。今は先がまったく見通せない不安が蔓延している状況です。近親者にウイルス感染で亡くなった人がいるメンバーもいるでしょう。人間の心は繊細でもろいものです。

 自分はメンバーのために何が出きるのか、どうサポートすべきかを常に考えられるリーダーが必要です。そう考えると自分がいかに無力かを思い知らされ謙虚になるものです。人に敬意を払う人間は相手にも伝わります。有能なリーダーはメンバーに強い信頼とエンゲージメントを抱かせるものです。

 リーダーシップとマネジメントは、非常に複雑にできた人間を一つの目標に向かわせ、メンバーのエンゲージメントをもたらし、彼らを管理し結果を出すことです。エンジニアやIT系出身の人間は、一定の法則で動く自然相手の科学分野出身者で合理性が全てです。ところが気持ちや気分で動く人間は合理性だけで動かすことはできません。

 それに激しい競争を生き抜いてきた仕事面で実績を出してきた有能な人間は、常に人との優劣意識が頭の中にあるものです。一般的には自信のある人間を有能なリーダーといいますが、過信は有害です。トータルな人間力が問われるリーダーシップには、自分の限界を知り、日々、複雑な人間と対峙する必要があります。

 日本ではリーダーを堕落させる御神輿経営のようにリーダーを担ぐ習慣があります。結果はリーダーは裸の王様になり、自分が正しく見れなくなります。周囲の部下が自分に対して全員忖度する状況はリーダーを傲慢にしてしまいます。部下の嘘や不正確な情報も見抜けなくなります。

 世間では優れたリーダーは大抵、ナルシストだといいます。東京都の知事にナルシストを自称する人もいました。確かに多くの場面で人よりずば抜けた才能を持っていることを経験したことで、自己愛が確立したのでしょうが、自己愛の強い、自分を過信する人物は危険ではあっても有能とはいえません。

 当然、自己愛の強い人間が傷ついた人の心を癒せるとは思えません。不可抗力の自然災害や疫病蔓延に対しても切り抜けられないのは本人の能力がないからだと自己愛の強い人間は思うはずです。そんなリーダーが部下のエンゲージメントを高めるはずもありません。

 共感が重要な時代、政治家や役人の的外れの決定は状況共有ができていない証拠でしょう。自分は超安全な場所にいて危機を感じていないということです。誠実なリーダーであれば夜も寝られないはずです。前代未聞の世界的景気後退局面に入ると思われる状況の中で、先を見通し希望を与え、メンバーがポジティブでいられるようにする有能なリーダーを選ぶことは極めて重要です。

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