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   エドワード.T.ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」の国別指標


 海外への日本の発信力の弱さは、しばしば指摘されるところです。保釈中に海外逃亡した日産のカルロス・ゴーン元会長が司法後進国と批判している問題や、新型コロナウイルス感染押さえ込みのために日本が決定した中国や韓国からの渡航制限措置への韓国政府の批判に対しても、日本側の発信力、コミュニケーション力の弱さが目立ちます。

 日本人の対異文化のコミュニケーションスキルの弱さは、外交だけでなく、グローバルビジネスでも不利になっています。特にグローバル化が調整局面から脱グローバル化に移行する時代、国際社会に対する説明能力の欠如は、致命的な問題になりかねません。

 そこで日本人が気づきにくい日本的ハイコンテクストトのコミュニケーションスタイルやその背後にある斟酌(しんしゃく)文化が、いかに誤解を生んでいるかを、新型コロナウイルスの初動の遅れに繋がった対中国外交から読み解いてみたいと思います。

 中国の習近平国家主席の来日を4月に控え、過去にない中国との良好な関係を築く重要な時期を考慮し、日本への中国人入国禁止という水際対策を1月末に実施しなかったことが、日本の初動の遅れの原因といわれています。さらに背景には世界一中国との経済関係が深い日本は、対中政治関係を人命より優先させたと批判されています。

 自民党は国民一人一人のの生命財産より、大企業を向いて政治を行っているという長年の批判が、今回の健康危機対策でも露呈したといわれています。緊急性を要する健康危機への対応に政治外交が持ち込まれたというわけです。

 では、なぜ日本政府は中国の反応を恐れ、中国人の全面入国制限を断行せず、地域に限った中途半端な制限を続けてしまったかといえば、習近平主席を迎えようとする時期に中国人を全面的に入国制限すれば、中国政府は強く反発し、千載一隅のチャンスを逃すと考えたからでしょう。

 つまり、中国政府に斟酌し、初動が重要な健康危機対策が及び腰になったというわけです。ところが、この問題について中国政府と正面から協議したのかが問題です。実際、中国は日本が3月に入り、ようやく全面的入国制限措置に踏み切ったことには韓国と違い、理解を示しました。

 実は外交とかグローバルビジネスでは、しばしば自国の常識の適応が誤解や衝突を引き起こすことが指摘されています。特に常識への依存度が高い日本、中国、韓国のようなハイコンテクスト文化を持つ国は、その傾向が強いといえます。

 たとえば、韓国の朴槿恵前大統領が、ヨーロッパに行ってまでも日本の従軍慰安婦問題を吹聴し、アメリカの小さな町で従軍慰安婦の少女像を設置するのも、彼らの国内の常識では当然だからです。中国がユネスコに世界記憶遺産として南京虐殺を認めさせたのも、国内の常識の延長線にあります。

 つまり、自分の敵と見なす競争相手を誹謗中傷し足を引っ張ることが常識化している韓国社会、敵の面子を潰して相手に対して優位に立とうとする中国社会の常識が国外に展開されたものです。日本も強いものに極度に忖度、斟酌する国内慣習を国外にも拡げ、習近平やトランプに斟酌しています。

 ハイコンテクスト文化では、相手も自分と同じ常識を共有していると考えやすく、異文化の人々にもその常識を当てはめたり、強要したりする傾向があります。実は今、東南アジアに積極的に進出している中国、韓国は、フィリピン、ベトナム、インドネシアなどで様々な衝突を生んでいます。

 男尊女卑の強い韓国では女性に対するセクハラ、パワハラが日常化しており、それを東南アジアに持ち込んで問題を起しています。中央政府への忠誠心を重視する中国は、東南アジアでも独裁的姿勢が目立ち、困惑するナショナルスタッフは非常に多いのが現状があります。

 とにかく、中国社会も韓国社会も、相手に対してどちらが上かに異常なまでにこだわり、常に相手に対して優位に立とうとする文化なので、それが外交やグローバルビジネスにも持ち込まれています。ハイコンテクストの問題点は自分の常識の「思う込み」です。

 日本が中国全土からの入国を制限すれば、きっと習近平は不快に思い、訪日の中止や日中関係悪化に繋がると自国の常識を当てはめて「思い込んだ」ということです。忖度や斟酌はハイコンテクスト独特の慣習で、腹の探り合いとも繋がっています。お茶が欲しいと心の中で思えば、自動的にお茶が振る舞われることを素晴らしいと思うのと同じです。

 しかし、このハイコンテクスト独特の空気を読む習慣は、常識が共有されていれば誤解のリスクは少ないのですが、寄って立つ常識が異なれば、斟酌はリスクを伴います。ところが常識への依存度が高い社会に生きている人間は、常識が異なる人々とのコミュニケーションが不慣れです。

 自分が、ある思い込みの中にいることさえ気づかない場合も多いといえます。本当は読めない空気を一生懸命読もうとすることは徒労に終わることも少なくありません。自分の常識の延長線上に相手を考えているだけでは正確な理解はできません。

 日本政府は、国民の安全を最優先に考えるため、直ちに国境を閉めたいということを、相手国に丁寧に説明し理解を求めたのか。相手がどう考えるか打診したのかは、当事者でないので分かりません。ただ、日本は敗戦でアジアに負い目を感じ、未だにを尾を引いて、下手に出る傾向があります。

 独立した主権国家として対等の立場にあり、相手国に斟酌しながら政策を決めるのではなく、正面からのコミュニケーションをとって、相手国の意思も注意深く聞きながら、丁寧な説明で自国の政策に理解を求めることが重要です。できもしない斟酌はむしろ期待とは逆の結果をもたらすリスクがあります。

 気の回し過ぎは、かえって逆効果になるのが異文化です。今回の件でいえば、自国民の健康被害を押さえ込むことと、日中関係を重視していることはわけて考えるべきでしょう。それでも理解が得られず、韓国のように腹を立てる様なことがあれば、毅然として臨むべきでしょう。

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