7378023376_8e8ccd6b3a_b

 昨年3月、イタリアを皮切りに始まった中国の習近平国家主席の欧州歴訪で、中国は巨大経済圏構想「一帯一路」にイタリアを巻き込むことに成功しました。具体的にはイタリアのトリエステ港の港湾整備に中国が大規模投資することで合意。中国は鉄道による物流ルートでは欧州までのルートは確保しており、アドリア海ルートは貨物船ルートとして確保する狙いがあると見られてます。

 今回の新型コロナウイルスの猛威でも、イタリアは中国の医療サポートチームを受入れ、中国を警戒する欧州連合(EU)を尻目に、中国との緊密な関係を続けています。中国のやり方は、その国が課題とする公共事業に担保融資を行い、極端な場合は債務不履行で担保を押収するというものです。

 それを長年、中国は途上国に対して行ってきたのが、昨年は欧州で3番目の経済大国イタリアに融資先を拡大した形です。イタリアにとって都合がいいのは、中国マネーは債務の中身が公開されていないことで、リスクを隠せることです。

 ハーバートビジネスレビューは今年2月、「世界は中国マネーにどれくらい依存しているのか 途上国の隠れ債務と隠れリスクが明らかに」という興味深い記事を掲載しました。それはスキャンダルラスともいうべきもので、中国マネーがヘタをすれば世界経済を完全に狂わせてしまうような状況にわれわれは置かれているという話です。

 それによると、まず、政府が保証する中国の融資は途上国に対する他の先進国の融資と異なり、民間金融機関を対象とするムーディーズなどの調査対象にならず「中国は海外融資活動の報告をしていないし、伝統的なデータ収集機関の目もすり抜けている」と指摘しています。

 「中国政府と中国国有企業は、世界150ヵ国以上に対して、直接融資と貿易金融合わせて約1兆5000億ドルを融資してきた。これにより中国は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)も上回る世界最大の公的債権者となった。その融資額は、経済協力開発機構(OECD)の債権国の融資額合計よりも多い」とあり、知らないうちに途上国の多くは中国からの借金漬けになっているというわけです。

 それも政府間の融資は通常、無償資金協力や市場金利を大きく下回る優遇融資、あるいは援助という形なのに対して、中国は市場金利で、しかも担保までとっていると指摘。さらに私の知る北アフリカの天然ガス施設開発では多数の中国人労働者を送り込み、チャイナタウンを作り、プロジェクト終了と共に完全に町ごと消える手法をとっているのが実情です。

 さらに「もっと重要なのは、中国の途上国融資の50%以上が、どこにも報告されていないことだろう。つまりこれらの債務ストックは、世界銀行やIMFや格付け機関が提供する、きわめて信頼性の高いデータソースには反映されていない」ということです。

 この隠蔽された対中債務は、債務国の債務返済能力や金融リスクの評価を不明なものにし、政府債務の本当の規模を把握できなければ「民間部門はソブリン債などの政府債券に適正な価格をつけられない」だけでなく「借り手に問題が生じた場合、複数の債権者の中で中国が優遇される可能性がある」ということで債権のデフォルトリスクを読めなくしているというわけです。

 それにグローバル化で重要度を増した世界経済予測で、中国の海外融資の急増を計算に入れていないことで、正確な分析ができていない現状があると指摘しています。今回のコロナ禍で途上国から経済が傾いていくとすれば、巨額の対中債務を抱える途上国でデフォルトに陥る可能性が高まり、世界経済に深刻な影響を与えるだけでなく、中国は担保を自国の物とすることにも繋がります。

 欧米先進国を中心に構築してきた金融システムやIMFなどの国際機関は今、隠蔽された中国マネーによる巨額の隠れ債務で、現実を正確に把握することができなくなっており、IMFのマネーが中国債務の穴埋めに使われる可能性もあります。

 中国の融資先は途上国に止まらず、今やイタリアなど経済危機に陥る先進国も標的となっており、悪質なサラ金の正体を知らずに融資に飛びつくようなリスクに世界は晒されているといえる状況です。

ブログ内関連記事
習近平訪欧 警戒しつつも中国大規模投資に喉から手が出そうな欧州
ファーウェイ中国外初の仏工場 弱い欧州の取込み戦略とアメリカでの巻き返し攻勢
新型ウイルス猛威はブラックスワンなのか 投資家も逃げ場を失う金融危機の予兆は本当か
G20で重要さを増す経済覇権と環境問題 リーマンショックの反省は活かされているのか