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 WSJ「サンダース氏を卒業する若い有権者」より PHOTO: SID HASTINGS/SHUTTERSTOCK

 アメリカの大統領選に向けた民主党の指名争いは、スーパーチューズデイを境に当初、優勢だった急進左派のバーニー・サンダース候補が連敗を重ね、穏健派のジョー・バイデン前副大統領が候補指名を獲得する可能性が限りなく高まっています。米メディアの中にサンダース氏に撤退を施す論調も出始めているほどです。

 17日には大票田の南部フロリダ州など3州で予備選が行われ、穏健派のバイデン前副大統領がフロリダ、イリノイ、アリゾナ州で勝利を確実にし、候補者指名獲得は目の前だと勝利を確信しているようです。

 サンダース候補の敗因の一つは、圧倒的支持を受けていた若者層が減っていることです。ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「サンダース氏を卒業する若い有権者」と題して、2016年の大統領選の時より、30歳未満のサンダース支持層の割合が今回は減っていることを指摘しています。

 サンダース氏の主張する民主社会主義の中身を見ると、内政では富裕者税新設、中間、低所得者層向け住宅建設の支援、家賃統制、最低賃金引上げ、公立カレッジ授業料の無償化など、弱者寄りの社会主義的政策が目白押しです。特に医療保険改革「オバマケア」を国民皆保険にすることを公約に掲げています。

 これらは欧州が1970年代から取り組んできた社会主義による福祉理想国家に類似するもので、英国では労働党が「揺り籠から墓場まで」、仏独も民主社会主義は宗教のように信奉され、弱者救済の社会政策に多額な財政支出を行い、結果は巨額な赤字財政に陥り、今は完全に下火です。

 民主社会主義下の欧州では、人々は政府から支援を受け取ることに慣れ、巨額の支出で財政が逼迫する政府は緊縮に切り替えようとしても、フランスの黄色いベスト運動に象徴されるように一度握った既得権益は何がなんでも手放さないと抵抗を繰り返しています。

 そもそもサンダース氏が主張する民主社会主義は、国の経済が常に成長している前提でしか成りたたず、その成長を支える企業や富裕層を縛れば、財政難に陥るのは明白です。かつて階層社会でクラスが固定化していた欧州もIT革命で階層社会は崩れ、誰もが成功できる環境が整いつつあります。人を弱者に固定化しがちな社会主義は夢を与えません。

 そもそも英国が欧州連合(EU)を離脱したのも、その欧州大陸に拡がった古くさい民主社会主義を嫌ってのことでした。私は民主社会主義を信奉するミッテラン左派政権時代からフランスに住み、いかに国家に管理された社会が不自由なものかを身を持って経験しました。

 このところの行き過ぎたグローバル化による格差拡大で、ナショナリズムを前提としたポピュリズムが台頭しています。実はサンダースも「アメリカ・ファースト」のスタンスはトランプ氏と変わりません。しかし、学生ローンに苦しみ、将来に不安を抱えるアメリカの若者も、いつかは中間層以上になりたいと思っており、そうなればサンダース氏の主張は魅力に欠けるでしょう。

 そもそも誰もが成功できるアメリカン・ドリームの国で、個人の自由の保障を国是とするアメリカに社会主義は似合いません。富裕層は主体的に人道支援活動を行うのがアメリカの伝統であり、むりやり金を政府が取り上げて再分配するようなことをすれば、旧ソ連や中国の二の舞です。

 新型コロナウイルスでトランプ氏も対処を間違えば、一挙に支持を失う可能性もあり、大統領選は疫病問題に大きく揺さぶられています。サンダース氏ではトランプに勝てないと思っている民主党にとっては、バイデン氏優勢は朗報かもしれませんが、選挙当日まで予想ができない状況が続きそうです。

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