141021-M-DN141-001

 新型コロナウイルスのアウトブレイクに直面し、都市のロックダウン、罰則のある厳しい外出制限措置をとっている国は増えています。スペインは経済活動を2週間禁止するという大胆な措置を決めました。逆にスウェーデンのように「各自の責任にまかせる」という国もあり、ほぼ全ての国民が感染拡大に最大限の注意を払いながらも、日常生活を継続している国もあります。

 自宅待機といっても、人々の生活形態は非常に多様です。一人暮らしの高齢者の多いイタリア、11平米のアパートに子供5人の7人家族で住むパリの住民、離婚スレスレのカップル、一人暮らしの学生、単身親家庭、同居を考えながら互いに一人暮らしを続けるカップル、友達の家を転々とする定住場所のない人、そして街角で暮らすホームレスと、人の生活形態は様々です。

 この数日、外出制限措置でほとんどの人が自宅にいるフランスで、ドメスティック・バイオレンス(DV)通報数が35%も増えていることがニュースになっています。さもありなんという感想です。なぜなら、DVは、もともとフランスでは深刻な社会問題で、昨年1月からの半年間だけで元配偶者等によるものも含めて、DVで死亡した女性の数は100人を超えています。

 DV被害者支援団体などは、DV対策の「マーシャルプラン」策定を求めて抗議行動を展開しており、パリのトロカデロ広場でも昨年8月には抗議デモが行われました。政府は緊急対策として、2020年に避難所シェルター等の収容能力を1000人分(シェルター分250人分、当座の住居斡旋で750人分)増やす方針を固めました。

 フランスでは昨年1月から6月の半年間でDV立件件数は7,490件に上り、15歳以下の未成年のDV死亡者は36名。さらにDVを含む幼児虐待・放置にいたっては29,149件に登っています。前年度同期でDV被害は6,918件、幼児虐待・放置は27,629件、未成年者DV死亡者は40名。虐待の通報窓口には、年間約466,000件、1日平均1,300件近く電話がかかっています。

 そこに外出禁止令が下されたわけですから、人のイライラは助長され、閉鎖された逃げ場のない空間で必要のない衝突が急増するのは想像に難くありません。避難シェルターでさえ、閉ざされた空間で感染リスクあり、本当に地獄を味わっている人も少なくないでしょう。

 私は、感染症の専門家ではありませんが、自宅待機が最善策とは考えていません。理由は市民を各自の自宅に閉じ込めることはDVに象徴されるようにリスクがあるからです。経済的影響も当然避けられません。たとえばロンドンで暮らす娘夫婦には手間のかかる3歳の双子がいます。

 2人ともサラリーマンで、現在は在宅勤務です。子供の幼稚園は休園です。結局、夫婦のどちらかが子供の面倒を見て、もう一人が仕事に集中する形態をとっていますが、子供はその状況を理解しているわけではありませんから、容易ではありません。

 もし、自宅近くの喫茶店やシェアオフィスのような場所が活用できれば、仕事効率が上がることでしょうし、息抜きにもなります。子供も諦めもつくでしょう。では、感染拡大させない喫茶店やシェアオフィスは、どのような対策が必要かといえば、まず、密集を避けるため座席を1m以上空けることです。

 さらに入店、入室制限で人数を通常の半分以下に減らすことです。また、テレビ会議などが必要な場合は、シェアオフィスでも1人1人が閉ざされた遮音された空間を提供することで可能です。徹底した衛生管理を行い、喫茶店やシェアオフィス内での人の接触をさせないことも重要です。

 問題は通信セキュリティの確保ですが、今のIT技術で不可能なことはないはずです。私は職業柄、出先の喫茶店やホテルのロビー、公園のベンチなど、どこでも仕事をしてきましたから、感染に関する対策が講じられていれば、仕事内容にもよりますが可能ではないかと考えています。

 公共の建物の活用も考えられます。だいたい自宅待機は各国1カ月を目途にしています。臨時に仕事空間を図書館など公共施設が徹底した衛生管理と入室制限、接触制限を行い提供するというアイディアもあるでしょう。

 自宅に閉じ込めておけば安心という短絡的な考えでは、DVが起きたり、離婚や自殺もすでに起きています。ウイルスは避けられても他のリスクが高まります。国と企業、サービス業などが知恵を絞れば、様々な働き方が可能でしょう。

 客が少なくても1カ月閉店するよりはいいという店も少なくないでしょう。ウイルス対策では通気が大切といいますが、人間は外気なしに生きられないように外出も必要です。無論、ウイルスとの戦争にそんなことはいっていられないという専門家もいるでしょうが、別のリスクも考える必要があります。

ブログ内関連記事
AIはコロナ危機をどう分析するのか 進取のIT業界の実力が思わぬところに生かされる期待感
在宅勤務に踏み切れない日本企業 理由は日本的働き方そのものが壁になっているのでは
想定外の事態に品不足のPC 在宅勤務がもたらす会社のデジタル・イノベーション