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 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、世界各国で外出禁止令が出され、日本政府も在宅でのテレワークを推奨しています。欧米諸国はリアクションが早いのですが、日本企業は躊躇する場合が多く、業務がうまく機能しないと心配する企業は少なくありません。

 一つは各自が在宅で仕事をするためのインフラ整備、つまりテレワークを可能にするネットワーク構築や、PC端末支給にコストが掛かるだけでなく、ハッカーなどから情報を守るセキュリティの問題まで心配は尽きません。それに永遠にウイルスが蔓延するとは考えにくいので、働き方の大きな変更はしたくない企業も少なくないでしょう。

 しかし、より本質的課題は、果たして在宅勤務で、職場に集まって協働作業していた時と同じ成果を上げられるかが見えない問題です。特に業務の複雑化でチームワークは、どこの職場でも必要なので、物理的に離れた在宅で、デジタル技術を駆使したとしても、同じパフォーマンスを出せないのではと考える企業は少なくないでしょう。

 某日系大企業のIT部門で働く友人の息子は「この際、一気に社内のデジタル化を進めて生産性を上げればと思うんだけど、経営者側は重い腰を上げようとしない」と、働き方の改革が断行できないのは世代の問題と考える30代以下の社員は多いようです。

 そこで在宅勤務の本格導入の技術面以外の課題を考えると、日本型チームワークと欧米型チームワークの違い、さらにはチームを率いるリーダーの日本での役割の性質に壁があるように思います。これは日本の仕事慣習の批判ではなく、その優れた部分を残しつつも改革すれば、さらに大きなパフォーマンスを発揮できるという話です。

 ハーバードビジネスレビューは「チームのリモートワークを機能させる9つのポイント」を掲載し、在宅勤務でチームリーダーがどうあるべきかの方法論を紹介していますが、最初に「チームの目標と各自の役割を明確にすること」が挙げられています。

 当然のように見えますが、実は欧米型組織は、基本的には様々なスキルを持った個々の集合体で、適材適所で最大限のパフォーマンスを発揮するために設計された精巧な機械がイメージされます。一方、日本型組織では、複数の個が一体化して一つのアイデンティティを共有し、一つの個として動くイメージです。

 日本型組織では、一人一人の役割と責任は明確でなく、相互補完的に足らない部分を補い遭い、その場その時で自発的に自分のすべきことを悟って行動することが個々人に求められます。結果、独立した役割が存在するわけではなく、業務は常に重なり合う部分が多く、ファジーが最適と考えられています。

 となると、まず、在宅勤務のチームを率いるリーダーが、チームの目標を明確化することはできても、役割の明確化は難しいということになります。無論、アメリカの職場でも、自分の職務で行き詰まった時に他のチームメンバーに支援を求めることはありますが、あくまでそれをチームワークの中心に置いているわけではありません。

 日本の企業では、チームの中の自分の役割を悟って積極的に関与する人間、その「悟る」「自発的に行う」ことが評価されます。となるとチーム内の全てのメンバーの進捗を知る必要があるわけですが、欧米型組織では、基本的に自分の役割は明確化しており、他のメンバーが代行することもないので、互いの仕事に対する関心度も低いといえます。

 結果的に在宅でも自分の役割は明確なので、頻繁に横同士のコミュニケーションを取る必要はなく、リーダーは各自の進捗を管理すればいいということになります。無論、日本企業の組織内でも職務によっては、あまりチームメンバー同士のコミュニケーションが必要ない専門職もありますが、有機的に動くことを重視する日本の組織では、テレワークに壁があります。

 現実にはハーバートレビューの指摘している通り「危機の最中には新たな業務がいくつも発生するため、メンバーの多くは各方面から引っ張りだこになるだろう。このような切羽詰まった状況に独力で対応するよう求め、部下をいっそうの重圧に晒すようなことは、やってはならない。プロジェクト間の稼働調整を支援する意思があることを、(リーダーは)はっきり伝えよう」とあります。

 つまり、業務の複雑化、緊急性で一人がいくつものプロジェクトに関わる場合、個々人の信頼関係が構築できにくいリスクもあるので、リーダーは必要とされて一時的に入ってくるメンバーを他のメンバーに丁寧に紹介する必要があると指摘しているわけです。

 さらに仕事だけでなく、メンバー同士のバーチャルの交流も重要だとしています。職場にいれば、昼食を共にする、小休憩で雑談するなどの交流もできますが、在宅では物理的な交流は困難です。それでも定期的にバーチャルで仕事以外の交流を行うとか、ウイルスの問題がなくなれば、定期的にどこかに集まって交流するのも効果的です。

 そこでも日本型組織の考え方では、組織人間としてのアイデンティティ強化が目的になりやすいのですが、それも重要ですが、在宅勤務は個々人の主体性も育てることが期待されます。終身雇用で囲い込み、家族的経営で帰属意識を育て忠誠心だけで仕事をするのは難しい時代です。

 その忠誠心が中心にあった時代でも、個人のモチベーションも向上心も高かったのが、今はそのモチベーションや個人の目標を持つのも難しい時代です。仕事の重圧で疲れ切った上司を見て、昇進したいと思わない若手社員は増える一方という調査報告もあります。

 そんな中、在宅勤務が今後、定着の方向に向かう場合もメリット、デメリットを整理しておく必要があります。問題はチームリーダーが、どれだけメンバーに関心を持つかだと思います。実は同じ職場にいても部下への関心は高いといえない現状があるはずです。離れていればこそ、何倍もの関心が必要になり、それはリーダーシップに非常にいい効果をもたらすはずです。

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