Black swan3

 めったには起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象のことを「ブラックスワン理論」といいます。新型コロナウイルス(COVIT-19)の拡散は収まる気配がなく、世界中で死者が出始めている今、予測不能な事態を米ウォールストリートジャーナル(WSJ)はブラックスワンでは?と指摘しています。

 すなわち、中国政府はウイルス拡散に対して制御不能に陥り、中国の経済的メルトダウンは同様の無情さで広範に波及し「コモディティ(画一化した商品やサービス)の価格が世界中で下落し、サプライチェーンは崩壊。その連鎖反応から逃れられる金融機関はほとんどないかもしれない。中国やそれ以外の地域の回復は遅く、社会的・政治的に劇的な影響がもたらされる可能性がある」と指摘しています。

 無論、今もウイルスの拡散は、どの程度拡散するのか、ピークを迎え収束に向かっているのか、或いは世界大流行の始まりに過ぎないのかについて専門家の間に明確な答えはありません。ただ、驚異的発展を遂げ、世界経済に多大な影響力を持つ中国でさえ、ウイルスの猛威の前にはもろく、世界的金融危機をもたらすリスクは否定できない状況だというわけです。

 「最初のちょっとした衝撃でさえも、偽りの価値や膨れ上がった期待、不適切な分配資産を全てはじけさせ、巨大な虚栄のかがり火を燃え上がらせることになりかねない。そうなった場合、中国の規制当局者や意思決定者にダメージを最小化する技術的能力や政治的権力があるのか全く分からない」とWSJのコラムニスト、ウォルター・ラッセル・ミードは指摘しています。

 ブラックスワンとは別に、キリスト教の新約聖書の黙示録によれば、最後の日の裁きで壊滅的破壊が起きることが予言されています。無論、今回のウイルス猛威と結びつけるキリスト教徒は多いとはいえませんが、旧約聖書には、悪徳と頽廃が蔓延したソドムやゴモラの町を神が焼き尽くす話もあります。

 さらに14世紀中ごろ、アジアからヨーロッパにかけて大流行した黒死病(ペストと推測されている)で、西ヨーロッパでは人口の3分の1が死んだと言われています。当時、10万人ともいわれる死者を出したイタリアのヴェネチアでは、貴族たちの頽廃した生活に神の裁きが下ったと信じられてました。この時、水際対策として始まった検査が今の検疫の期限といわれています。

 今はそんな宗教的な見方をする人はあまりいませんが、現実に世界の工場であった中国によって構築されたサプライチェーンのもろさが露呈し、脱中国の動きは加速する可能性は否定できません。金融市場の動揺は止まらず、国民には共産党中央政府への不信感が拡がり、短期で危機を乗り越えられる可能性は日に日に低下しているように見えます。

 1980年代後半の日本のバブル崩壊の規模でない状況が訪れているともいえ、人口、経済規模、影響の大きさは人知を超えたレベルといえます。虚栄と覇権、金まみれの唯物主義、政治腐敗と堕落した拝金主義の蔓延は、宗教的見方をしなくても、危ない状況にあるのは確かです。

 日本を含む世界が困っているのは、中国はCOVID-19対応での治験の詳細を明らかにしていない事です。その共産党を守るための隠蔽体質はウイルス蔓延を加速させています。世界の英知と協力なしに対処できない規模の問題が政治優先の国家主義の中国で起きたことは不幸というしかありません。今のところ、ブラックスワンを完全に否定する現象や説得力を持つ説明がないのは恐るべきことです。

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