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   いったい武漢のどこで新型コロナウイルスの感染が始まったのか

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応を話し合う先進7ヶ国(G7)首脳会議が16日、電話会議の形で行われ、世界保健機関(WHO)の徹底した検証と改善を求めるアメリカとWHOを支持する仏独の温度差が報じられました。ところが深層はそんな単純なものではありません。

 仏独は国連中心で世界秩序を構築する多文化共生主義なのに対して、アメリカは国連を中心とした国際機関が常に政治利用のリスクに晒されていることから懐疑的です。その意味で、仮に今回のパンデミックが中国の影響下にあるWHOが正確な情報を世界に発信する義務を怠ったとすれば、アメリカが主張するようにWHOは機能不全に陥っているといえます。

 実は今回のG7の会議には、2つの大きなテーマがあったと私は見ています。1つはWHO問題、2つ目は中国問題です。会議の目的自体は7ヶ国が先頭きって新型コロナウイルス対策で協力関係を強化することと、パンデミック終息後の経済回復の出口戦略の中心的役割を7ヶ国が担うことを確認することだったわけですが、これだけ甚大な被害が世界に拡がった以上、原因究明と責任追求は当然です。

 G7はWHOに対するアメリカと欧州の温度差は温存しながらも、実は中国疑惑に対しては風向きが変わったことが大きな成果といえます。

 フランスのマクロン大統領は16日、英フィネンシャルタイムズ紙とのインタビューで、新型コロナウイルスの中国での感染拡大について「起きていながら私たちが知らないことがあるのは明白だ」と述べ、世界で最初の発生源となった中国から提供されている情報に隠蔽があるとの認識を示しました。

 一党独裁の中国の方が民主主義国家より危機対応をうまくやれているとの見方についての質問に対して「中国の方がうまく対応したというのはあまりに稚拙な考えだ」として、中国からの情報について「ばか正直に信じてはならない」と述べ、全面的には信じていないとの立場を明確にしました。

 一方でG7会議後、仏大統領府がマクロン氏は「(会議では)野心的で連携した国際対応の必要性を強調し、WHOへの支持を表明した」との声明を出しましたが、同じ人物の発言としては矛盾しています。一方で中国の情報は信用できないといいながら、その情報を鵜呑みにしたWHOを支持するというわけです。

 マクロン氏は、世界保健機関(WHO)をアメリカのトランプ大統領が「中国寄り」と批判し、分担金を真実の検証が終わるまで支払いを停止するとした決定には批判的でした。実際、「全ての対応策はWHOの正式見解を元に決定する」と同氏は2月末から何度も述べ、この世界的ウイルス禍への対応が迫られる状況でアメリカが資金拠出を停止する姿勢に不快感も示していました。

 他の欧州首脳らもトランプ氏のWHOに圧力を加える決定には批判的でしたが、本当は16日のG7テレビ電話会議で風向きは変わったと見られます。特にWHOの新型コロナウイルス感染症対応に関し、首脳らがアメリカが主張する徹底した検証と改革を求める方向について抵抗しなかったことです。

 見解の相違はあるにせよ、マクロン氏など欧州諸国首脳のその後の発言から中国へ疑いは深まっていることが伺えます。アメリカが、世界の感染者が210人を超えたウイルスの発生源が、中国・武漢の研究所かどうかについて調査を開始したことも影響を与えています。

 最近、フランスでは、同国のHIVの発見者でノーベル生理学・医学賞受賞者のウイルス学の権威、リュック・モンタニエ博士(87)が、新型コロナウイルスは野生動物からではなく武漢にある氏自身も良く知る研究所で人工的に作られたものだと発言したことが波紋を呼んでいます。これが本当なら中国は武漢の感染拡大を抑えた功績を世界に誇るどころではなくなります。

 それに、中国の対応を高く評価してきたWHOの信用度もガタ落ちになるでしょう。マクロン氏はそんな事情も知りながら、中国のいうことを真に受けるのは愚か者だといったと思われます。

 
新型ウイルスに感染し療養中のボリス・ジョンソン英首相の代行を務めるラーブ英外相は、中国とはこれまでの関係を維持できないかもしれないと述べ、「なぜ早期に阻止できなかったのかという、厳しい質問をせざるを得ない」と述べています。

 中国への疑惑を口にしないのは、欧州で最も中国と経済関係の深いドイツのメルケル首相だけです。無論、WHOへ3番目に高額分担金を払う日本の安倍首相はWHOへの支持を継続し、中国への疑惑に言及することはありません。財界と習近平に忖度しているからでしょう。

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