La_Croisette-Cannes-France
  カンヌ国際映画祭も延期

 フランスで今年5月12日から23日にかけて開催予定だった毎年恒例の第73回カンヌ国際映画祭について、主催者側は新型コロナウイルスのパンデミックを理由に延期を発表しました。17日正午からフランス全土で外出禁止令が出る中、春から始まる様々な文化・スポーツイベントの延期が相次いでいます。

 世界1の1億人に迫る外国人旅行数を誇るフランスは、国際規模の文化・スポーツイベント大国でもあり、国の観光戦略の大きな柱です。そのため経済的ダメージも計り知れず、すでにテニスの世界4大大会の1つであるローランギャロス(全仏オープン)も、今年は5月から9月に開催が変更されました。

 毎年5月に重なるカンヌ映画祭と全仏オープンは、観光の目玉で富裕層の注目度も高いことで知られています。さらに毎年7月開催の自転車の国際ロードレース、ツールド・ド・フランスも国際自転車競技連合(UCI)が3月18日に、ロードレース国際大会を4月末まで開催しないことを発表、全ての自転車ロードレースの日程は大幅に秋にずれ込む見通しです。

 さらには、サッカーの欧州選手権(EURO)の1年間延期が決まったことで、サポーターを含む観客が大移動するサッカー・イベントもなくなりました。また、ルーヴル美術館など多くの美術館、博物館が閉館しており、欧州連合(EU)は域外からの入域者を遮断する措置を取ったため、そもそも外国人旅行者は来れなくなっています。

 フランスはGDPに占める観光業の割合は、世界5位で7%超、世界1位のスペインの11%超よりは少ないものの、文化・スポーツイベントの次々の延期や中止が与える影響は深刻といわざるを得ません。逆にいえば、毎年、非常に規模の大きい国際イベントをいくつもこなしてきているわけです。

 当然、それらのイベントを支える宿泊施設、交通機関、道路インフラ、レストランなどが受け皿として整備されているということです。そういえば、5月前半に行われる予定の国際的自動車レースの最高峰F1もオランダ、スペインが中止され、5月末のモナコ開催も延期になりました。

 なんと、そのモナコではアルベール2世公が新型コロナウイルスに感染したことが公表されました。今やイタリアでの感染死者数が中国を抜く勢いのヨーロッパでは、メルケル独首相が「第二次世界大戦以来の危機」といい、マクロン仏大統領やジョンソン英首相が「戦争だ」という深刻な状況に陥っています。

 フランス人のブレグジットのEU側主席補佐官まで感染が認められ、交渉チーム全員が自宅待機状態で、今年末まで合意をめざす様々な英国との交渉に影響を与えそうです。今、ヨーロッパかっッ国が恐れていることは、イタリアの様な医療崩壊が起きることです。

 本来、文化・スポーツイベントは、人生を豊かにし、勇気づけてくれるものです。それができない状況が長期化することは、経済だけでなく、精神にも悪影響を与えそうです。 

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