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 人間の脳の神経細胞(ニューロン)には、他の人がしていることを見て、わがことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っている神経があるとと考えられ、ミラーニューロンといわれています。世界で起きることを瞬時に入手できる現代社会では、他の人に起きていることに共感する頻度が増しています。

 新型コロナウイルスが世界に蔓延する中、連日、恐怖心や不安を与える悲観的報道が繰り返されています。そのため、われわれは衛生的防衛策を講じるだけでは、免疫力を下げる極度のストレスにも打ち勝つ必要があります。ミラーニューロンが引き起こす感染のネガティブ効果は強力だからです。

 ニューロンに関する研究では、職場で誰か非常にネガティブな感情やストレスを抱える人間がいると、ミラーニューロンによって、それは職場全体に感染することが証明されています。家庭でも職場から親がもちかえる負の感情が家族に悪影響を与えることは、われわれが経験していることです。

 つまり、ストレスを抱える他者、特に同僚や家族を目にするだけで、神経系に瞬時に影響を受ける場合があり、自身のコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルがアップすることは脳科学の分野でも報告されています。通常「セカンドハンド・ストレス」といわれ、感染力は、まったく知らない人の上に起きている絶望的状況に対しても高いレベルだといわれています。

 その情動感染のパワーは凄まじく、ある人が部屋に入ってきただけでストレスを感じ、実はその人を見なくても、その人から発せられる「警報フェロモン」によって、人間の臭覚からセカンドハンド・ストレスは感染するといわれています。電車の中に極度のストレスを抱えた人がいるだけで、そのネガティブな感情は感染するというわけです。

 武漢の医療現場でストレスや不満で煮えくり返る感情を爆発させる看護師の映像が報道されていますが、患者にもそのネガティブで悲観的な感情は感染しているということです。逆にポジティブマインドを持ち、笑顔でいることは周囲にも良好な健康状態をもたらすということです。

 では、いかに自分が負の感情のウイルスをまき散らすことなく、また、他の人からのストレス感染をくい止めることができるかですが、思い起こすのは東日本大震災の時に多くの親族を失った被災者たちのことです。ボランティアに現地に行った人たちが口を揃えた行ったのは「励ましに行ったつもりが、逆に元気をもらって帰った」というものでした。

 地獄を味わった人たちには、日常の些細なネガティブな事が引き起こす不満や怒りは吹き飛んでしまい、生きているだけで感謝する姿がありました。彼らは人間の力ではどうすることもできない自然の脅威を体験したことで「心の免疫力」が強化された側面があったということです。

 無論、絶望から脱することだできず、免疫力を落とし仮設住宅で亡くなった人もいましたが、立ち直った人の数の方が多かったのも事実です。

 リーダー・コーチングのプロで著書『幸福優位7つの法則』で知られるアメリカのベストセラー作家のショーン・エイカー氏は、ストレスの肯定的側面に目を向けるようマインドセットすることが効果的だといっています。
 つまり、ストレスはどれほど強いものであっても、精神力の強化、人間関係の深化、認識力の向上、新たな視点の獲得、達成感、より前向きな人生観、意義・やりがいの感覚、優先順位をつける能力の向上、などをもたらすというのです。言い換えれば、ストレス=悪という認識を根底から脳の中で書き換える必要があるということです。

 今、80代以上の人は、ストレスという言葉そのものに違和感があるいいます。ストレスという言葉自体、認知されたのは半世紀前で、それも有害なものとして定着してしまいました。しかし、スポーツのトップアスリートたちは日々、強度のストレスを自分に課すことで鍛えています。「苦労は買ってでもしろ」というのも、ストレスが人間の成長に不可欠だからです。

 一方、SNS時代だからこそ、負の感情の感染拡大も実際に起きています。SNSはまさにミラーニューロンを刺激するコミュニケーションツールです。それもフェイクニュースにいかに人間は大きく左右されるは誰もが実感していることでしょう。逆に言えば、SNSでポジティブアプローチを保つことが感染拡大を防ぐことに繋がるといえます。

 さらに東日本大震災の教訓は感謝することでした。生かされたことに感謝し、周囲の人に感謝する心は負の情動感染を防ぐ最大のワクチンかもしれません。

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