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 ブレグジットの大きな要因の一つは、増加し続ける移民や外国人労働者問題でした。ブレグジットが移行期間に入った英国のジョンソン政権は今月19日、来年1月に導入される新移民政策を明らかにしました。いかに移民を減らすかに焦点を当てた新政策には、英語ができない外国人の移民を認めないなどの条件が含まれ、議論を呼んでいます。

 そもそも英国は島国なので不法に移民しようとする人々にはハードルの高い国です。一方、人道主義で移民に寛容な国として知られ、中東やアフリカからヨーロッパをめざす人々の間では、英国が断トツの人気を集めています。そこに新たに欧州連合(EU)に加わった旧中・東欧の人々が、EUのと物の移動の自由のポリシーにより、大量に流れ込んできました。

 そこで起きた現象は、移民が持ち込んだイスラム思想に反西欧文明が含まれ、テロが起きるようになったことです。もう一つは英語をまったく喋ろうとしない東欧の単純労働者が大量流入し、たとえばロンドン西部にポーランド語しか聞こえてこない地区が出現し、英国人は眉をひそめていました。

 政府が今回明らかにした新制度は「ポイント制」の就労許可を採用し、ビザ申請者は必要水準以上の英語力を満たし、企業による採用の内定、年間賃金2万480ポンド(約300万円)以上といった必須条件をクリアした上で、さらに仕事に関連した学歴などをアピールし、合計70点以上でないとビザを発給しないというものです。

 専門性の高い技術者などは特例措置を設けるとしており、明らかに単純労働者排除の制度です。しかし、慢性的な労働者不足の英国で建設作業や介護、外食産業などで外国人労働者に頼ってきた企業は今後、どうやって人材を確保するのかを懸念する声があがり、財界は批判的です。特に今後は自由就労が認められてきたEU市民も域外からの移民と同じ列に並ぶしかありません。

 一方、フランスでは英政府が新移民制度を発表した同じ日、マクロン大統領を巡るちょっとしたアクシデントが起きました。マクロン大統領は国内のイスラム分離主義への新たな対応策を発表するため、仏東部ミュルーズを訪れた際、うっかりニカブ着用のイスラム女性と自撮りしてしまったのです。

 フランスでは公共の場でイスラム女性が顔を隠すベールのニカブや全身を覆うブルカを着用することは禁じられています。にも関わらず、視察中の街頭でニカブを着用して近づいてきた若い女性に対して、大統領は笑顔で自撮りに応じてしまい、極右・国民連合(RN)の議員が強く非難されました。

 折しも同国のイスラム聖職者を通じた聖戦主義などの過激思想流入を阻止する新たな対策を発表する直前の出来事でした。フランスでは2010年のサルコジ政権時代に欧州で初めて、憲法に定めた政権分離原則を根拠に信仰のシンボルを強調する衣類や宝飾品の公共の場での着用を法的に禁止しました。

 当時のサルコジ大統領は、女性が顔を覆う習慣はフランスにはなく、フランス人には不快感を与えているといい、本音の部分では顔や全身を覆うことはテロリストが自分を隠す隠れ蓑になるので、治安上からも排除したかったということでした。

 ところが在仏イスラム教徒の中には罰金150ユーロ(日本円で18,000)を払ってでも着用を続行する女性もいて、論争が絶えず、警察も注意し罰金を取ることも最近は積極的に行っていませんでした。そのため公園や地下鉄構内でブルカやニカブを着用したイスラム女性を見かけていました。

 フランス政府は教育現場のアラブ系教員や公務員の間にも聖戦主義が入り込み、外国から派遣されたイスラム教礼拝堂モスクの指導者イマームが過激な思想を吹き込んでいるとして、約300人のイマームを本国に順次送還する方針を今回明らかにしました。

 移民問題はヨーロッパのポピュリズム台頭の原因になっており、各国政府は対策を急いでいます。しかし、たとえばフランスで露骨なイスラムの習慣排除を政教分離の原則にこじつけると、キリスト教の大事なクリスマス行事も公共の場では祝えなく矛盾に陥りました。公立学校や市役所で毎年飾っていたクリスマスツリーの飾りつけも法律違反になる矛盾に悩まされています。

 ドイツでも、フランクフルトでトルコ系移民9人を人種差別主義者が殺害するテロが発生しています。今年は特に極右のテロがヨーロッパでは懸念されています。彼らは極端に偏った差別主義者で寛容さを説くキリスト教徒のヨーロッパ人とも異なる人間たちです。

 実は移民が持ち込む文化や習慣に対しこれはて、ヨーロッパの歴史的文化や価値観が極端に弱体化していることが脅威に繋がっている原因の一つです。ヨーロッパは今、伝統的価値観が消え失せ、なんでもありのリベラリズムが主流になっています。そこに信仰に自信と確信を持つイスラム教徒が入り、イスラム化も進んでいます。

 つまり、ヨーロッパ人のアイデンティティが失われつつある中に明確なアイデンティティを持つイスラム教徒が大量流入している状態です。アメリカのようなピューリタニズムに基づく建国精神を持たないヨーロッパは今、小さな教会建物が売りに出され、ヨーロッパでなくなる日が近づいているのかもしれません。

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