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 米ニューヨーク市場の恐怖指数(VIX)が先月末、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受け、一時ギリシャの財政危機(46)を超え、過去2番目だったNY同時多発テロ(49)と同じレベルに達しました。アメリカで感染者の死者が出たことから、過去最高だったリーマンショック級(89)の世界経済危機も予想されています。

 アメリカでのウイルス拡大は、中国同様、世界経済にメガトン級の影響を与えることを考えると、先行きは明るいとはいえません。仮にアメリカで夏までにウイルス拡大が終息しても正体不明のウイルスなので、秋以降に症例が出れば終息宣言など吹き飛んでしまうでしょう。鍵となる新薬ワクチンも今年中には無理そうなので、あとはリーマンショックやギリシャ危機の教訓をどこまで生かせるかです。

 私が強く懸念することの一つは、ただでさえ若者の内向き志向が強まる日本の企業が、さらに引き籠もり状態に陥ることです。今最も痛い目にあっている中国や今後停滞も予想されるアメリカ、さらにはブレグジット後の英国を、私はそれほど心配していません。

 なぜなら、彼らはオランダの学者ホフステッドの国民特性指標にも示されているように不確実な状況にストレスを感じにくく、立ち直りが早いからです。英国以外の大陸欧州はリスクに弱く、悲観論が漂うと長期化する傾向があり、日本も不透明な状況に極度の不安を感じる国民の一人です。

 リーマンショックの時を思い出しても、私が関わるグローバル系の研修は2009年以降2年近く減少しました。企業が弱気になり、グローバル展開で痛い目を見たということもあり、最初に削ったのがグローバル人材育成への投資だった印象でした。

 そこから立ち直り、フランスの経営大学院INSEADが毎年発表している国際人材競争力インデックス(GTCI)の推移を見ても、日本のグローバル人材力は徐々に改善しています。2020年の最新版で日本は世界で19位でアジアではシンガポールに次ぐ2位ですが、シンガポールは世界全体でも第2位で常に高いランクを獲得しています。

 鎖国を経験した島国の日本は、国を閉めれば生き延びれると考えられがちですが、今は世界と関係なく生き延びることができる国はありません。確かに今回の新型ウイルスの猛威はカントリーリスクという側面もありますが、国際協調なしに解決できる問題ではありません。

 同じことがリーマンショックや9・11の時もいえたわけなので、リスク回避のために鎖国が有効な手段とはいえません。政治、ビジネス、疾病、環境問題のいずれをとっても、グローバルな取り組みは不可欠です。たとえば英国はブレグジットで孤立主義を選んだわけでなく、グローバル化への対応が遅すぎる欧州連合(EU)に嫌気が差しただけです。

 どんな危機が訪れたとしても、新しいアイディア、イノベーションを繰り返すことは変わりません。そのために文化のダイバーシティが与える効果も、ますます必要になっています。にもかかわらず、企業が内向きになれば、それは21世紀においては、大げさにいえば自殺行為にもなりかねません。

 事実、日本の衰退は内向き志向の人間の増加と比例しています。つまり、経済危機に対してグローバル人材育成に消極的になるのは大きな間違いです。私の経験ではグローバル人材育成に熱心な会社ほど伸びているといえます。

 なぜなら、グローバルビジネスと深く関わり、多様で多文化の人材をマネジメントすることは、自社のマネジメントの改善にも繋がるからです。多文化の協業は日本人の優れた部分も再確認できるだけでなく、弱みにも気づかされます。会社自体のイノベーションにも繋がるわけです。

 中でもグローバルリーダーシップの重要性はますます必要とされています。今回の新型ウイルスへの対処でも、官僚出身の某大臣のグローバル対応のリーダーシップのなさが被害を拡大させているように見えます。情報収集力、分析力、決断力、多様な人材の人心を掴むことは経済危機が訪れた時こそ必要です。

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