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 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、世界中で様々な矛盾や問題をあぶり出しているように見えます。その典型は国民と政府の信頼関係です。例えば感染が本格化する途上国では、政府は非常事態のルールを守らない市民に暴力などを行使していますが、暴動も起きています。

 日本では安倍政権が緊急事態宣言下で国民生活を守るための経済支援策が迷走し、多くの国民が政府は財務省と財界しか念頭にないという不信感が強まり、差し迫る困窮で不安は怒りに変わろうとしています。このまま迅速な対応ができなければ、政権がめざす改憲など吹っ飛んでしまいそうです。

 アメリカでは、コロナ対策で各州知事の権限が大きな影響を与えていますが、知事が共和党か民主党かで連邦政府及びトランプ政権の打ち出す方針に対する反応が大きく異なり、危機対応に政治が持ち込まれ、混乱しています。大統領選を控え、トランプ大統領の打ち出す危機対策を選挙運動としか捉えない民主党勢力は常に批判的です。

 ただ、興味深いのは危機対策には様々な意見があり、政府批判がありますが、欧米諸国に共通するのは人命や遭遇する苦難に対する受け止め方は似ていることです。英国ではSNS上で感染経験者が自らの体験を情報提供し、共感を得ています。感染者がバッシングを受けるのを避ける運動もあります。

 誰もが自分の身に起きうる疫病の苦しみや恐怖に対して、それを共有し、励まし合い、支援する空気が醸成されているの世界にとってプラスといえるでしょう。フランスは激務の医療関係者に特別ボーナスを支給することを政府が決めました。

 そのヨーロッパも緊急経済支援策で勤勉で豊かな北部と、財政赤字で苦しみ南部の考え方の違いが表面化し、機能不全に陥るリスクを抱えています。人生観そのものの違いともいえるものが対立を生み、先が見えない状況です。

 国民性の違いでいえば、日本人が人命より経済を先に考える傾向があることも特筆すべきことです。工場を止める理由は、従業員の人命を最優先に考えるよりもサプライチェーンが止まり、物理的に作業が継続できなくなったことが主な理由です。ビジネス最優先のメンタリティが露呈しています。

 政府も人命優先の強い意志があれば、大胆な政策がとれたはずですが、その意志はないようです。まるで人命は2の次だった太平洋戦争の時のようです。新人研修を強行する企業もあるそうですが、今の時代に利潤追求の組織のために命を投げ出すのは美談にはならないでしょう。

 韓国はコロナ対策で世界のヒーロー扱いを受け、総選挙でも文在寅政権を支える左派与党が圧勝しましたが、実は北朝鮮との戦いの有事を続ける韓国ならでは強硬対応が功を奏しました。しかし、今後の経済が懸念され、世界は今、先進国、途上国含め、コロナショックで不況到来が確実視され、他国を救済する余裕はありません。

 中国メディアの中には「文在寅政権の正念場がこれからだ」「コロナ禍の死者は抑えられても経済難で自殺する人が増えれば、政権の正当性は帳消しになる」と指摘しています。実際、韓国は1997年の通貨危機以降、2003年から16年まで13年間連続で経済協力開発機構(OECD)加盟国中最も高い自殺率という不名誉な記録を持っています。

 中国は政府の隠蔽体質が国民だけでなく、全世界の人々を危機に陥れた可能性が指摘されています。アメリカが調査する武漢の研究所からのウイルス流出疑惑、フランスのウイルス学の権威、ノーベル賞受賞者のモンタニエ博士の武漢の研究で今回の新型コロナウイルスが人工的に作られたという説など、証拠はないにしろ、今では中国が何か重大なことを隠しているという疑惑は深まるばかりです。

 この隠蔽体質は海外にも有害ですが、実は研究所流出説が証明されるようなことがあれば、武漢市民は暴動を起こす可能性もあり、中国共産党自体が政権を維持できない事態に陥る可能もあります。呼吸するように嘘をつくといわれた中国人の弱点が大問題を引き起こしそうです。

 コロナショックは、あまりにも多くの問いかけを人類にしているように見えます。笑われるかもしれませんが、私は脳裏に旧約聖書のバベルの塔の話が浮かんでいます。神の意志に反して巨大な塔を建設しようとして怒りをかい、人々が作業を続けられないように神はコミュニケーションを封じるため言葉を分けたという話です。これが世界が多言語になった理由だと信じられています。

 今回はソーシャル・ディスタンシングで、身体的接触ができなくなっています。人は身体的接触で親密感や愛を深めているわけですが、身体的距離を保つことを強いられるのは人間同士の絆に亀裂を入れるようなものです。しかし、裏を返せば、遠距離だからこそ本物の愛が試されているのかもしれません。

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