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 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、世界経済の減速は避けられない状況です。当然ながら悲観論が高まり、実際に立ち行かない中小規模の企業の倒産も始まっています。国が救済措置を取るといっても限界があり、特に最も痛手を被っているのはグローバルビジネスです。

 世界で最も中国に経済活動への依存度の高い日本は、中国での生産活動の停止などでサプライチェーンの寸断が起き、中国に商機を求めて進出した企業は先行きが見えない状況です。インバウンドの高まりに大型投資してきた観光業も主要外来客だった中国、韓国人が入国禁止やビザ発給停止で激減し、どこまで持ちこたえられるか分かりません。

 今、日本では、この艱難をどう絶えて生き残るかが最大の課題と言われています。経営者は資金繰りと雇用の維持が課題だし、サラリーマンや非正規雇用者は職を失う恐怖におびえています。新型コロナウイルスウイルスという恐ろしい嵐が過ぎ去るのを忍耐しながら待つしかない状況です。

 私が交流のあったアメリカ・ニューヨークに40年以上暮らし、画家として成功した故遊馬正画伯は晩年、日本に帰国し「私が日本で一番違和感を持ったのは”生き残る”という言葉です」と私にいいました。彼はさすがアメリカで成功してた画家らしく、非常にビジネス感覚も持つ人で、この世離れした芸術家の発言とは思えない説得力がありました。

 つまり、「生き残りをかけた戦い」とか「生き残るのに必死」という日本で普通に使われている言葉に違和感を持ったという話です。理由は「あまりにも消極的な言い回しで、どこにもポジティブさを感じない、アメリカではあまり聞かれない表現だ」ということでした。

 アメリカに暮らした人らしい感想ですが、グローバルビジネスに長年関わってきた私として、アメリカが滅びない理由の一つが、超ポジティブ思考にあることを身に沁みて感じます。歴史が浅いので悪い経験も少なくトラウマがたいしてないのも理由でしょう。ただ、それ以上に国が新天地を求めてやってきた移民で構成されていることが大きいといえます。

 ハリウッド映画のほとんどが、逆境に打ち勝って幸福を勝ち取ることのがテーマです。安定した生活が何かと原因で破壊され、そこからハラハラ、ドキドキしながら試練を乗り越え、より高い幸福を手にする映画の山です。

 今、職場でのウイルスの集団感染を防ぐため自宅でのテレワークが世界中で拡がっています。学校が休校になった生徒の勉強のため、自宅でできるネット授業は中国を初め、様々な国で取り組まれています。これを不便とか非効率と考えるか、新たな可能性と考えるかは受け止め方次第です。

 集団感染のリスクを避けるため、人が大勢、長時間集ることが困難なことをネガティブにだけ捉えないで新たなテクノロジーで解決しようと考える優秀な若い人たちは今、世界中にいます。過去の成功だけを頼りに生きる人は、この危機を乗り越えられない可能性がありますが、この試練で人間が生き方をリセットできれば、荒なた可能性に繋がるということです。

 世界で最も長時間、会社で働く日本人も自宅待機は新たな挑戦です。家族で過ごす時間が長くなり、日頃やらない子供の勉強の手伝いをしたり、夫が家事を中心的にやる経験も貴重です。家族のチームビルディングを高めるチャンスと受け止めることもできます。

 私はある経験を通して「便利はリスク」ということを学びました。人間は世の中で最も便利な「お金」を中心に生きており、それに人生を振り回されています。つまり、お金さえあれば大抵のことは解決すると思いがちですが、それがわれわれの人生のリスクを高めていることに、あまり気づきません。

 無論、お金などいらないという暴論も間違いでしょうし、つましく生きていくのが一番いいなどいうつもりもありません。しかし、超便利なものは超危険と隣り合わせだということを肝に銘じることは重要です。SNSによってコミュニケーション革命が起きていますが、その便利なSNSによって自殺に追い込まれる人もいます。

 新型コロナウイルスは新しい働き方、生き方を考えるチャンスかもしれません。艱難が過ぎ去り、元に戻れば、痛い思いをしなかった人間は全てを忘れるものです。このストレスがより耐性を強化し、ポジティブ思考をもたらすと考えるようマインドセットする必要があります。

 人間も自然もあらゆる困難に対応できるよう作られています。東日本大震災で町ごと津波で消えた荒れた土地でも花が咲き始めるというのは感動的です。スペインの画家、ミロは戦後、そのような自然の生命力を多く描いています。

 不便は新たなアイディアを生むチャンスです。長く生きた大人はリスクに目が行きがちですが、若者は怖いもの知らずで、その危機の中でも次々とアイディアが出るものです。無謀でリスクの高い、しかし成功すればリターンの大きいグローバルビジネスの扉が一時的に閉まったことは、様々なことをリセットするチャンスかもしれません。

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