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 英国の失業保険申請件数は3月に増加し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は労働市場にも深刻な影響を及ぼし始めています。英政府統計局(INS)の発表によれば、3月の申請件数は前月比1万2200件増、失業率は3.5%と、2014年以来の高水準です。

 一方、アメリカ労働省の今月16日の発表では、4月11日までの1週間に新たに申請された失業保険の件数は524万5000件で、非常事態宣言が出された3月中旬以降の4週間の申請件数は合わせて2200万件を超えています。自宅待機命令に対して「働かせろ」のデモが各地で起き、トランプ大統領は経済活動の段階的再開を示唆しています。

 雇用統計は米英では大きな経済指標ですが、ユーロ圏は事情が異なります。なぜなら雇用制度と社会保障制度が深く結びついており、雇用者は簡単に人を解雇できない仕組みになっているからです。例えばフランスは今回、一時休職保障として給与の84%が政府によって保障されています。

 それでも一時失業者の数は労働省が出した最新値で、約337,000社で360万人とされ、リーマンショック時の2009年を上回っています。せっかく昨年は8%代まで下がった完全失業率ですが、政府はなんとか給与補償で乗り切りたいところですが、持ちこたえられるか疑問視されています。

 とにかく、フランスのぺニコ労働相は、大企業が一時失業給付金制度を利用しないよう、経営者に働き掛けているほどで財政的に持たない限界に来ています。自動車の欧州の販売台数の大幅な落ち込みなど製造業の雇用維持は不可能な段階にあるといえます。

 その自動車産業が基幹産業のドイツは、同国連邦労働局が3月31日、3月の失業率(季節調整済み)が5%だったと発表し、11カ月連続での横ばいでしたが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の影響が今後表れると予想されています。

 手厚い社会保障で知られるユーロ圏ですが、リーマンショック、ギリシャの財政危機、ブレグジットで痛手を被り、緊縮財政を強いられる中、豊かな北部と財政赤字に苦しむ南の対立が激化しており、南の福祉国家が危機的状況に追い込まれていることが伺えます。

 ドイツのシュパーン保健相は今月17日、新型コロナウイルス感染症の回復者数が新規感染者数を上回る日が続いていることを受け、国内の感染拡大は「これまでより制御可能な状態になった」との見解をを示しました。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、20日の週より同国東部ザクセン州のツイッカウとスロバキアの首都ブラチスラバにある工場の操業を再開する方針です。

 ただ、ドイツでも大規模な文化・スポーツイベントの秋までの開催禁止など、感染拡大の第2波が襲来することを警戒しており、経済活動が正常に戻るのは秋以降になりそうです。これはフランス、イタリア、スペインなど新型コロナウイルスの死者が2万人を超えている国でも同じことがいえます。

 問題は政府が手厚い保障をしている国々は財政が持ちこたえられない可能性があるということです。フランスの財務省に勤める友人は「誰もそのことを話したがらない」「しかし、手を打っておく必要がある」といっています。それよりも政府の危機感は完全失業率が、もとの10%前後に戻ることです。

 改革の旗手といわれたサルコジ元大統領は、リーマンショックに襲われたことで、失業率を抑えられず、不幸な終わり方をしましたが、今回はそれ以上の経済ダメージであることは確かで、マクロン政権には暗雲が垂れ込めています。

 日本では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休業補償、給与補償など手厚い補償の例としてヨーロッパが取り上げられることは多いのですが、政府の台所事情は伝えられません。逆に言えば非常に厳しい財政事情の中でも国民を守ることを最優先に行動するヨーロッパと、ヨーロッパ諸国よりはるかに金のある日本が出し渋りで国民の不信感が強まっているのは皮肉なことです。

 今週23日、欧州連合(EU)首脳は、南北で対立が表面化している緊急経済支援の財源確保のためのユーロ共同債について話し合う予定ですが、イタリアが「こんなときこそEUはじゃぶじゃぶ金を出すべき、後のことは何とかなる」というのに対して、ドイツが「また、そんないい加減なことをいって財政を悪化させてユーロの信用度を落としてしまう」と反発するのが目に浮かぶようです。

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